適応的課題とリーダーシップ,質問会議,コーチング,最小3要素など

ハイフェッツ教授の『最難関のリーダーシップ』をゼミでとりあげた機会に,今年度扱ってきた質問会議やコーチングなどのツールやリーダーシップ最小3要素などの概念とどう関連づけたら分かりやすいかを図解してみました.去年と今年,ゼミ(他者のリーダーシップ開発)で扱ってきた教材のほとんど,つまりアクションラーニング(質問会議),コーチング,プロセス・コンサルティング,免疫マップ(「なぜ人と組織は変われないか」),学習する組織などはいずれも適応的課題の解決に関わっていることに気づきました.そのなかでリーダーシップ最小三要素だけは,技術的課題と適応的課題の両方に深く関係がある点で異色とも言えます.それだけ汎用性が高いのかもしれません.また,リーダーシップ三要素に「自己の確立」を追加しようという立教の舘野さんや高橋さんの提唱は,ハイフェッツの言葉で言えば適応的課題の解決を重視しているからかもしれません. ある課題の解決について,専門家の助言を求める(あるいはその分野の知識を自ら獲得する)をと一番良い解法が得られる問題は技術的問題であり,自分のものの見方や姿勢を変えないと解決に至らない問題が適応的問題です.ハイフェッツは「適応的課題を技術的課題と誤認することがリーダーシップの失敗を生む」と繰り返し言っているのですが,それは次のようなグラフで考えると理解されやすいかもしれません. 多くの問題は技術的課題の側面と適応的課題の側面を合わせもっています.適応的課題の比率が高くなるほど,本人の適応や学習の必要度が高くなります.例えばある問題は図中の技術65%,適応35%に位置する,といったことになります.厄介なのは,この比率が,問題が出現した当初に分かることは珍しく,わりあい早期にわかるのは技術的問題であるためにその対策を大々的に打って失敗してしまってから,どうやら適応的要素もあるのだと判明することが多いことです.例えば,高校や大学ではよく教室の机と椅子を大量に速やかに移動することが必要になります.それがなかなか迅速に行かないとき,「号令をかける教員の声が小さいから皆が動かないのだろうから,マイクを持ってこよう」というのが技術的アプローチです.ところがマイクを持ってきてもあまり変わらないので,よく観察してみると,学生の数は充分いるのに,どうしてそんなに急いで動かさねばいけないのか納得がいっていない学生が多いので動きが鈍いとか,バルコニーに登ってみると一部の人だけがいつもさぼっていることが判明する(フリーライディングないしソーシャル・ローフィング)とかになってくると,適応的要素が入って来ることになります.この適応過程にも三要素は使えますし,もっと技術的要素の比率が高い場合(例えばそのイベント担当の教職員数人だけで机椅子を移動するような場合)にも有効です.それにしてもハイフェッツの「技術(専門的知識)vs適応(学習)」という軸はとても深いですね~

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