DMP市場の決算を読み解いて、新規参入を試みた。#20代マーケピザ 養成所オンライン
#20代マーケピザ 養成所オンライン の初回お題に取り組んでいきたいと思います。
今回は業界を決めたのちに、3社選定して決算を読み解き、業界の課題を踏まえた上で、もし自分がその市場に参入するならどう攻めていくか?を決めるというもの。
・選んだ業界とその理由
・企業分析1~3社
・業界の課題と新規参入するなら
この順番で進めていきたいと思います。
選んだ業界とその理由
今回私は、DMP市場を選びました。理由については、私自身がデジタルマーケティング業界で働いており、最近株式会社インティメート・マージャーが上場をして話題であることが理由です。
DMP市場は順調に拡大の一途を辿っている一方で (図1) 、昨今のITP問題で先行きが不透明なのも事実です。そんな中、この上場には何か意味があるはずだ!と強い興味をもちました。
図1,株式会社アイ・ティ・アール. (2019) "DMP市場規模推移および予測"
今回取り扱う会社は、下記3社を選定しました。※社名/DMP名
・インティメート・マージャー/Intimate Mager
・D.A.Consortium holdings/Audience One
・LOGLY/Juicer
ユニークブラウザ(UB) の保有データ数、上位3社となります。
インティメート・マージャーについて
上場したばかりなので、決算書なるものは存在せず、目論見書のみです。
ビジネスモデルは、基本的には広告配信のためのデータ販売です(図2) 。
図2,株式会社インティメート・マージャー. (2019) "新株式発行並びに株式売出届目論見書"
業界内の立ち位置としては、プライベートDMP市場シェアNO,1ということから、古参のスペシャリストプレイヤーだと推測できます。
インティメート・マージャーが抱える課題(リスク)は、
・クライアントのマーケティング予算の変動
・顧客ニーズの変化
・新技術や新サービス、新デバイスの台頭
・DMPの連携先や接続先の変動
と大きく4つあると考えられます。
それらに対して、
・新規サービスの開発
・新市場の開拓
・市場浸透のための認知度向上
・優秀な人材の確保
といった戦略を取っています。
新サービスの開発は、成果報酬型のディスプレイ広告の運用や、企業のアタックリスト作成のサービスを開発しています(図3) 。
図3,株式会社インティメート・マージャー. (2019) "新株式発行並びに株式売出届目論見書"
成果報酬型のディスプレイ広告を運用する会社は、確かに少ないと思うので、そこでニッチ化戦略を取ろうとしています。また自社の保有データの質を証明しようとしているようにも感じられます。
新市場の開拓としては、これまでデータの販売用途は広告配信が目的でしたが、これからはFin TechやHR Tech領域にも、データ販売を展開予定のようです(図4)。
図4,株式会社インティメート・マージャー. (2019) "新株式発行並びに株式売出届目論見書"
DMP事業での一番の障壁はオーディエンスを集める部分ですが、その数はすでに業界1位で取り切っているので、既存プロダクトを新規市場に展開していこうと考えているのでしょう。
D.A.Consortium holdingsについて
実はD.A.Consortium holdingsは2018年の9月に博報堂DYホールディングスにより完全子会社化されており、最新の決算資料はない状態です。
なのでD.A.Consortium holdingsについても、新規上場申請のための有価証券報告書と2018年4Qの決算説明会資料を参考にしていきます。
ビジネスモデルは広告枠の買い付けを行うメディアレップから、実際のインターネット広告の配信までのサプライチェーンを担っています(図5)。ちなみに、DMP市場に関係がありそうな箇所は赤枠で囲っている部分です。
図5,D.A.Consortium holdings. (2018) "2018年3月期 決算説明会"
広告配信におけるサプライチェーンを網羅しているので、強いですね・・!
またアドテクノロジー事業をさらに詳しく見てみると、その中でもサプライチェーンを網羅しています(図6)。
図6,D.A.Consortium holdings. (2018) "2018年3月期 決算説明会"
・・・・・さすがです。
以上から業界内の立ち位置としては、業界のドンともいえる存在でしょう。
D.A.Cが抱える課題(リスク)としては
・保有している広告枠の価値変動
・様々なサービスへのM&Aリスク
・新技術や新サービスの登場への対応
・現状の海外展開や新規事業への投資のリスク
という点を資料で挙げています。
そんなD.A.Cの戦略は
・既存製品での効率化
・新製品の開発
・新市場の開拓
となっています。
既存製品での効率化に関しては、RPAの導入やクライアントビジネスとパートナービジネスの連携を強化することで、既存事業の効率化を図ろうとしています。
また新製品の開発においては、データ・コンテンツ・クリエイティブ・CRMなどのマーケティング全領域を網羅するプロダクトを開発しており、サプライチェーン網羅の次は、マーケティングのファネルをフルで抑えようとしているのではないでしょうか。
D.A.Cの戦略は常に網羅することが戦略の大枠としてあるように見受けられます。サプライチェーンの網羅はすでにやり切っているので、後はDMPの接続先を地道に増やしつつ、博報堂DYパートナーズと連携して、クライアント数を増やして事業拡大を図ろうとしているのではないかと予測されます。
LOGLYについて
ビジネスモデルは、ネイティブ広告プラットフォーム事業です(図7)。
図7,LOGLY. (2019) "2020年3月期 第一四半期決算説明資料"
DMPにおいては、最近パブリックDMPのJuicerを買収しました(図8)。つまり業界内の立ち位置としては、新規参入者です。
図8,LOGLY. (2019) "2020年3月期 第一四半期決算説明資料"
LOGLYが抱える課題(リスク)は
・ネイティブ広告市場への新規参入
・ビックデータ解析技術における、新規技術の台頭
・事業ドメインが単一であること(これまで)
・広告主のマーケティング予算の変動
・広告枠の仕入れ値の高騰
・広告審査の法律規制の発生
が挙げられています。
それに対して
・既存製品での質向上
・新製品の導入
・新市場の開拓
・人員拡大
という戦略を取っています。
特に既存製品での質向上のためには、Cookieを使用せずに、ユーザー属性を判定する技術の特許を取得して、システムの高度化を図っています。しかもこれは昨今のITP問題にも対処可能な技術です。
また新製品としては、ネイティブ広告の枠として、動画枠の仕入れを始めているようです(図9)。
図9,LOGLY. (2019) "2020年3月期 第一四半期決算説明資料"
今回Juicerを買収して、そもそもネイティブ広告のプラットフォーマーとして持っていたデータに加えて、Juicerのデータが合わさることで、保有データの量をかなり増やすことができたのではないかと考えられます。ただ、このデータを広告配信として活用するには、インティメート・マージャーの2番煎じになってしまうので、別市場でのデータ販売に乗り出していくのではないでしょうか。
この予測が正しいかどうかは、次回の決算資料を読んでみてのお楽しみになります!
DMP業界の課題と新規参入するなら
そもそもDMP業界が今後伸びていくのか?という問いに対して、プライベートDMPは確実に伸びていくと考えられます。市場の予測データも、もちろん右肩上がりですが(図1)、社会文脈的にも、デジタル広告の品質といった側面から、人を不快にさせない=人に合わせた広告配信にニーズがあるからです。
業界全体の課題としては、そもそもデータ取得が難しくなるITPや新しいデジタルデバイスの台頭による予測不能な変化など、インターネット広告業界全体に対してともいえる課題があります。
そんな中で新規参入するには、顧客セグメントをニッチ化させて戦おうと思います。また、ITPによる予測不能なデータ取得については、DMP事業から切り離して戦います。
まず顧客セグメントですが、①マーケティングをインハウス化しようとしている企業と②既存のDMPプレイヤーです。
①に対しては、プライベートDMPのインハウス化支援をします。
②に対しては、機械学習モデルの提供をします。ITPによってサードパーティーのデータ取得はどんどん難しくなってしまうので、ファーストパーティーのデータをエンリッチにするロジックを提供します。例えば、年齢や性別のデモグラフィック情報を推定する機械学習モデルのAPI販売とかでしょうか。
また、インハウス化支援だけだと1:1のビジネスになってしまうので、既存のDMPに求められる機能を分解して、その一部をプラットフォームとして提供し、1:Nのビジネスにします。
まとめ
シバタナオキさん(@shibataism)の
「決算資料が読めるようになるノート」や先日の講演動画を拝見してから取り組んだものの、「そもそも決算資料ないじゃんw」などかなり大苦戦しました。。。
しかし、決算説明資料がなくても、有価証券報告書などその他資料を辿ればなんとか推測はできるし、何よりも企業の買収がどういう目的で行われているのか?など考えるきっかけになりとても勉強になりました!
課題のパワポは下記になります。
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