切り取ったある日常の時間『立ち飲み屋〇(マル)の話』
立春は過ぎ、暦の上では春がやって来ている。
メリハリのない最近の気候にマルは客の心をかっちり掴む美味いアテを考えていた。
毎日昼前に近くの市場まで買い出しに行く。鮮魚・精肉・青果・乾物と一通り店の品々との挨拶は済ませ、新鮮な材料を調達し、大きめのザックに詰め込み献立を考えながらいつもの道を歩いて帰るのであった。
そして気にも止めなかった公園がいつもと違うのに気づき足を止めた。
なんと、本当の春がこんな近くにやって来ていたのである。終わりかけた蠟梅に咲き始めた梅はその白を重ね