涙のキャベツの千切り 『立ち飲み屋〇(マル)の話』
若い男はポタージュスープで身体が温まってきたからだろうか、ポツポツと口を開き始めた。
男は25歳となる。文系の大学を出て建設会社に就職した。寺社仏閣を得意とするその会社の名前はマルも聞いたことがあった。大学では空手部で四年間空手一筋に生きて来た男だった。全国大会まで出たことがありそれなりの自信を持って生きて来たものの社会人になってその鼻っ柱をへし折られたようだった。男の配属先は営業部。悪い意味での百戦錬磨の連中が男を迎え入れてくれた。その中に創業者一族の社長の息子が先輩でいた