マガジンのカバー画像

飲み屋に恋する男のはなし

42
酒抜きで語れぬ私の人生、そのほんの一部をお聞きください、、
運営しているクリエイター

#料理

恋のおわりは

今日から私が以前、恋の病に取り憑かれたように始めた『立ち飲み屋』の話を綴りたく思います。 多くのお客さまに足を運んでいただきました。 多くの友人も日本中から集まってきてくれました。 やんごとなき事情で再び方向転換をするまでの一年半の時間をともに過ごしていただいた皆さんとのお付き合いの話が中心となります。 今日は簡単に店の周囲の雰囲気をご理解いただければと思います。 私は大阪の人間ではありません。大阪は人に優しい街だと思います。 その中でもこの『阿倍野』って街が、素敵に優しい

切り取ったある日常の時間『立ち飲み屋〇(マル)の話』

立春は過ぎ、暦の上では春がやって来ている。 メリハリのない最近の気候にマルは客の心をかっちり掴む美味いアテを考えていた。 毎日昼前に近くの市場まで買い出しに行く。鮮魚・精肉・青果・乾物と一通り店の品々との挨拶は済ませ、新鮮な材料を調達し、大きめのザックに詰め込み献立を考えながらいつもの道を歩いて帰るのであった。 そして気にも止めなかった公園がいつもと違うのに気づき足を止めた。 なんと、本当の春がこんな近くにやって来ていたのである。終わりかけた蠟梅に咲き始めた梅はその白を重ね

カステラなる名の酒の肴

よく行くというわけではないが、時々思い出したように行きたくなる飲み屋がある。 場所は千日前相合橋入り口付近、すぐ近くに丸福珈琲本店がある。 なんばエリアがエセ大阪人の私には大阪らしく思え時々ウロウロするのだが、正確に難波、日本橋、千日前のエリアの区分をいまだ知らない。 この飲み屋はそれらのちょうど中途半端くらいのところに立地しているのではないだろうか。 だから、繁華街のど真ん中でもないのである。 それなのにいつ行っても一杯のお客さんで賑わう店なのである。 鰻の寝床のような

『飲み屋ラブ』 片思いのラブレター 

気がつけば、あれが恋だったんだなあ、とそんなふう、、 考えてみればラブレターなんて書いたことが無い、、 そんな思いの丈を伝えたかったことが無かったのだろうか。 いや、私の思いは文章などを飛び越えていたのだろう。 『飲み屋ラブ』、私の片思いのラブレター、生まれて初めてのラブレターは、一度溺れてそのまま死んでもいいと思った大阪阿倍野で始めた『飲み屋』稼業へあてたラブレターである。 私は酒が好きである。 それ以上に飲み屋で営まれる日常が好きである。 酒は人を正直にしてくれる