母を訪ねて三千里(その3)別れの日
1945年、第二次世界大戦は終わった。
同時に台湾の日本統治も終わったのである。
黄絢絢は松山空港にほど近い4階建ての住宅に家族とともに生活していた。
小さな島国の台湾の、首都台北には人口が密集している。庭付きの戸建て住宅など一般家庭にはあり得なく、狭い土地の容積率を活かした縦に伸びる住宅が当たり前だった。
黄家は両親と姉、弟二人の家族構成だった。
語学に堪能なお父様は大戦中、日本軍の通訳として東南アジア各地を転々としていたそうである。
そして、終戦後すぐには帰って来なかった