マガジンのカバー画像

飲み屋に恋する男のはなし

42
酒抜きで語れぬ私の人生、そのほんの一部をお聞きください、、
運営しているクリエイター

#食べて生きる

恋のおわりは

今日から私が以前、恋の病に取り憑かれたように始めた『立ち飲み屋』の話を綴りたく思います。 多くのお客さまに足を運んでいただきました。 多くの友人も日本中から集まってきてくれました。 やんごとなき事情で再び方向転換をするまでの一年半の時間をともに過ごしていただいた皆さんとのお付き合いの話が中心となります。 今日は簡単に店の周囲の雰囲気をご理解いただければと思います。 私は大阪の人間ではありません。大阪は人に優しい街だと思います。 その中でもこの『阿倍野』って街が、素敵に優しい

レイは大のパスタ好き! 『立ち飲み屋〇(マル)の話』

🍶下の『涙のキャベツの千切り』から続いています。 「タロー、タロー!」 マルは二階の息子太郎に向かって叫ぶ。 「なに~?」 とまあまあ元気な声だけが返ってくる。 「麗先生が来てくれたから降りて来なさい!」 マルの一人息子の太郎の中学校の担任が様子を見にやって来てくれたのである。 「ダメだよ、今、ド・ク・ショ・チュ~!」 ダメである、こうなってしまったら梃子でも動かぬ太郎である。 こんなところは別れた亭主に似てるなとマルは久しぶりに太郎の父親のことを思い出していた。 「先生、

涙のキャベツの千切り 『立ち飲み屋〇(マル)の話』

若い男はポタージュスープで身体が温まってきたからだろうか、ポツポツと口を開き始めた。 男は25歳となる。文系の大学を出て建設会社に就職した。寺社仏閣を得意とするその会社の名前はマルも聞いたことがあった。大学では空手部で四年間空手一筋に生きて来た男だった。全国大会まで出たことがありそれなりの自信を持って生きて来たものの社会人になってその鼻っ柱をへし折られたようだった。男の配属先は営業部。悪い意味での百戦錬磨の連中が男を迎え入れてくれた。その中に創業者一族の社長の息子が先輩でいた