文化庁の『「AIと著作権に関する考え方について(素案)」に関するパブリックコメントの結果について』をさらに分類してわかりやすくするための研究ノート

2024年2月29日に文化庁著作権課から、「AIと著作権に関する考え方について(素案)」のパブリックコメントの結果について発表した。
意見提出数は24,938件、また73法人・団体からも意見が提出されたとしている。また提出された意見については、公開に必要な処理を行った上で団体・個人の意見も全文公開していくとのことだ。

このNoteでは、このパブリックコメントの結果から文化庁がまとめた寄せられた主な意見(当該PDFの12p〜41p)に対する事務局の考え方を、さらに分類することで、文化庁が考えるAIと著作権についてわかりやすくすることを目的にする
わかりやすい文章を作るための研究ノートを作成した。


文化庁のパブリックコメントの結果の資料構成

文化庁による主な意見の分類文化庁の資料では、寄せられた意見を393の意見概要としてまとめ、意見の提出者と意見に対する事務局の考え方を掲載し、一部の意見をもとに素案に追記している(溶け込み版見え消し版)。
また、これらの意見概要を以下の5つに大別し、素案の内容に沿って個別に分類している。

  1. 総論関係(本考え方「1.はじめに」「2.検討の前提として」「6.終わりに」関係)

    • 1ー01 本考え方を取りまとめることについての意見

    • 1ー02 素案の位置づけに関する意見

    • 1ー03 従来の法解釈との関係に関する意見

    • 1ー04 関係者の関与に関する意見

    • 1ー05 AIと社会の関係全体に関する意見

    • 1ー06 誤った理解の防止・周知啓発に関する意見

    • 1ー07 権利保護と利用のバランスに関する意見

    • 1ー08 今後の検討に関する意見

    • 1ー09 本パブリックコメントの実施方法に関する意見

    • 1ー10 条約・国際的な調和に関する意見

    • 1ー11 当事者間の協議・ソフトローの構築に関する意見

    • 1ー12 “robots.txt”を含む業界慣行に関する意見

    • 1ー13 記載の方法に関する意見

    • 1ー14 記載の明確化に関する意見

    • 1ー15 その他の意見

  2. 技術的な背景関係(本考え方「3.生成AIの技術的な背景について」)

    • 3−1 生成AIについて

    • 3−3 AI開発事業者・AIサービス提供者による技術的な措置開発・学習段階関係(本考え方「5.各論点について(1)開発・学習段階」)

  3. 開発・学習関係(本考え方「5.各論点について(1)開発・学習段階」)

    • 5−1-X 開発、学習段階、その他

    • 5−1-ア 検討の段階

    • 5−1-イ 享受目的が併存する場合について

    • 5−1-ウ 検索拡張性(RAG)等について

    • 5−1-エ(ア) 著作権者の利益を不当に害することとなる場合の具体例について

    • 5−1-エ(イ)アイデア等が類似するにとどまるものが大量に生成されることについて

    • 5−1-エ(ウ)情報解析に活用できる形で整理したデータベースの著作物の例について

    • 5−1-エ(エ)本ただし書に該当し得る上記(ウ)の具体例について

    • 5−1-エ(オ) 海賊版等の権利侵害性生物をAI学習のために複製することについて

    • 5−1-カ AI学習に際して著作権侵害が生じた際に、権利者による差止請求が認められ得る範囲について

    • 5−1-キ AI学習における、法第30条の4に規定する「必要と認められる限度」について

    • 5−1-ク 法第30条の4以外の権利制限規定の適用について

  4. 生成・利用段階関係(本考え方「5.各論点について(2)生成・利用段階)

    • 5−2-X 生成・利用段階、その他

    • 5−2-ア 検討の前提

    • 5−2-イ(ア) 類似性の考え方について

    • 5−2-イ(イ) 依拠性の考え方について

    • 5−2-ウ 依拠性に関するAI利用者の主張と学習データについて

    • 5−2-カ 差止請求として取り得る措置について

    • 5−2-キ 侵害行為の責任主体について

    • 5−2-ク 生成指示のための生成AIへの著作物の入力について

    • 5−2-ケ 権利制限規定の適用について

    • 5−2-コ 学習に用いた著作物等の開次が求められる場合について

  5. 著作物性・その他の論点関係(本考え方「5.各論点について(3)生成物の著作物性について、(4)その他の論点について」)

    • 5−3-ア 整理の前提及び整理することの意義・実益について

    • 5−3-イ 生成AIに対する指示の具体性とAI精製物の著作物性との関係について

    • 5−3-ウ 著作物性がないものに対する保護について

    • 5−4 その他の論点について


このNoteにおける文化庁の意見に対する分類方法とその目的

上記の文化庁の資料構成をもとに、5つに大別しさらに分類された意見概要に沿って提示された事務局の考え方は、全てに個別の考えを提示しているわけではなく、以下の3種類に分類することができる。

  1. 他の意見概要に対する考えで同様のものを提示、あるいは提示し追記しているもの

  2. 素案に追記し対応したもの

  3. 個別に考えを提示しているもの

この3種に分類することで繰り返し回答している箇所、反映された意見について、特異的に回答している箇所についてそれぞれ理解を容易にし、文化庁のAIと著作権に対する考えをわかりやすくしていく。

また、5つの意見概要ごとに事務局の考えに関する考察を設けた。最終的にこの考察をもとに文化庁のAIと著作権に対する考えをわかりやすくまとめていくものとする。これらの考察を統合したものは別のNoteに記載し、よりわかりやすくすることとする。
このNoteでは393の意見概要とそれに対する事務局の考えを全て分類するため、文章量が膨大になるが、この分類していく経過も含めて考察の根拠となるためご容赦願いたい。
目次から考察に飛ぶこともできるため、別のNoteが完成するまでは目次を活用していただければ幸いだ。


事務局の考え方の分類

1.総論関係(本考え方「1.はじめに」「2.検討の前提として」「6.終わりに」関係)

意見概要数:91(No.1〜91)
意見分類:15種
1ー01 本考え方を取りまとめることについての意見
1ー02 素案の位置づけに関する意見
1ー03 従来の法解釈との関係に関する意見
1ー04 関係者の関与に関する意見
1ー05 AIと社会の関係全体に関する意見
1ー06 誤った理解の防止・周知啓発に関する意見
1ー07 権利保護と利用のバランスに関する意見
1ー08 今後の検討に関する意見
1ー09 本パブリックコメントの実施方法に関する意見
1ー10 条約・国際的な調和に関する意見
1ー11 当事者間の協議・ソフトローの構築に関する意見
1ー12 “robots.txt”を含む業界慣行に関する意見
1ー13 記載の方法に関する意見
1ー14 記載の明確化に関する意見
1ー15 その他の意見

事務局の考え方

1.他の意見概要に対する考えで同様のものを提示、あるいは提示し追記しているもの

  • 現著作権法の解釈についての考え方を示すことについて、一定の評価を頂いており、文化庁としても、本考え方が取りまとまった後は、しっかりとわかりやすい周知に努めてまいります。また、AIと著作権の関係については、今後も、著作権侵害等に関する判例・裁判例をはじめとした具体的な事例の蓄積、AIやこれに関する技術の発展、諸外国における検討状況の進展等を踏まえて、引き続き検討を行なって参ります。(No1,2,6)

  • 本考え方では、生成AIとの関係で、法第30条の4等の権利制限規定が適用される場合だけでなく、原則どおり著作物等の利用に権利者の許諾が 必要となるのはどのような場合か、といった点についても一定の考え方を示しています。(No3,83)

  • 本考え方は、生成AIと著作権の関係についての関係当事者からの懸念の声を踏まえて、現行の著作権法の下で、関係する当事者が、生成AIとの関係における著作物等の利用に関する法的リスクを自ら把握し、また、 生成AIとの関係で著作権等の権利の実現を自ら図るうえで参照されるものとしてお示しするものです。文化庁としてもとりまとまった後は、 しっかりとわかりやすい周知に努めてまいります。今後、これを踏まえ、当事者間での共通理解が醸成されていくことが望まれます。(No7,8,9)

  • AIと社会の関係に関する全体的な議論は、政府の「AI戦略会議」におい て行われており、政府内で連携してまいります。(No18,19,20)

  • 著作権法は、「著作者等の権利の保護」 と 「著作物等の公正・円滑な利 用」とのバランスを踏まえ、文化の発展に寄与することを法の目的としています。本考え方も、このような著作権法の目的に沿って検討を行っ たものですが、AIと著作権の関係については、本考え方では、今後も、著作権侵害等に関する判例・裁判例をはじめとした具体的な事例の蓄積、AIやこれに関する技術の発展、諸外国における検討状況の進展等を踏まえて、引き続き検討を行っていくものとしています。(No21,30,37,44,50,51,78,82)

  • 本考え方が取りまとめられた後は、示された考え方について、不正確な理解がされないよう、社会に対して分かりやすい形で周知・啓発に向け た取組みを行って参ります。今後も、著作権制度の基本的な考え方等について、社会に対して分かりやすい形で周知・啓発に向けた取組みを行って参ります。(No22,23,24,25,26,27)

  • 本考え方では、著作権(著作財産権) を中心に検討を行いましたが、今後、著作者人格権や著作隣接権とAIとの関係 (俳優・声優等の声を含ん だ実演・レコード等の利用とAIとの関係等を含む) についても、検討すべき点の有無やその内容に関する検討を含め、議論を継続していくことが必要としています。(No32,33,84)

  • 本小委員会においては、生成AIと著作権に関する諸外国の法制度及び 「広島AIプロセス」 等の国際的な枠組みとの関係も踏まえて検討を行っています。例えば、広島AIプロセス等の AIに関する国際的な枠組みや、EUにおけるDSM指令、AI Act等の状況に ついても検討を行っています。(No16,38,39) 

  • 我が国も加盟する「文学的及び美術的著作物の保護に関するベルヌ条約」(ベルヌ条約) 第9条第2項等で規定されるスリー・ステップ・テストについて、現行の著作権法における権利制限規定はこれに適合したものとなっていると考えます。本考え方においても、このようなスリー・ステップ・テストに適合した各権利制限規定の趣旨に沿って考え方をお示ししています。(No40,41)

  • 市場における対価還元を促進することの必要性は本考え方において指摘 をしており、著作権法の枠内にとどまらず、議論していくことが必要と 考えています。(No42,75)

  • 本考え方では、読み手にとって可能な限り明確な記載となるよう、でき る限り両論併記を避け、本小委員会の審議において委員間で多数を占め たと考えられる意見を本文に記載し、これ以外の意見を脚注に記載することとしています。(No45,46,69)

  • AIと著作権の関係については、今後も、著作権侵害等に関する判例・裁 判例をはじめとした具体的な事例の蓄積、AIやこれに関する技術の発 展、諸外国における検討状況の進展等を踏まえて、引き続き検討を行っ てまいります。(No50,51)

  • ご指摘のAIの透明性、AI製生物であることを識別できるようにする仕組み、ディープフェイク対策については、偽・誤情報対策等にも関連 するものであり、著作権法の範囲にとどまるものではないと考えられます。現在、「AI時代の知的財産権検 討会」(内閣府知的財産戦略推進事務局) において課題として取り上げ られているものと承知しており、本小委員会においても、このような他の検討と連携しつつ、本考え方の検討を行っています(No52,53,58,59,60,61,62)

  • 嫌がらせや誹謗中傷については、個別の事案に応じた判断が必要となり ますが、名誉毀損や業務妨害等による不法行為責任・刑事罰等の適用が ある場合も考えられ、これらによる対応を取ることも考えられます。(No54,55,56)

  • 性的虐待画像や、いわゆるCSAM (Child Sexual Abuse Material) につ いては、刑法、児童ポルノ禁止法等の関係法令において規制が設けられ ており、これらの法令における禁止規定に該当する行為があった場合、 これらの法令に基づく刑事罰等の措置を受けることとなります。(No63,64,65)

  • 本考え方では、権利制限規定一般についての立法趣旨、及び法第30条の 4の立法趣旨からすると、著作権者が反対の意思を示していること自体をもって、権利制限規定の対象から除外されると解釈することは困難としつつ、他方で、AI学習のための複製等を防止する為の技術的な措置を とることは自由に可能であること、また、権利者が情報解析に活用できる形で整理したデータベースの著作物を販売している場合は、これをAI 学習目的で複製する行為は同条ただし書に該当し得ること等が確認されています。(No68,210,224,225)

  • 生成AIの技術は、これまでの人間の創作活動を基に成り立っているもの であり、人間による創作活動が今後も引き続き発展していくことが、生 成AI技術の持続的な発展のためにも必要不可欠です。生成AIとこれに関 わる事業者、また、クリエイターとの間で、新たなコンテンツの創作と 文化の発展に向けた共創の関係が実現されていくことが望まれます。(No76,77)

2.素案に追記し応したもの

  • 本考え方は、生成AIと著作権の関係についての関係当事者からの懸念の声を踏まえて、現時点において必要と考えられる範囲で、現行の著作権法の解釈に関する考え方をお示しするものであり、その趣旨がより明確になるよう記載を追加しました。(No10)

  • 本考え方では、今後も、著作権侵害等に関する判例・裁判例をはじめとした具体的な事例の蓄積、AIやこれに関する技術の発展、諸外国におけ る検討状況の進展等を踏まえて、引き続き検討を行っていくものとしています。また、ご指摘を踏まえ、民間の当事者間において、適切なルール・ガイドラインの策定や生成AI及びこれに関する技術についての共通理解の獲得等の情報共有の重要性について追記しました。(No31,34)

  • ご指摘を踏まえ、生成AIと著作権の関係における関係当事者として本考 え方において想定される者に関する記載を追加いたしました (3. (1)工)。(No48)

  • 著作者人格権については今後も議論を継続していくこととしています。 また、「人間中心の原則」 についての記述を追加しました。(No79)

3.個別に考えを提示しているもの

  • 本考え方は、現行の著作権法の解釈について考え方を取りまとめるものであることから、著作権分科会において、法制度に関する検討を行う本 小委員会において検討を行うよう決定され、これを受けて、本小委員会 で検討を行っています。また、本考え方の取りまとめに際しては、本小委員会において関係者からのヒアリングを実施したほか、本意見募集において多様な関係者から意見を頂き、これを考慮することとしています。本小委員会での審議については、文化庁ウェブサイトにおいて議事録を 公表することで透明性を確保しています。(No4)

  • 本考え方は、社会における生成AIの急速な普及と相まって生成AIと著作権の関係についての関係当事者からの懸念の声が広まる中で、懸念の解消を可能な限り迅速に図るため、現時点において必要と考えられる範囲で、現行の著作権法の解釈に関する考え方をお示しするものです。(No5)

  • 本考え方では、生成AIとの関係での著作物の利用場面として、開発・学習段階と生成・利用段階とが想定され、両者は利用行為として別個であることから、これらを分けて検討することとしています。生成・利用段階の事情は、開発・学習段階における行為者の目的を認定する上での間 接事実として作用すると考えられます。(No11)

  • 本考え方にも記載しているとおり、著作権法上保護の対象となる「創作的表現」と、保護の対象とならない 「アイデア」 との区別は、従来からケースバイケースで判断されるものと考えられており、ご指摘の点についても、具体の判断は個別の事案に応じた司法判断による必要があると 考えられます。(No12)

  • 著作物に表現された思想又は感情の享受を目的としない行為については、著作物の表現の価値を享受して自己の知的又は精神的欲求を満たすという効用を得ようとする者からの対価回収の機会を損なうものではなく、著作権法が保護しようとしている著作権者の利益を通常害するもの ではないと考えられることから、法第30条の4において、このような行為について権利制限の対象としているものです(「基本的な考え方」6 頁)。(No13)

  • 本考え方では、「人間中心の原則」 に照らして、人が道具としてAIを使用するものであり、これに伴う行為の責任はAIを道具として用いる人に 帰属するということを前提としています。今後も、著作権侵害等に関す る判例・裁判例をはじめとした具体的な事例の蓄積、AIやこれに関する 技術の発展、諸外国における検討状況の進展等を踏まえて、引き続き検討を行っていくものとしています。(No14)

  • 本考え方は、著作権法に関するこれまでの判例・裁判例、学説の状況及 び本小委員会における有識者の審議に基づいて、現行の著作権法の解釈 = を精緻化した考え方をお示しするものであり、従来の法解釈を覆すもの ではありません。(No15)

  • 本考え方の取りまとめに際しては、本小委員会において関係者からのヒ アリングを実施したほか、本意見募集において多様な関係者から意見を頂き、これを考慮することとしています。(No17)

  • 本考え方では、生成AIに関する著作物の利用についての適切なルール・ ガイドラインの策定や、生成AI及びこれに関する技術についての共通理解の獲得、AI学習等のための著作物のライセンス等の実施状況、海賊版を掲載したウェブサイトに関する情報の共有などが図られることが、AI の適正な開発及び利用の環境を実現する観点から重要であるとの考えが 示されています。(No28)

  • 著作権法は、「著作者等の権利の保護」 と 「著作物等の公正・円滑な利用」とのバランスを踏まえ、文化の発展に寄与することを法の目的としています。本考え方も、このような著作権法の目的に沿って検討を行ったものです。(No29)

  • 本パブリックコメントの実施については、あらかじめ、本小委員会第5回(令和5年12月20日) において本考え方の素案 (同日版) をお示しし、また、この素案を修正したものについて令和6年1月中旬~2月上旬にパブリックコメントを実施するスケジュールをお示ししておりまし た。今後も、十分にご意見をお寄せいただけるよう、適切な期間の確保に努めて参ります。(No35)

  • 法第30条の4を含む 「柔軟な権利制限規定」は、イノベーション創出のため、新技術を活用した新たな著作物の利用にも柔軟に対応できる権利 制限規定として整備されたものであり、本考え方も、このような規定の 趣旨に沿って検討を行ったものです。(No36)

  • 本考え方においては、現状でAI学習のための複製を防止する為に施され ている技術的な措置の実例なども踏まえつつ検討を行い、考え方をお示ししています。(No43)

  • ご指摘の著作権侵害に関する事実認定及び法的評価は、裁判所が個別具 体的な事案に応じて判断するものですが、本考え方では、規範的行為主 体論、著作権侵害の要件 (類似性及び依拠性)、並びに侵害に対する措 置としての差止請求,損害賠償請求及び刑事罰それぞれの要件・効果 (故意・過失、差止請求において認められる措置等)について、明確化 を図るべく記載しています。(No47)

  • 本考え方で検討の対象としている法第30条の4等の規定は、生成AIのみ を対象とするものではなくAI一般 (その学習等に関する著作物等の利 用)を対象とするものであるため、表題は生成AIに限定していません。 本文中の記載については、現状の記載でも、該当箇所の記載の対象が生 成AIに限られるものか否かは明確となっていると考えます。(No49)

  • 既存の著作物に表示された著作者の氏名を取り除く行為は、氏名表示権 侵害となり、当該既存の著作物の著作者は差止請求・損害賠償請求等の 対応措置をとることができると考えられます。(No57)

  • 文化庁では、インターネット上の海賊版による著作権侵害対策として、 クリエイター等の権利者の皆様向けの相談窓口を設置しており、AIと著 作権に関する著作権侵害の相談を含めて受け付けています。(No66)

  • 本考え方では、新たな著作物等のコンテンツを創作する活動を行う者と して、クリエイターとの用語を用いています。(No67)

  • 本考え方では、将来的には、AI学習用クローラに限ってこれらを全てブ ロックすることを可能にするような技術的方式が確立されること等が期 待されるとの考えが示されています。(No70)

  • 本考え方では、生成AIとの関係で、法第30条の4等の権利制限規定が適 用される場合だけでなく、原則どおり著作物等の利用に権利者の許諾が 必要となるのはどのような場合か、といった点についても一定の考え方 を示しており、このような場合には、現行の著作権法に基づいて、既存 の著作物の著作権者が差止請求等の権利行使をすることができると考え られます。(No71)

  • 本考え方では、著作物に当たらないものについて著作物であると称して 流通させるという行為について、著作権法による保護が適切かどうかな ど、著作権との関係については、引き続き議論が必要とされています。(No72)

  • 本考え方は、現行の著作権法の解釈について考え方を示すものであり、 当事者間の契約関係について取り扱うものではありませんが、生成AIと 著作権の関係に限らず、当事者間での適正な契約慣行の実現は引き続き課題となるものと認識しています。(No73)

  • 本小委員会での審議については、文化庁ウェブサイトにおいて議事録を 公表することで透明性を確保しています。(No74)

  • 著作物に表現された思想又は感情の享受を目的としない行為について は、著作物の表現の価値を享受して自己の知的又は精神的欲求を満たす という効用を得ようとする者からの対価回収の機会を損なうものではな く、著作権法が保護しようとしている著作権者の利益を通常害するもの ではないと考えられることから、法第30条の4において、このような行 為について権利制限の対象としているものです(「基本的な考え方」 6 頁)。(No80)

  • 本考え方では、既存の判例・裁判例上、著作権侵害の主体としては、物 理的に侵害行為を行った者が主体となる場合のほか、一定の場合に、物 理的な行為主体以外の者が、規範的な行為主体として著作権侵害の責任 を負う場合があること、また、生成AIによる侵害物の生成に関しても、 AI利用者のみならず、生成AIの開発や、生成AIを用いたサービス提供を 行う事業者が、著作権侵害の行為主体として責任を負う場合があると考 えられることが示されています。(No81)

総論関係の考察

総論関係でまとめられている意見概要は91であり、そのうち個別に考えを提示しているものが21だった。

素案に追記されたものは以下のものである。
現時点で必要と考えられる範囲で現行法の解釈に関する考え方について、適切なルール・ガイドラインの策定や技術についての情報共有の重要性について、生成AIと著作権の関係当事者として想定されるものに関して、「人間中心の原則」について。

総論関係における事務局の考え方については以下のようにまとめる。

まず、この文化庁のこの「AIと著作権に関する考え方」の目的は、社会における生成AIの急速な普及と相まって生成AIと著作権の関係についての関係当事者からの懸念の解消を可能な限り迅速に図るためである。そのために必要と考えられる範囲で、現行法の解釈に関する考えを示すものである(No5)。
そのため、AIと著作権法に関する考えにおける法解釈については、これまでの判例や学説、本小委員会における有識者の審議に基づいて、著作権法の解釈をより細かなところまで明確にした考えを示すものであって従来の法解釈を覆すものではないとしている(No15)。また、著作権法の目的が「著作者等の権利の保護」 と 「著作物等の公正・円滑な利用」とのバランスを踏まえ、文化の発展に寄与することであり、それに沿って検討を行なっている(No21,30,37,44,50,51,78,82)。

生成AIとの関係については、法第30条の4等の権利制限規定が適用される場合だけでなく、原則どおり著作物等の利用に権利者の許諾が必要となるのはどのような場合か、といった点についても一定の考え方を示しており(No3,83)、著作権者が差止請求等の権利行使ができると考えている(No71)。
その上で、著作物に表現された思想又は感情の享受を目的としない行為については法第30条の4において権利制限の対象としている(No13,80)。これに関連して、生成AIの学習を著作権者が反対の意思を示すことでは権利制限規定の対象から除外されると解釈することは、関連する法の立法趣旨から困難としながらも、AI学習のための複製等を防止する為の技術的な措置をとることは自由に可能であること、権利者が情報解析に活用できる形で整理したデータベースの著作物を販売している場合は、これをAI 学習目的で複製する行為は同条ただし書に該当し得るとしている(No68,210,224,225)。
また、「人間中心の原則」 から道具としてAIを使用しており使用に伴う行為の責任は道具を使用する人に帰属するということを前提としているとした(No14)。
他にも、現状におけるAI学習のための複製防止などの技術的な措置の実例、AI利用者のみならずAIの開発・サービス提供を行う事業者が著作権侵害の行為主体として責任を負う場合があること(No81)、著作物から著作者の氏名を取り除く行為は氏名表示権侵害となり損害賠償請求等が可能であることも示している(No71)。

AIの適正な開発及び利用環境の実現には、生成AIに関する著作物利用についてのルール・ガイドラインの策定、技術に関する共通理解の獲得、AI学習等のための著作物ライセンス等の実施状況、海賊版を掲載したウェブサイトに関する情報の共有が図られることが重要だとし(No28)、現行の著作権法において生じるであろう生成AIに関する法的リスクや著作権等の権利の実現を図る上で、当事者間で共通理解が醸成されることを望んでおり、AIと著作権に関する考え方がまとまった後はしっかりとわかりやすい周知を行なっていく(No7,8,9)としている。

また、※生成AIの技術は、これまでの人間の創作活動を基に成り立っているものであり、人間による創作活動が今後も引き続き発展していくことが、生成AI技術の持続的な発展のためにも必要不可欠としている。(No76,77)将来的にAI学習用クローラに限って全てブロックすることができるような技術が確立することが期待されるとしている(No70)。

※「生成AIの技術は(中略)持続的な発展のためにも必要不可欠」という文章は、生成AIにより人間の創作活動が阻害・萎縮することでAI等の技術的な発展も阻害されることを思慮してのものだと考えられる。
文化庁の「AIと著作権に関する考え(素案)」や、今回のパブリックコメントへの考えをからも、AI技術のために人間の創作活動を搾取することを奨励しているものではないと言える。

同時に、著作権侵害等に関する具体的な事例の蓄積、AIやこれに関する技術の発展、諸外国における検討状況に加えて、昨今の声優や俳優、政界人の音声に関する問題も取り上げており、著作者人格権や著作隣接権とAIとの関係 (俳優・声優等の声を含んだ実演・レコード等の利用とAIとの関係等を含む) についても、議論を継続していくとしている。(No32,33,84)

また、国際社会との足並みに関してはベルヌ条約や広島AIプロセスなどとの関係も踏まえ検討が行われていることについても明言している。(No16,38,39,40,41) 
その他、嫌がらせや誹謗中傷、ディープフェイク、性的虐待画像やCSAMについては、名誉毀損や業務妨害等による不法行為責任や刑事罰等の適用がある場合も考えられるとしている。これらの著作権法の枠を超えた問題については、「AI時代の知的財産権検討会」(内閣府知的財産戦略推進事務局) において課題に上がっていること、ことに言及しており、関係省庁との連携を図っていく。
(No52,53,54,55,56,58,59,60,61,62,63,64,65)


2.技術的な背景関係(本考え方「3.生成AIの技術的な背景について」)

意見概要数:7(No85〜91)
意見分類:2種
3−1 生成AIについて
3−3 AI開発事業者・AIサービス提供者による技術的な措置開発・学習段階関(本考え方「5.各論点について(1)開発・学習段階」)

事務局の考え方

1.他の意見概要に対する考えで同様のものを提示、あるいは提示し追記しているもの

  • 該当なし

2.素案に追記し対応したもの

  • 一般的な生成AIの仕組み上、学習データの一部分をコピーし、これを複 数組み合わせることで生成物を生成する、といった仕組みとはなってい ないものと承知しています。ご指摘を踏まえ、記載を追加しました (3. (1) ウ)。(No85,86,87,88)

  • ご指摘を踏まえ、記述を明確化しました。(No89)

  • ご指摘を踏まえ、明確化のため記載を修正しました (3. (3))。(No91)

個別に考えを提示しているもの

  • ご指摘の箇所は、AI開発事業者・AIサービス提供事業者等によって、生 成物による著作権侵害のリスクを低減するために取られている技術的な 措置を紹介しています。これらの措置によって、既存の著作物の類似物 が一切生成されないものとして紹介しているものではありません。(No90)

技術的な背景関係の考察

技術的な背景関係でまとめられている意見概要は7であり、そのうち個別に考えを提示しているものは1だった。また、他の意見概要に対する考えで同様のものを提示しているものは無かった。

素案に追記されたものは、 素案の11p「3−1_生成AIについて」において「学習データの切り貼りではない」という箇所と、「3-3_AI 開発事業者・AI サービス提供者提供事業者による技術的な措置」についてについてのものの2箇所だった。
特に「学習データの切り貼りではない」という箇所については3法人・団体と個人から指摘を受けたものである。3法人・団体からは生成AIの技術に個別性があり「学習データの切り貼りではない」ことの根拠や説明が不十分であることや、「学習データの切り抜きではない」という表現の解釈が異なる可能性があるとの意見が出された(No85,86,88)。個人からは現在の生成AIの多くは、事実上学習データの切り貼りとなっている(No88)との意見が出ていることから、当該箇所は読み手により解釈が異なっていたと思われ、記載内容が変更されている。


3.開発・学習関係(本考え方「5.各論点について(1)開発・学習段階」)

意見概要数:206
意見分類:12種

5−1-X 開発、学習段階、その他
5−1-ア 検討の段階
5−1-イ 享受目的が併存する場合について
5−1-ウ 検索拡張性(RAG)等について
5−1-エ(ア) 著作権者の利益を不当に害することとなる場合の具体例について
5−1-エ(イ)アイデア等が類似するにとどまるものが大量に生成されることについて
5−1-エ(ウ)情報解析に活用できる形で整理したデータベースの著作物の例について
5−1-エ(エ)本ただし書に該当し得る上記(ウ)の具体例について
5−1-エ(オ) 海賊版等の権利侵害性生物をAI学習のために複製することについて
5−1-カ AI学習に際して著作権侵害が生じた際に、権利者による差止請求が認められ得る範囲について
5−1-キ AI学習における、法第30条の4に規定する「必要と認められる限度」について
5−1-ク 法第30条の4以外の権利制限規定の適用について

事務局の考え

1.他の意見概要に対する考えで同様のものを提示、あるいは提示し追記しているもの

  • ご指摘の、AI生成物であることを識別できるようにするための仕組みに ついては、偽・誤情報対策等にも関連するものであり、著作権法の範囲 にとどまるものではないと考えられます。AI生成物であることを識別で きるようにするための仕組みについては、現在、総務省及び経済産業省 において策定に向けた検討が進められている 「AI事業者ガイドライン」 において取り上げられており、本小委員会においても、このような他の 検討と連携しつつ、本考え方の検討を行っています。(No93,248,254)

  • 考え方は、著作権法に関するこれまでの判例・裁判例、学説の状況及 び本小委員会における有識者の審議に基づいて、現行の著作権法の解釈 を精緻化した考え方をお示しするものであり、従来の法解釈を覆すもの ではありません。(No95,161,168)(1.総論関係においても同じ考えが提示されている。No15)

  • AIと著作権の関係については、今後も、著作権侵害等に関する判例・裁 判例をはじめとした具体的な事例の蓄積、AIやこれに関する技術の発 展、諸外国における検討状況の進展等を踏まえて、引き続き検討を行ってまいります。(No96,216,217,251,252,253,280)(1.総論関係においても同じ考えが複数回提示されている)

  • 我が国も加盟する 「文学的及び美術的著作物の保護に関するベルヌ条 約」(ベルヌ条約) 第9条第2項等で規定されるスリー・ステップ・テストについて、現行の著作権法における権利制限規定はこれに適合した ものとなっていると考えます。本考え方においても、このようなス リー・ステップ・テストに適合した各権利制限規定の趣旨に沿って考え 方をお示ししています。(No99)(1.総論関係においても同じ考えが提示されている。No40以降)

  • 本考え方では、生成AIとの関係で、法第30条の4等の権利制限規定が適用される場合だけでなく、原則どおり著作物等の利用に権利者の許諾が 必要となるのはどのような場合か、といった点についても一定の考え方 を示しています。(No100)(1.総論関係においても同じ考えが提示されている。No3以降)

  • ご指摘の箇所については、訴訟等において、開発・学習段階における利用行為の目的を認定する上での一般的な事実認定の方法として、その後 の生成・利用段階における事情も間接事実となり得ることを前提にした ものです。生成・利用段階における利用者の行為が、開発・学習段階に おける事業者の享受目的を推認させるものであるか否かは、当該行為の 性質に照らして個別に判断されることとなりますが、AI利用者が既存の著作物の類似物の生成を意図して生成AIに入力・指示を与えたことに起 因して、生成・利用段階において侵害物の生成が頻発するような場合 は、開発・学習段階における事業者の享受目的を推認させる要素とはな らないと考えられます(No101,102,103,104)

  • ご指摘の点は、開発・学習段階における行為者の目的について事実認定を行う際には、生成・利用段階において学習データと創作的表現が共通 するもの(類似物) が1回生成されたというだけでは、開発・学習段階 において享受目的を有していたと認定することは経験則に照らして難し いが、類似物の生成が著しく頻発するようであれば、これは開発・学習 段階において享受目的を有していたことを推認する一要素となる、ということをお示ししたものです。(No118,119,120)

  • 法第30条の4における目的の如何については、行為者の主観と客観の各 事情を総合的に勘案して判断されることになると考えられます。生成· 利用段階において既存の著作物の創作的表現が著しく頻発している場合 は、享受目的の存在を推認させる要素となると考えられますが、それ以 外にも、行為者が、既存の著作物の創作的表現を出力させることを意図 していたといった主観的事情も考慮されうると考えられます。(No128,129)

  • 本考え方では、法第30条の4における 「享受」 の対象は、権利制限の対 象となる「当該著作物」であり、これ以外の他の著作物について享受目 的の有無が問題となるものではないことが示されています。(No132,133,134)

  • 本考え方にも記載しているとおり、著作権法上保護の対象となる「創作 的表現」と、保護の対象とならない 「アイデア」 との区別は、従来から ケースバイケースで判断されるものと考えられており、ご指摘の点につ いても、具体の判断は個別の事案に応じた司法判断による必要があると考えられます。(No138,139,140,141,142)(1.総論関係においても同じ考えが提示されている。No12)

  • 本考え方は、生成AIと著作権の関係についての関係当事者からの懸念の 声を踏まえて、現行の著作権法の下で、関係する当事者が、生成AIとの 関係における著作物等の利用に関する法的リスクを自ら把握し、また、 生成AIとの関係で著作権等の権利の実現を自ら図るうえで参照されるべ きものとして、考え方をお示しするものです。関係する事業者において は、本考え方の内容を勘案しつつ、適切な情報開示や契約上の取り決め 等を通じて、事業者間において適切な責任分配が為されるよう取り組む ことが期待されます。(No148,179)(1.総論関係においても同じ考えが提示されている。No7以降)

  • 「軽微」であるか否かは、利用に供される部分の占める割合、その利用 に供される部分の量、その利用に供される際の表示の精度などの外形的 な要素に照らして最終的には司法の場で具体的に判断されることとなり ます(「基本的な考え方」23頁)。(No149,150)

  • ご指摘の箇所については、生成AIと著作権の関係で、開発・学習段階に おいて、学習済みモデルの作成のためのAI学習 (事前学習又は追加的な 学習)の場面とは別に著作物が用いられる場面として、昨今、RAG等に ~おいて生成AIに入力するためのデータベースを作成するために既存の着 作物の複製等が生じる事例が見られることから、開発・学習段階におけ る利用行為として記載しているものです。その他ご指摘の点は、原案で 既に明確と考えます。(No152,153,154,155)

  • ご指摘の箇所の記載は、著作権法上の権利制限規定は著作権者の許諾なく著作物を利用できる場合について規定したものであり、著作権者がAI 学習のための利用について反対の意思を示していることのみをもって権利制限規定の対象外とする解釈をとることは難しい、との旨を記載した ものであり、権利者と顧客とのライセンス契約との優先劣後について記載したものではありません。本考え方は、権利制限規定と、権利者と利用者との間の契約上の定めとの優先劣後について記載したものではありません。(No163,206,221,222)

  • 本考え方の取りまとめに対して評価いただいたご意見として承りまし た。文化庁としても、本考え方が取りまとまった後は、しっかりとわか りやすい周知に努めてまいります。(No166,212,293)(1.総論関係においても同じ考えが提示されている。No1以降)

  • 本小委員会における検討では、「著作権法が保護する利益は、実際に創 作された著作物の利用による利益であり、具体的な創作的表現となって いない作風については、著作権者が権利を有するものではないことか ら、生成物が学習元著作物の創作的表現と共通しない場合には、著作権 法上の『著作権者の利益を不当に害することとなる場合』には該当しな い」と考える意見が多数を占めたことから、原案のように記載しているものです(No167,169,170,171,172,173,174,175,176)

  • ご指摘の箇所の記載は、本小委員会における審議に際して、当該箇所記 載のような意見が一定数示されたという事実を受けて記載しているもの です。(No181,182,183,184,185)

  • 「大量の情報を容易に情報解析に活用できる形で整理したデータベース の著作物が販売されている場合に、当該データベースを情報解析目的で 複製等する行為」は、従来から法第30条の4ただし書の該当例として例 示しているものです。(No187,188,189,190,249,250)

  • ご指摘の点は原案で既に明確と考えます。(No194,195,196)

  • データベースの著作物としての著作物性の有無は、個別のデータベース の内容・性質に応じて判断することが必要であり、ご指摘のような類型的な評価は適切でないものと考えられます。(No198,199.200)

  • ご指摘の点については、「大量の情報を容易に情報解析に活用できる形 で整理したデータベースの著作物が販売されている場合に、当該データ ベースを情報解析目的で複製等する行為」 に該当するか否かは個別の事 案に応じて、具体的なデータベースの内容・性質や複製の態様等に照ら して判断する必要があり、ご指摘のように、これに当たるものが現実的にあり得ないと類型的に判断することは適切でないものと考えられます。ご指摘のように、これがほぼ要件を充足しない、と類型的に速断することは適切でないものと考えられます(No197,226,227,228.229)

  • 本考え方が取りまとめられた後は、示された考え方について、不正確な 理解がされないよう、社会に対して分かりやすい形で周知・啓発に向け た取組みを行って参ります。 また、法第30条の4をはじめとする 「柔軟な権利制限規定」 については、民間事業者によるその明確化に向けた取組も期待されるところです。(No204)(1.総論関係においても同じ考えが提示されている。No22以降)

  • 本考え方は、単に販売予定である場合ではなく、AI学習のための著作物 の複製等を防止する技術的な措置が講じられており、かつ、このような 措置が講じられていることや、過去の実績 (情報解析に活用できる形で 整理したデータベースの著作物の作成実績や、そのライセンス取引に関 する実績等)といった事実から、当該ウェブサイト内のデータを含み、 情報解析に活用できる形で整理したデータベースの著作物が将来販売さ れる予定があることが一定の蓋然性をもって推認される場合について記載しているものです。(No205,218,219,220)

  • ご指摘の箇所については、情報解析に活用できる形で整理されたデータ ベースの著作物が将来販売される予定があることが一定の蓋然性をもって推認される場合に、この措置を意図的に回避して当該データベースの 著作物の複製等をする行為は、法第30条の4ただし書に該当し得ることをお示ししたものです。(No233,234,235,236)

  • ご指摘の点について、本考え方では、権利者が、これらの事業者等の関 係者に対して、海賊版を掲載している既知のウェブサイトに関する情報 をあらかじめ適切な範囲で提供することで、事業者においても海賊版を 掲載しているウェブサイトを認識し、これを学習データの収集対象から除外する等の取り組みを可能とするなど、海賊版による権利侵害を助長することのない状態が実現されることが望ましいことが示されています。(No255,256,257,258,259,260,261,262,263,272)

  • 本考え方では、海賊版サイトからのAI学習データの収集が、新たな海賊 版の増加といった権利侵害を助長するものとならないよう求めていま す。このような助長行為があった場合、個別具体的な事案によっては、 侵害行為の幫助となる場合もあると考えられます。(No266,267,268,272)

  • 本考え方 では、読み手にとって可能な限り明確な記載となるよう、できる限り両論併記を避け、本小委員会の審議において委員間で多数を占めたと考えられる意見を本文に記載し、これ以外の意見を脚注に記載する こととしています。(No269)(1.総論関係においても同じ考えが提示されている。No45,46,69)

  • 本考え方は、生成AIと著作権の関係についての関係当事者からの懸念の 声を踏まえて、現行の著作権法の下で、関係する当事者が、生成AIとの 関係における著作物等の利用に関する法的リスクを自ら把握し、また、 生成AIとの関係で著作権等の権利の実現を自ら図るうえで参照されるべ きものとして、考え方をお示しするものです。海賊版等の権利侵害複製 物をAI学習のため複製することについては、5. (1) エ (オ) 記載のとおり複数のリスクがあると考えられることから、本考え方では、AI学 習データの収集を行う者が法的リスクを認識できるようにする観点から 記載をしています。(No274,275,276,277,278,279)

  • ご指摘の箇所については、学習済モデルが、学習データである著作物と 類似性のある生成物を高確率で生成する状態にある等の場合、法的に は、当該学習済モデルが、学習データである著作物と共通の創作的表現 を有しているものとして、その複製物であると評価される場合も考えら れることを前提にお示ししたものです。(No283,284,285)




2.素案に追記し対応したもの

  • ご指摘の点について、明確化のため記載を修正しました。(No106,107,108,109)

  • ご指摘の点については、アイデアとしての作風が共通するにとどまる場 合は著作権侵害にならないことを明確化する修正をしました (5. (1)イ(イ))。(No110)

  • ご指摘の点については、開発・学習段階において行われる、生成AIへの 指示・入力に用いるためのデータベースの作成行為について記載されて います。この点を明確化するため、記載を追加しました (5. (1) ア (ウ))。(No111)

  • ご指摘の点については、開発・学習段階において行われる、生成AIへの 指示・入力に用いるためのデータベースの作成行為について記載されて います。この点を明確化するため、記載を追加しました (5. (1) ア (ウ))。(No112)

  • ご指摘の点については、ご理解のとおりです。この点の明確化のため、 記載の修正をしました (5. (1) イ(イ))。(No113)

  • ご指摘の点は5. (1) ウにおいて既に記載しておりますが、明確化の ため表現の調整を行いました。(No121)

  • ご指摘を踏まえ、記載を追加しました。(No123)

  • ご指摘を踏まえ、法第47条の5に関する記載を追加しました (2. (2)ア・ウ)。(No124)

  • この点の明確化のため、記載の修正をしました (5. (1) イ (イ))。(No125)

  • ご指摘の箇所については、RAG等において、生成AIへの指示・入力に用 いるためのデータベースの作成のために既存の著作物の複製等を行う場 合を想定しています。この点が明確となるよう、記載を追加しました。(No126)

  • 明確化のため、5. (1) ウの記載との重複を整理・統合しました。(No143)

  • 明確化のため、5. (1) ウの記載との重複を整理・統合しました。(No144)

  • ご指摘の点については、開発・学習段階において行われる、生成AIへの ン指示・入力に用いるためのデータベースの作成行為について記載されて いることから、当該箇所に記載しています。なお、記載箇所は脚注から 本文中に移動させることとしました (5. (1) ウ)。(No157,158)

  • ご指摘の点について、明確化のため記載を修正しました。(No186)

  • ご指摘の点について、「大量の情報を容易に情報解析に活用できる形で 整理したデータベースの著作物が販売されている場合に、当該データ ベースを情報解析目的で複製等する行為」は、従来から法第30条の4た だし書の該当例として例示しているものですが、本考え方でお示しして いる、オンラインでデータが提供される場合については、インターネッ ト上のウェブサイトに掲載されたデータについて、AI学習のための複製 を行うクローラによるウェブサイト内へのアクセスが、robots.txtの記 述等により制限されていない場合、上記の「販売されている場合」に該 当しないことを推認させる要素となるものと考えられます。この点につ いて、明確化のため記載を追加しました (5. (1) エ (ウ))。(No191,192)

  • 本考え方では、AI学習のための複製等を防止する為の技術的な措置をと ることは自由に可能であること、また、権利者が情報解析に活用できる 形で整理したデータベースの著作物を販売している場合は、これをAI学 習目的で複製する行為は法第30条の4ただし書に該当し得ること等が確認されています。

    • robots.txtへの記載によるAI学習用クローラのブロック措置について は、少なくとも、主要なAI学習用クローラが複数ブロックされていると いった場合は、当該ウェブサイト内のデータを含み、情報解析に活用で きる形で整理したデータベースの著作物が将来販売される予定があるこ とを推認させる要素となると考えられます。

    • なお、この点に関しては、本ただし書の適用範囲が明確となることに資 するよう、robots.txtでのアクセス制限において必要となるクローラの 名称(User-agent) 等の情報が事業者から権利者等の関係者に対して適 切に提供されること、また、特定のウェブサイト内のデータを含み情報解析に活用できる形で整理したデータベースの著作物が現在販売されて いること及び将来販売される予定があること等の情報が、権利者から事 業者等の関係者に対して適切に提供されることにより、クローラにより AI学習データの収集を行おうとするAI開発事業者及びAI サービス提供事業者においてこれらの事情を適切に認識できるような状態が実現される ことが望ましいと考えられます。この点について記載を追加しました。(5.(1)工(工))。(No211,225,230,231,232,238,239,240,241,242,243,244,245,246,247)

  • 一般的な生成AIの仕組み上、学習データの一部分をコピーし、これを複数組み合わせることで生成物を生成する、といった仕組みとはなっていないものと承知しています。ご指摘を踏まえ、記載を追加しました (3. (1) ウ)。(No281)(素案に追記し対応したものにおいても同じ考えが複数提示されている)

  • 廃棄請求の認められる具体的な範囲は、廃棄請求の必要性 (差止の必要 性)等に照らして、裁判所が個別具体的な事案に応じて判断することに なると考えられます。(No290,291,292)






3.個別に考えを提示しているもの

  • 現状の生成AIは、通常、生成・利用段階において学習データである著作物と創作的表現が共通したものを常に出力するものとはいえないことから、開発・学習段階における利用許諾の要否と、生成・利用段階におけ る利用許諾の要否とは別個の問題として検討する必要があると考えられます。(No92)

  • 指摘の点については、本考え方でお示ししているように、法第30条の 4 その他の現行の著作権法の規定に照らして、著作権侵害となるか否か 等について個別に判断すべきものと考えられます。(No94)

  • ご指摘の「萎縮」は、本考え方の内容が誤って理解されることにより生じるものであることから、本考え方が取りまとめられた後は、示された 考え方について、不正確な理解がされないよう、社会に対して分かりやすい形で周知・啓発に向けた取組みを行って参ります(No97)

  • 本考え方は、判例・裁判例等の司法判断の蓄積が未だ乏しい中で、生成 AIと著作権の関係についての関係当事者からの懸念の声を踏まえて、現 時点において必要と考えられる範囲で、現行の著作権法の解釈に関する 考え方をお示しするものです。(No98)

  • ご指摘の箇所については、生成AIと著作権の関係で、開発・学習段階において、学習済みモデルの作成のためのAI学習 (事前学習又は追加的な 学習)の場面とは別に著作物が用いられる場面として、昨今、RAG等に おいて生成AIに入力するためのデータベースを作成するために既存の著 作物の複製等が生じる事例が見られることから、開発・学習段階におけ る利用行為として記載しているものです。(No105)

  • ご指摘の点については、主観的要素を客観的な間接事実から認定すると いう手法は、一般的な事実認定の方法として取られているものと承知し ています。その他ご指摘の点については、本考え方はあくまで法第30条 の4の要件その他の現行の著作権法の解釈について考え方をお示しする ものであり、具体的な判断は個別具体的な事案に応じて裁判所により判断されるものと考えられます。(No114)

  • ご指摘の点については、補足的に脚注で記載しているものです。(No115)

  • ご指摘の点については、特定のクリエイターの作品である少量の著作物 のみからなる作品群は、表現に至らないアイデアのレベルにおいて、当 該クリエイターのいわゆる「作風」を共通して有しているにとどまら ず、創作的表現が共通する作品群となっている場合もあると考えられる ことから、そのような場合の法第30条の4の適用について検討する必要 があり、お示ししたものです。(No116)

  • ご指摘の点は、AI学習のための複製を行う事業者が、侵害物の生成を抑 止するための実効的な技術的手段を講じている場合、当該事業者の行う AI学習のための複製が、非享受目的であることを推認させる事情となり得る旨をお示ししたものです。(No117)

  • ご指摘のとおり、法第30条の4をはじめとする 「柔軟な権利制限規定」 については、民間事業者によるその明確化に向けた取組も期待されるところです。
    また、権利者からAI 学習用データがライセンスの形で提供されることは、AI学習用データの適切な供給及び権利者への対価還元の観点から望 ましいと考えられます。本考え方においては、情報解析に活用できる形 で整理したデータベースの著作物が現在販売されていること及び将来販 売される予定があること等の情報が、権利者から事業者等の関係者に対 して適切に提供されることにより、AI開発事業者及びAIサービス提供事 業者においてこれらの事情を適切に認識できるような状態が実現される ことが望ましいと考えられることについても示されています。(No122)

  • ご指摘の点の記載は、第三者の著作物を許諾なく利用できる場合を定める権利制限規定に関する記載であり、ご指摘の点は明らかであると考えます。(No 127)

  • 本考え方では、享受目的が併存すると評価されうる場合について、想定 されるものを例示しています。(5. (1) イ (イ))(No130)

  • 本考え方では、生成AIとの関係での著作物の利用場面として、開発・学 習段階と生成・利用段階とが想定され、両者は利用行為として別個であ ることから、これらを分けて検討することとしています。生成・利用段 階の事情は、開発・学習段階における行為者の目的を認定する上での間 接事実として作用すると考えられます。(No131)

  • 本考え方では、生成AIの開発・学習段階においては、特定のクリエイ ターの作品である少量の著作物のみからなる作品群は、表現に至らない アイデアのレベルにおいて、当該クリエイターのいわゆる 「作風」を共 通して有しているにとどまらず、創作的表現が共通する作品群となって いる場合もあると考えられ、このような場合に、意図的に、当該創作的 表現の全部又は一部を生成AIによって出力させることを目的とした追加 的な学習を行うため、当該作品群の複製等を行うような場合は、享受目的が併存すると考えられる、との考え方が示されています。(No135)

  • 本考え方では、法第30条の4が 「当該著作物に表現された思想又は感情 を自ら享受し又は他人に享受させることを目的としない場合には」と規 定していることから、この複数の目的の内にひとつでも「享受」の目的 が含まれていれば、同条の要件を欠くこととなるとの考え方が示されています。(No136)

  • 本考え方においても、AI利用者が意図的に侵害物を生成させたとして も、通常、このような事情は、開発・学習段階における事業者の享受目 的を推認させる要素とはならないものと考えられることが示されていま す。(No137)

  • 法第30条の4における目的の如何については、行為者の主観と客観の各 事情を総合的に勘案して判断されることになると考えられます。 例えば、RAG等による出力に際して、生成AIへの指示・入力に用いられ たデータに含まれる著作物と共通した創作的表現が出力されないよう フィルタリングする技術的措置が取られている場合、享受目的を否定す る要素となり得ると考えられます。(No145)

  • 本考え方では、著作権(著作財産権)を中心に検討を行いましたが、今 後、著作者人格権や著作隣接権とAIとの関係 (俳優・声優等の声を含ん だ実演・レコード等の利用とAIとの関係等を含む) についても、検討す べき点の有無やその内容に関する検討を含め、議論を継続していくこと が必要としています。(No146)

  • 本考え方は、関係者からの懸念の声の解消のため、現行の著作権法の解 会釈に関する考え方を示すものです。特定の技術や個別の生成AIに関する 法的な位置づけの説明は、個別の事案に応じて、その開発事業者やサー ビス提供事業者において行うことが望まれます。(No147)

  • RAG等による出力が、法第47条の5における 「軽微利用」に該当するか否 かは、実際の当該RAG等による出力を、サービス提供の開始に先立って あらかじめ試験する等の方法で確認することが考えられます。(No151)

  • ご指摘の点は、事実認定において、生成・利用段階における事情が、開 発・学習段階においてAI 学習のための複製を行う者の享受目的の有無を 認定する上での間接事実として考慮されうることをお示ししたものです。(No156)

  • 著作権侵害の要件として、類似性が必要となることは既に記載していま す (5. (2) ア)。(No159)

  • 本考え方は、著作権法に関するこれまでの判例・裁判例、学説の状況及 び本小委員会における有識者の審議に基づいて、現行の著作権法の解釈 を精緻化した考え方をお示しするものであり、ご指摘のインターネット検索に関するものを含む従来の法解釈を踏まえたものです。(No160)

  • ご指摘の点について、法第30条の4ただし書の範囲については、「柔軟 な権利制限規定」の整備に際しての 「第1層・第2層・第3層」の整理も 踏まえた上で、検討する必要があると考えられます。(No162)

  • 法第30条の4ただし書は、同条本文とともに同条の適用時の要件を定め るものです。ご指摘のように 「既に行われた学習行為を事後的に違法と 評価するもの」ではありません。(No164)

  • 本考え方では、ご指摘のような措置を講じることは、開発・学習段階に おいてAI学習のための複製を行う事業者に享受目的がなかったことを推 認させる事情となり得ること (5. (1) イ(イ))、また、生成・利 用段階において著作権侵害が生じた際に、事業者が規範的な行為主体として評価される可能性を低減する要素となり得ること (5.(2)キ) が示されています。(No165)

  • 法第30条の4ただし書は 「著作権者の利益」と規定しており、同ただし 書において考慮され得る利益は、著作権法上、著作権者の利益として保 護の対象とされているものに限られると考えられます。(No177)

  • 一般的に、生成AIの生成物に含まれる創作的表現が、学習データである 著作物の創作的表現と常に共通するとはいえないと考えられます。ま た、法第30条の4ただし書は 「著作権者の利益」と規定しており、同た だし書において考慮され得る利益は、著作権法上、著作権者の利益とし て保護の対象とされているものに限られると考えられます。(No178)

  • ご指摘の点については、特定のクリエイターの作品である少量の著作物のみからなる作品群は、表現に至らないアイデアのレベルにおいて、当該クリエイターのいわゆる「作風」を共通して有しているにとどまらず、創作的表現が共通する作品群となっている場合もあると考えられることから、そのような場合の法第30条の4の適用について検討する必要 があり、お示ししたものです。「作風」 について、一定の保護を認めると解釈し得るものとのご指摘は当たらないと考えます。(No180)

  • ご指摘の点は、著作物の複製の方法が異なることのご指摘にとどまるも のと考えますが、複製の方法の如何を問わず、「大量の情報を容易に情 報解析に活用できる形で整理したデータベースの著作物が販売されてい る場合に、当該データベースを情報解析目的で複製等する行為」に該当 する場合は、従来からお示ししている、法第30条の4ただし書の該当例 となると考えます。(No193)

  • 本考え方では、従来から法第30条の4ただし書の該当例として示してい る「大量の情報を容易に情報解析に活用できる形で整理したデータベー スの著作物が販売されている場合に、当該データベースを情報解析目的 で複製等する」場合についての考え方を示しています。利用規約におい てAPIを利用しない情報解析が禁止されているか否かは、上記の判断に 直ちには影響しないと考えられます。(No201)

  • 本考え方では、本ただし書への該当性を検討するに当たっては、著作権 者の著作物の利用市場と衝突するか、あるいは将来における著作物の潜 在的販路を阻害するかという観点から、技術の進展や、著作物の利用態 様の変化といった諸般の事情を総合的に考慮して検討することが必要と 考えられることが確認されています。(No202)

  • 本考え方に記載のとおり、本ただし書への該当性は諸般の事情を総合的 に考慮して検討することが必要と考えられますが、本ただし書に該当す ると考えられる例としては、「基本的な考え方」 (9頁)において、 「大量の情報を容易に情報解析に活用できる形で整理したデータベース の著作物が販売されている場合に、当該データベースを情報解析目的で 複製等する行為」が既に示されていることから、本考え方においてはこ の例について検討を行ったものです。(No203)

  • 本考え方では、権利制限規定一般についての立法趣旨、及び法第30条の 4の立法趣旨からすると、著作権者が反対の意思を示していること自体 をもって、権利制限規定の対象から除外されると解釈することは困難としています。(No207)

  • 本考え方では、単にAI学習のための著作物の複製等を防止する技術的な 措置が講じられていれば、「当該ウェブサイト内のデータを含み、情報 解析に活用できる形で整理したデータベースの著作物が将来販売される 予定があること」が直ちに推認されるといった考え方は示されていません。本考え方では、このような措置が講じられていることや、過去の実績 (情報解析に活用できる形でf整理したデータベースの著作物の作成実績 や、そのライセンス取引に関する実績等) といった事実が、当該ウェブ サイト内のデータを含み、情報解析に活用できる形で整理したデータ ベースの著作物が将来販売されることを推認される一要素となると考えられることが示されています。(No223)

  • 本考え方では、従来から法第30条の4ただし書の該当例として示している「大量の情報を容易に情報解析に活用できる形で整理したデータベー スの著作物が販売されている場合に、当該データベースを情報解析目的 で複製等する」場合についての考え方を示しています。この場合につい ては、享受目的の販売 (ライセンス) 市場があることではなく、情報解析目的での販売がされていることが必要と考えられます。(No208)

  • 法第30条の4の適用の有無と、技術的保護手段又は技術的利用制限手段 該当性とは別個の問題であると考えられます。技術的保護手段又は技術的利用制限手段が施されている場合に、情報解 析に活用できる形で整理されたデータベースの著作物が将来販売される 予定があることが一定の蓋然性をもって推認されるか否かは、個別具体的な事案に応じて検討すべきものと考えられます。 本考え方では、AI学習のための複製を防止する技術的な措置が技術的保 護手段又は技術的利用制限手段に該当するか否かについては、今後の技 術の動向も踏まえ検討すべきものとされています。(No213)

  • ご指摘の箇所は、AI学習のためにデータベースの著作物の複製等をする 方法の例示であり、具体の方法はこれに限られるものではないと考えられます。(No214)

  • ご指摘の22頁の記載は、クローラによるAI学習データの収集(複製) を、クローラが特定の設定を判別の上で収集を行わない、又はクローラ がアクセスすることができないといった機械可読な方法により防止する 措置として現状行われているものを挙げたものです。(No237)

  • ご指摘の、複製等を防止する技術的な措置を講ずる者と、データベース の著作物を将来販売する予定がある者が同一の者でない場合であっても、情報解析に活用できる形で整理されたデータベースの著作物が将来 販売される予定があることが一定の蓋然性をもって推認される場合は、 法第30条の4ただし書に該当し得ると考えられます。(No215)

  • ご指摘の点については、「AI開発事業者やAI サービス提供事業者が、ウェブサイトが海賊版等の権利侵害複製物を掲載していることを知りな がら、当該ウェブサイトから学習データの収集を行ったという事実」 が、規範的行為主体の判断において一切考慮されないとすることは、現状の判例・裁判例に照らしても難しいと考えます。(No264)

  • 本考え方では、ウェブサイトが海賊版等の権利侵害複製物を掲載してい ることを知りながら、AI開発事業者又はAIサービス提供事業者が当該 ウェブサイトからAI 学習データの収集を行った場合は、生成・利用段階 においてAI利用者が侵害物を生成した行為について、AI学習を行ったAI 開発事業者又はAI サービス提供事業者が、規範的な行為主体として著作権侵害の責任を負う場合があることをお示ししています。(No265)

  • 本考え方でも、海賊版対策については、権利者及び関係機関による海賊 版に対する権利行使の促進に向けた環境整備等、引き続き実効的かつ強 力に海賊版対策に取り組むことが期待されることが示されています。(No270)

  • 我が国も加盟する 「文学的及び美術的著作物の保護に関するベルヌ条 約」(ベルヌ条約) 第9条第2項等で規定されるスリー・ステップ・テ ストについて、現行の著作権法における権利制限規定はこれに適合した ものとなっていると考えます。本考え方においても、このようなス リー・ステップ・テストに適合した各権利制限規定の趣旨に沿って考え方をお示ししています。
    また、本考え方では、海賊版等の権利侵害複製物をAI学習のために複製 することについて、既知の海賊版サイトに関する情報が、権利者から事 業者等に対して適切な範囲であらかじめ提供されることで、事業者にお いてAI学習の対象から除外する等の取組みを可能とするなど、海賊版を 助長することのない状態の実現に関してもお示ししています。(No271)

  • 本考え方は、あくまで、著作権法に関するこれまでの判例・裁判例、学 説の状況及び本小委員会における有識者の審議に基づいて、現行の著作 権法の解釈を精緻化した考え方をお示しするものであり、ご指摘の「現 行法の解釈指針を示す」範囲において考え方を示すものです。(No273)

  • 学習済モデルは、通常、データとして記録媒体に記録されていると考え られることから、当該記録媒体において有形的に再製されているものと 考えられます。(No282)

  • ご指摘の点について、本考え方では、現状、特定の学習データたる著作 物の影響を、学習済みモデルから取り除くことは技術的に難しいことを 示しつつ、合わせて、生成・利用段階においては、権利者が、AI開発事 業者又はAIサービス提供事業者に対して、当該生成AIによる著作権侵害 の予防に必要な措置を請求することができると考えられることが示され ています。(No286)

  • ご指摘の点は、開発・学習段階における行為者の目的について事実認定 を行う際には、生成・利用段階において学習データと創作的表現が共通 するもの (類似物) が1回生成されたというだけでは、開発・学習段階 において享受目的を有していたと認定することは経験則に照らして難し いが、類似物の生成が著しく頻発するようであれば、これは開発・学習 段階において享受目的を有していたことを推認する一要素となる、ということをお示ししたものです。(No287)

  • ご指摘の箇所については、当該学習済モデル自体が、学習データである 著作物と類似性のある生成物を高確率で生成する状態にある等の場合に ついてお示ししたものです。(No288)

  • 差止請求については、行為者の故意又は過失は通常考慮されないものと 考えられます。(No289)

  • ご指摘の点については、「必要と認められる限度」 の要件ではなく、非 享受目的等の要件で考慮されるものと考えられます。(No294)

  • 本考え方では、AI学習に関する一般論として、大量のデータを必要とす る機械学習(深層学習) の性質を踏まえると、AI学習のために複製等を 行う著作物の量が大量であることをもって、「必要と認められる限度」 を超えると評価されるものではないと考えられることが示されていま す。最終的に「必要と認められる限度」の要件を満たすか否かは、個別 の事案に応じた司法判断となります。(No295)

  • 本考え方は、司法判断に代わるものではなく、現行の著作権法の解釈に ついて、本小委員会としての考え方を示すものです。本考え方で示して いるもの以上の具体的な判断は、個別の事案における司法判断による必 要があります。(No296)

  • ご指摘の「私的利用」 について、私的使用目的の複製は従来から権利制 限の対象とされており、本考え方はこの点について新たな考え方を示す ものではありません。また、ご指摘の 「日本では、著作物のコピーをオ ンライン上で公開しても私的利用の範囲としており」 との点は、私的使 用目的の複製に関する法30条は著作物の公衆送信を対象としておらず、 またオンラインで公開することは通常、私的使用の目的を超えると考え られることから、このような行為が私的使用目的の複製として権利制限 の対象となることはありません。(No297)

開発・学習関係の考察

開発・学習関係でまとめられている意見概要は206であり、そのうち個別に考えを提示しているものが54だった。

素案に追記されたものは、素案で使われる「作風」や「著作物の複製」をはじめとした言葉の定義や意味についてより明確化するよう指摘を受けたものだったが、特徴的なものととしてAI学習のための複製等を防止する為の技術的な措置をとることは自由に可能であること、また、権利者が情報解析に活用できる形で整理したデータベースの著作物を販売している場合は、これをAI学習目的で複製する行為は法第30条の4ただし書に該当し得ることに関する内容がある。
事務局の考えでは、robots.txtへの記載によるAI学習用クローラのブロック措置については、少なくとも主要なAI学習用クローラが複数ブロックされているといった場合は、当該ウェブサイト内のデータを含み、情報解析に活用できる形で整理したデータベースの著作物が将来販売される予定があることを推認させる要素となるとの考えを示している。この点に関しては、本ただし書の適用範囲が明確となることに資するよう、robots.txtでのアクセス制限において必要となるクローラの 名称(User-agent) 等の情報が事業者から権利者等の関係者に対して適切に提供されること、また、特定のウェブサイト内のデータを含み情報解析に活用できる形で整理したデータベースの著作物が現在販売されて いること及び将来販売される予定があること等の情報が、権利者から事 業者等の関係者に対して適切に提供されることにより、クローラによりAI学習データの収集を行おうとするAI開発事業者及びAI サービス提供事業者においてこれらの事情を適切に認識できるような状態が実現されることが望ましいともしている。(No191,192,211,225,230,231,232,238,239,240,241,242,243,244,245,246,247)

開発・学習段階における事務局の考え方については以下のようにまとめる。
この考えは、判例・裁判例等の司法判断の蓄積が未だ乏しい中で、生成 AIと著作権の関係についての関係当事者からの懸念の声を踏まえて、現時点において必要と考えられる範囲で、現行の著作権法の解釈に関する考え方を示すものであり、インターネット検索に関するものを含む従来の法解釈を踏まえたもの(No98,160)である。司法判断に代わるものではなく、現行の著作権法の解釈について考え方を示すものであり、示しているもの以上の具体的な判断は、個別の事案における司法判断による必要(No296)である。

AI生成物であると識別できる用にする仕組み、AIの透明化については現在、総務省及び経済産業省 において策定に向けた検討が進められている 「AI事業者ガイドライン」 において取り上げられており、連携を進めていく(No93,248,254)。

訴訟等に関しては以下の考えを挙げる。
まず、開発・学習段階における利用行為の目的を認定する一般的な事実認定の方法として、その後の生成・利用段階における事情も間接事実となり得ることを前提としている。その上で、生成AI利用者の行為が、開発・学習段階における事業者の享受目的を推認させるものであるか否かは個別に判断されることである。
しかし、AI利用者が既存の著作物の類似物の生成を意図して生成AIに入力・指示を与えたことに起因して、生成・利用段階において侵害物の生成が頻発するような場合は、開発・学習段階における事業者の享受目的を推認させる要素とはならないとしている(No101,102,103,104)。これに関連して、開発・学習段階における行為者の目的について事実認定を行う際には、類似物の生成が著しく頻発するようであれば、これは開発・学習 段階において享受目的を有していたことを推認する一要素となるとしている。(No118,119,120)
また著作権侵害が生じた際、権利者による差止請求等が認められ得る範囲については、学習済モデルが、学習データである著作物と類似性のある生成物を高確率で生成する状態にある等の場合、法的には、当該学習済モデルが、学習データである著作物と共通の創作的表現を有しているものとして、その複製物であると評価される場合も考えられることを前提にしている(No283,284,285)。
ただし、学習データと創作的表現が共通するもの(類似物) が1回生成されたというだけでは、開発・学習段階において享受目的を有していたと認定することは経験則に照らして難しい(No118,119,120,288)。また、差止請求については、行為者の故意又は過失は通常考慮されないものと考えている(No289)。

学習済モデルは、通常、データとして記録媒体に記録されていると考えられることから、当該記録媒体において有形的に再製されているものと考え(No282)、現状、特定の学習データたる著作物の影響を、学習済みモデルから取り除くことは技術的に難しいが、生成・利用段階においては、権利者が、AI開発事業者又はAIサービス提供事業者に対して、当該生成AIによる著作権侵害の予防に必要な措置を請求することができると考えられることが示されている(No286)。また、行為者が、既存の著作物の創作的表現を出力させることを意図していたといった主観的事情も考慮されうると考えられる(No128,129)。例えばAI利用者が侵害生成物を誘発する目的で行う意図的なプロンプトエンジニアリングは、開発・学習段階における事業者の享受目的を推認させる要素とはならないものと考えられる(No137)。
そのため、AI開発事業者等が自社の開発又は提供に係るAI生成物について著作権法上の問題が発生したことを知ったときは、1.意図的な著作権侵害を目的とする可能性が高いと判断したプロンプトを入力しても創作物が生成されないようブロックすること、2.(意図的でなくとも)著作権法上の問題を生ずることとなった創作物と同一の出力がされないようフィルタリングを施すこと、等の対策を随時アップデートしながら講じることは、開発・学習段階に おいてAI学習のための複製を行う事業者に享受目的がなかったことを推認させる事情となり得ること 、また、生成・利用段階において著作権侵害が生じた際に、事業者が規範的な行為主体として評価される可能性を低減する要素となり得ることを本考えで示した(No165)。このことから脚注14では、AI学習のための複製を行う事業者が、侵害物の生成を抑止するための実効的な技術的手段を講じている場合、当該事業者の行うAI学習のための複製が、非享受目的であることを推認させる事情となり得る旨を示した。

海賊版等のウェブサイトからの学習データの収集に関しては以下の考えを挙げる。
まず、「AI開発事業者やAI サービス提供事業者が、ウェブサイトが海賊版等の権利侵害複製物を掲載していることを知りながら、当該ウェブサイトから学習データの収集を行ったという事実」 が、「AI開発事業者等が規範的な行為主体として侵害の責任を問われる可能性を高める」という考えであり、規範的行為主体の判断において一切考慮されないとすることは、現状の判例・裁判例に照らしても難しい(No264)。
ウェブサイトが海賊版等の権利侵害複製物を掲載していることを知りながら、AI開発事業者又はAIサービス提供事業者が当該ウェブサイトからAI 学習データの収集を行った場合、AI利用者が侵害物を生成した行為について、AI 開発事業者又はAI サービス提供事業者が、規範的な行為主体として著作権侵害の責任を負う場合がある(No265)。
権利者はこれらの事業者等の関係者に対して、海賊版を掲載している既知のウェブサイトに関する情報をあらかじめ適切な範囲で提供することで、事業者においても海賊版を掲載しているウェブサイトを認識し、これを学習データの収集対象から除外する等の取り組みを可能とするなど、海賊版による権利侵害を助長することのない状態が実現されることが望ましい。(No255,256,257,258,259,260,261,262,263,272)
海賊版対策については、権利者及び関係機関による海賊版に対する権利行使の促進に向けた環境整備等、引き続き実効的かつ協力に海賊版対策に取り組むことを期待する(No270)。
また特定の技術や個別の生成AIに関する 法的な位置づけの説明は、個別の事案に応じて、その開発事業者やサー ビス提供事業者において行うことが望まれる(No147)。

著作権者の利益を不当に害することとなる場合の具体例についてや、アイデア等が類似するにとどまるものが大量に生成されることについては、以下の考えを挙げる。
本小委員会における検討で、「著作権法が保護する利益は、実際に創作された著作物の利用による利益であり、具体的な創作的表現となっていない作風については、著作権者が権利を有するものではないことから、生成物が学習元著作物の創作的表現と共通しない場合には、著作権 法上の『著作権者の利益を不当に害することとなる場合』には該当しない」と考える意見が多数を占めたことから、原案のように記載している(No167,169,170,171,172,173,174,175,176,181,182,183,184,185)
著作権法上の権利制限規定は著作権者の許諾なく著作物を利用できる場合について規定したものであり、著作権者がAI 学習のための利用について反対の意思を示していることのみをもって権利制限規定の対象外とする解釈をとることは難しい。
しかしこれは、権利者と顧客とのライセンス契約との優先劣後について記載したものではなく、権利制限規定と、権利者と利用者との間の契約上の定めとの優先劣後について記載したものではない(No163,206,221,222)。

データベースとデータベースの著作物に関しては、文化庁のAIと著作権に関して将来を見越して動いていることが伺える。
まず「大量の情報を容易に情報解析に活用できる形で整理したデータベース の著作物が販売されている場合に、当該データベースを情報解析目的で複製等する行為」は、従来から法第30条の4ただし書の該当例として例示している(No187,188,189,190,249,250)。複製等を防止する技術的な措置を講ずる者と、データベース の著作物を将来販売する予定がある者が同一の者でない場合であっても、情報解析に活用できる形で整理されたデータベースの著作物が将来販売される予定があることが一定の蓋然性をもって推認される場合は、 法第30条の4ただし書に該当し得ると考える(No215)。
また、データベースの著作物としての著作物性の有無は、個別のデータベースの内容・性質に応じて判断することが必要であり、脚注20に具体例としてあげた学術論文や新聞社の記事データのデータベースが著作物の要件を満たさない等の類型的な評価は適切でないものと考えている(No198,199.200)。同様に、これに当たるものが現実的にあり得ないと類型的に判断することや、これがほぼ要件を充足しないと類型的に速断することは適切でないものとも考えている(No197,226,227,228.229)。

これらは単に販売予定である場合ではなく、AI学習のための著作物 の複製等を防止する技術的な措置が講じられており、かつ、このような措置が講じられていることや、過去の実績 (情報解析に活用できる形で 整理したデータベースの著作物の作成実績や、そのライセンス取引に関する実績等)といった事実から、当該ウェブサイト内のデータを含み、 情報解析に活用できる形で整理したデータベースの著作物が将来販売される予定があることが一定の蓋然性をもって推認される場合について記載されている(No205,218,219,220)。
この場合については、享受目的の販売 (ライセンス) 市場があることではなく、情報解析目的での販売がされていることが必要と考えられる(No208)。これは単にAI学習のための著作物の複製等を防止する技術的な措置が講じられていれば、「当該ウェブサイト内のデータを含み、情報解析に活用できる形で整理したデータベースの著作物が将来販売される 予定があること」が直ちに推認されるとは考えではない(No223)。
技術的保護手段又は技術的利用制限手段が施されている場合に、情報解析に活用できる形で整理されたデータベースの著作物が将来販売される予定があることが一定の蓋然性をもって推認されるか否かは、個別具体的な事案に応じて検討すべきものと考えられる。 AI学習のための複製を防止する技術的な措置が、技術的保護手段又は技術的利用制限手段に該当するか否かについても、今後の技術の動向も踏まえ検討すべき(No213)。利用規約においてAPIを利用しない情報解析が禁止されているか否かは、上記の判断に直ちには影響しないと考えられる(No201)。

また法第30条の4をはじめとする 「柔軟な権利制限規定」 については、民間事業者によるその明確化に向けた取組も期待される。
権利者からAI 学習用データがライセンスの形で提供されることは、AI学習用データの適切な供給及び権利者への対価還元の観点から望 ましいと考えられます。本考え方においては、情報解析に活用できる形 で整理したデータベースの著作物が現在販売されていること及び将来販売される予定があること等の情報が、権利者から事業者等の関係者に対 して適切に提供されることにより、AI開発事業者及びAIサービス提供事 業者においてこれらの事情を適切に認識できるような状態が実現される ことが望ましい。(No122)

生成AIの開発・学習段階における作風についても考えを挙げる。
特定のクリエイターの作品である少量の著作物のみからなる作品群は、表現に至らない アイデアのレベルにおいて、当該クリエイターのいわゆる「作風」を共通して有しているにとどまらず、創作的表現が共通する作品群となって いる場合もあると考えられ、意図的に当該創作的表現の全部又は一部を生成AIによって出力させることを目的とした追加的な学習を行うため、当該作品群の複製等を行うような場合は、享受目的が併存すると考えられる(No135)。しかしこれは「作風」 について、一定の保護を認めると解釈し得るものではない(No180)。
法第30条の4が 「当該著作物に表現された思想又は感情を自ら享受し又は他人に享受させることを目的としない場合には」と規定していることから、この複数の目的の内にひとつでも「享受」の目的 が含まれていれば、同条の要件を欠くこととなるとの考え方である(No137)。この目的の如何については、行為者の主観と客観の各 事情を総合的に勘案して判断されることになる。 例えば、RAG等による出力に際して、生成AIへの指示・入力に用いられ たデータに含まれる著作物と共通した創作的表現が出力されないようフィルタリングする技術的措置が取られている場合、享受目的を否定する要素となり得ると考えられる(No145)。同条本文とともに同条の適用時の要件を定めるもので、「既に行われた学習行為を事後的に違法と評価するもの」ではない(No164)。
本ただし書への該当性を検討するに当たっては、著作権者の著作物の利用市場と衝突するか、あるいは将来における著作物の潜在的販路を阻害するかという観点から、技術の進展や、著作物の利用態 様の変化といった諸般の事情を総合的に考慮して検討することが必要と考えられる(No202)。

関係する事業者において は、本考え方の内容を勘案しつつ、適切な情報開示や契約上の取り決め等を通じて、事業者間において適切な責任分配が為されるよう取り組むことを期待している。(No148,179)

4.生成・利用段階関係(本考え方「5.各論点について(3)生成物の著作物性について、(4)その他の論点について」)

意見概要数:70
意見分類:10種

5−2-X 生成・利用段階、その他
5−2-ア 検討の前提
5−2-イ(ア) 類似性の考え方について
5−2-イ(イ) 依拠性の考え方について
5−2-ウ 依拠性に関するAI利用者の主張と学習データについて
5−2-カ 差止請求として取り得る措置について
5−2-キ 侵害行為の責任主体について
5−2-ク 生成指示のための生成AIへの著作物の入力について
5−2-ケ 権利制限規定の適用について
5−2-コ 学習に用いた著作物等の開次が求められる場合について

事務局の考え

1.他の意見概要に対する考えで同様のものを提示、あるいは提示し追記しているもの

  • 本考え方が取りまとめられた後は、示された考え方について、不正確な 理解がされないよう、社会に対して分かりやすい形で周知・啓発に向け た取組みを行って参ります。(No302)(1.総論関係以降 3.開発学習段階においても同じ考えが提示されている No1,No166など)

  • 本考え方にも記載しているとおり、著作権法上保護の対象となる「創作 的表現」と、保護の対象とならない 「アイデア」 との区別は、従来から ケースバイケースで判断されるものと考えられており、具体の判断は個 別の事案に応じた司法判断による必要があると考えられます。(No304)(1.総論関係においても同じ考えが提示されている No12)

  • 類似性については、既存の著作物の表現上の本質的特徴を直接感得でき るかといったこれまでの判例上の観点から、裁判所が個別具体的な事案 に応じて判断することとなります。(No305,306)

  • AI利用者にとっての法的リスク低減の観点から、AIの透明性は重要と考えられます。依拠性についてのAI利用者による主張・立証に関して、現在、総務省及び経済産業省において策定に向 けた検討が進められている 「AI事業者ガイドライン」において取り上げ られており、本小委員会においても、このような他の検討と連携しつ つ、本考え方の検討を行っています。(No307,308,309,310,335,336,337,338,339,340,341.362363)(3.開発・学習段階においても同じ考えが提示されている。No93,248,254))

  • ご指摘の点については、AI生成物に既存の著作物との類似性が認められ る場合を前提にしつつ、当該既存の著作物がAI学習用データに含まれて いる場合でも、依拠性が否定される場合があり得ることを示したもので す。(No314,315,316,317,318,319)

  • 本考え方では、AI学習用データに既存の著作物が含まれる場合に、当該著作物に類似した生成物が生成された場合には、通常、依拠性があった と推認されるとの考え方が示されています。既存の著作物の題号などの特定の固有名詞が入力された場合 は、AI利用者が既存の著作物を認識していたことを推認させる間接事実 となるものと考えられます。(No322,323,324325,326,327)

  • 本考え方では、規範的な行為主体の判断に際して、事業者が当該生成AI について、既存の著作物の類似物を生成することを防止する措置を取っ ている場合など、侵害物が高頻度で生成されるようなものでない場合においては、たとえ、AI利用者が既存の著作物の類似物の生成を意図して生成AIにプロンプト入力するなどの指示を行い、侵害物が生成されたと しても、事業者が侵害主体と評価される可能性は低くなるものと考えら れることが示されています。(No348,349)

  • 規範的な行為主体の判断については、個別具体的な事案に応じて裁判所 において判断されるものであり、本考え方では、既存の判例・裁判例に 照らして、規範的な行為主体の判断において考慮されると考えられる要 素をお示ししているものです。(No352,353,354)

  • 本考え方は、生成AIと著作権の関係についての関係当事者からの懸念の 声を踏まえて、現行の著作権法の下で、関係する当事者が、生成AIとの 関係における著作物等の利用に関する法的リスクを自ら把握し、また、 生成AIとの関係で著作権等の権利の実現を自ら図るうえで参照されるべ きものとして、考え方をお示しするものです。(No358,359)(1.総論関係 3.開発学習段階においても同じ考えが提示されている。No7,8,9148,179)


2.素案に追記し対応したもの

  • ご指摘を踏まえ、「3.生成AIの技術的な背景について」 において生成 AIに関係する当事者の記述を追加しました。(No299)

  • ご指摘の点については、生成・利用段階において、AI生成物に既存の着 作物との類似性及び依拠性が認められる場合、既存の著作物の著作権者 が著作権侵害に基づく差止請求等の措置を取ることができることを明確 化するよう、記載を追加しました (5. (2) ア)。(No303)

  • ご指摘を踏まえ、想定される具体例の例示を追加しました。(No320)

  • 明確化のため、記載を修正しました。(No328,329,330)

  • 依拠性の考え方は既存の判例・裁判例の考え方に則ったものとなっています。また、ご指摘を踏まえ、不当利得として認められるのは、著作物 の使用料相当額として合理的に認められる額であることを明確化しまし た。(No331,332)

  • 本考え方では、読み手にとって可能な限り明確な記載となるよう、でき る限り両論併記を避け、本小委員会の審議において委員間で多数を占め たと考えられる意見を本文に記載し、これ以外の意見を脚注に記載する こととしています。依拠性がないと判断される場合について、ご指摘を踏まえ追記しました。利用者が著作権侵害の責任を問われるリスクを低減するためには、AI利 用以外の場合と同様、AI生成物が既存の著作物と類似していないかを確認することが考えられます。(N0333)((1.総論関係 3.開発・学習段階関係においても同じ考えが提示されている。No45,46,69,269)

  • ご指摘を踏まえ、記載を追加しました。(No342)

  • ご指摘を踏まえ、AI生成物の生成・利用が著作権侵害となる場合、物理 的な行為主体であるAI利用者が著作権侵害行為の主体として、著作権侵 害の責任を負うのが原則であることを明記しました。(No346)

  • 明確化のため、記載を修正しました。(No350,351)

  • 技術的な手段に限らず、エンドユーザー向け利用規約でプロンプトの入 力内容を制限すること等もこれに該当しうることから、該当箇所の記載 を修正しております。(No355)

  • 技術的な手段に限定されるものではないことから、ご指摘を踏まえ、記 述を修正しました。(No356)

  • ご指摘の点については、明確化のため、5. (1) ウの記載を修正して います。(No360)

  • ご指摘を踏まえ、記載を追加しました。(No365)

個別に考えを提示しているもの

  • AIによる生成又は生成物の利用に伴う著作権侵害の場合も、損害賠償額 の算定については従来の考え方と同様と考えられます。なお、ご指摘の ようなイラストの要素の配置のみが共通しているような場合に関して は、損害論に先立って、類似性の有無等の観点で、著作権侵害が成立するか否かが問題となるものと考えられます。(No298)

  • 本考え方では、生成・利用段階においては、生成と利用の場面それぞれ で故意又は過失の有無について判断は異なり得ると考えられること、ま た、生成時の複製については権利制限規定の範囲内であったとしても、 生成物の譲渡や公衆送信といった利用時には、権利制限規定の範囲を超 える行為として、著作権侵害となる場合があるため留意が必要であること等が確認されています。(No300)

  • 法第30条の4をはじめとする 「柔軟な権利制限規定」 については、民間 事業者によるその明確化に向けた取組も期待されるところです。(No301)

  • 依拠性と過失の有無については、それぞれ別個に判断されるものと承知 しています。(No311)

  • お示ししている事例は、AI利用者が既存の著作物を認識していることが 明らかである例としてお示ししたものであり、これに限定されるもので はありません。(No312)

  • 規範的な行為主体の判断については、個別具体的な事案に応じて裁判所 において判断されるものであり、本考え方では、既存の判例・裁判例に 照らして、規範的な行為主体の判断において考慮されると考えられる要 素をお示ししているものです。(No313)

  • ご指摘の点については、依拠性の判断において、開発・学習段階におい て学習に用いられた著作物の創作的表現が、生成・利用段階において生 成されることはないといえる状態の程度に応じ、個別具体的な事案に応 じて裁判所により判断されるものと考えられます。(No321)

  • 利用者においては、学習データに当該著作物が含まれていないこと等を 立証するために、AI事業者の協力が必要となることから、利用にあたっ ては、そうした情報が開示されるかどうかを確認することが望まれます。(No334)

  • 本考え方では、AI学習に用いられる学習用データセットからの当該著作 物の除去が、将来の侵害行為の予防措置の請求として認められ得ると考 えられる場合として、著作権侵害の対象となった当該著作物が、将来に おいてAI学習に用いられることに伴って、複製等の侵害行為が新たに生 じる蓋然性が高いといえる場合を挙げており、一度でも侵害物を生成す ればデータセットからの廃棄を請求可能といった記載とはなっておりま せん。(No344)

  • 本考え方では、著作権侵害の対象となった当該著作物が、将来において AI学習に用いられることに伴って、複製等の侵害行為が新たに生じる蓋 然性が高いといえる場合は、当該AI学習に用いられる学習用データセッ トからの当該著作物の除去が、将来の侵害行為の予防措置の請求として 認められ得ると考えられることが示されています。(No345)

  • 本考え方では、規範的行為主体の判断において、AI開発事業者から類似 物の生成を防止する技術的措置を講じていることの表明保証を受けてい ることがどのように評価されるか触れておりませんが、一方で、AI開発 事業者・AIサービス提供事業者等の関係事業者間で、契約上の表明保証条項等により適切な責任分担が行われることは望ましいと考えます。(No347)

  • 本考え方の記述は、特定の技術的措置を推奨するものではなく、既存の 判例・裁判例において物理的な行為主体以外の者が規範的な行為主体と して著作権侵害の責任を負う場合があることを踏まえ、このリスクを下 げる要素となりうる事項を挙げているものです。(No357)

  • ご指摘の点については、重複した記載となるため不要と考えます。(No361)

  • 依拠性の立証に際してどのような情報の開示が必要となるか、また、文 書提出命令等の判断において文書提出義務が認められるか等は、個別具 体的な事案に応じて裁判所において判断されるものと考えられます。(No364)

  • 依拠性の立証においては、データの開示を求めるまでもなく、高度の類 似性があることなどでも認められ得ます。仮に営業秘密に該当する場合 には、通常の文書提出命令の場合と同様、裁判所において適切に判断さ れると考えます。(No366)

  • 仮に学習データの開示が営業秘密に該当する場合には、通常の文書提出 命令の場合と同様、裁判所において適切に判断されると考えます。(No367)


生成・利用段階関係の考察

生成・利用段階関係でまとめられている意見概要は70であり、そのうち個別に考えをあげているものが16だった。

素案に追記されたものは以下のものがあがる。
生成AIの当事者について明確にするもの。著作権侵害に基づく差止請求等の措置を取ることができることの明確化。生成AIを利用するにあたっての依拠性の考えや判断の具体例の追加。AI生成物の生成・利用が著作権侵害となる場合に物理 的な行為主体であるAI利用者が著作権侵害の責任を負うのが原則であることの明記。生成AIサービスを提供している企業が著作権侵害の侵害主体と評価される可能性を低くするためどのような「技術的な手段」を施していればよいと考えられるかの追記。権利者側が依拠性を立証するため、あるいは被疑侵害者が依拠性が存在しないことを立証するために学習用データの開示を求めることもあり得ることの追記。

生成・利用段階関係における事務局の考え方については以下のようにまとめる。

AI利用者にとっての法的リスク低減の観点から、AIの透明性は重要と考えられ、依拠性についてのAI利用者による主張・立証に関しては現在、総務省及び経済産業省において策定に向けた検討が進められている 「AI事業者ガイドライン」において取り上げられており、このような他の検討と連携しつつ、検討を行う。(No307,308,309,310,335,336,337,338,339,340,341.362363)

類似性や依拠性に関しては以下の考えが挙げられる。
AI生成物に既存の著作物との類似性が認められる場合を前提にしつつ、AI学習用データに既存の著作物が含まれる場合に当該著作物に類似した生成物が生成された場合には、通常、依拠性があったと推認される。また。既存の著作物の題号などの特定の固有名詞が入力された場合 は、AI利用者が既存の著作物を認識していたことを推認させる間接事実となるものと考えられる。(No322,323,324325,326,327)
しかし、当該既存の著作物がAI学習用データに含まれている場合でも、依拠性が否定される場合があり得る(No314,315,316,317,318,319)。例えば、規範的な行為主体の判断に際して、事業者が当該生成AI について、既存の著作物の類似物を生成することを防止する措置を取っている場合など、侵害物が高頻度で生成されるようなものでない場合においては、たとえ、AI利用者が既存の著作物の類似物の生成を意図して生成AIにプロンプト入力するなどの指示を行い、侵害物が生成されたと しても、事業者が侵害主体と評価される可能性は低くなるものと考えられる(No348,349)。これらは既存の判例・裁判例に 照らして、規範的な行為主体の判断において考慮されると考えられる要素を示しているものである(No352,353,354)。
AIによる生成又は生成物の利用に伴う著作権侵害の場合も、損害賠償額の算定については従来の考え方と同様と考えられる。イラストの要素の配置のみが共通しているような場合に関しては、損害論に先立って、類似性の有無等の観点で、著作権侵害が成立するか否かが問題となるものと考えられる(No298)。

また、生成と利用の場面それぞれで故意又は過失の有無について判断は異なり得ると考えられること、生成時の複製については権利制限規定の範囲内であったとしても、 生成物の譲渡や公衆送信といった利用時には、権利制限規定の範囲を超 える行為として、著作権侵害となる場合があるため留意が必要である(No300)。

学習用データセットから著作物を除去することについてが以下の考えがあがる。
AI学習に用いられる学習用データセットからの当該著作物の除去が、将来の侵害行為の予防措置の請求として認められ得ると考えられるのは、著作権侵害の対象となった当該著作物が、将来においてAI学習に用いられることに伴って、複製等の侵害行為が新たに生 じる蓋然性が高いといえる場合である。一度でも侵害物を生成すればデータセットからの廃棄を請求可能というわけではない(No344)。著作権侵害の対象となった当該著作物が、将来において AI学習に用いられることに伴って、複製等の侵害行為が新たに生じる蓋然性が高いといえる場合は、当該AI学習に用いられる学習用データセッ トからの当該著作物の除去が、将来の侵害行為の予防措置の請求として認められ得ると考えられることが示されています。(No345)

法第30条の4をはじめとする 「柔軟な権利制限規定」 については、民間事業者によるその明確化に向けた取組も期待される。(No301)
利用者においては、学習データに当該著作物が含まれていないこと等を立証するために、AI事業者の協力が必要となることから、利用にあたっては、そうした情報が開示されるかどうかを確認することが望まれます(No334)。規範的行為主体の判断において、AI開発事業者から類似物の生成を防止する技術的措置を講じていることの表明保証を受けてい ることがどのように評価されるか触れていないが、しかし、AI開発 事業者・AIサービス提供事業者等の関係事業者間で、契約上の表明保証条項等により適切な責任分担が行われることは望ましいと考える(No347)。

5.著作物性・その他の論点関係(本考え方「5.各論点について(3)生成物の著作物性について、(4)その他の論点について」)

意見概要数:26
意見分類:4種

5−3-ア 整理の前提及び整理することの意義・実益について
5−3-イ 生成AIに対する指示の具体性とAI精製物の著作物性との関係について
5−3-ウ 著作物性がないものに対する保護について
5−4 その他の論点について

事務局の考え

1.他の意見概要に対する考えで同様のものを提示、あるいは提示し追記しているもの

  • 本考え方では、AI生成物が人の著作物となる場合について、人の創作的 寄与があるといえるものがどの程度積み重なっているか等を総合的に考 慮して判断されるものとして、その考慮要素等に関する考え方が示されています。(No373,374)

  • AIと著作権の関係については、今後も、著作権侵害等に関する判例・裁 判例をはじめとした具体的な事例の蓄積、AIやこれに関する技術の発 展、諸外国における検討状況の進展等を踏まえて、引き続き検討を行っ てまいります。(No380,381,382,385,386

  • )(1.総論関係 3.学習開発関係 4.生成利用段階関係においても同じ考えが複数回提示されている)

  • AIの透明性については、現在、総務省及び経済産業省において策定に向 けた検討が進められている 「AI事業者ガイドライン」において取り上げ られており、本小委員会においても、このような他の検討と連携しつ つ、本考え方の検討を行っています。(1.総論関係 3.学習開発関係 4.生成利用段階関係においても同じ考えが複数回提示されている)

  • 本考え方では、著作物に当たらないものについて著作物であると称して 流通させるという行為については、契約上の債務不履行責任、詐欺行為 としての不法行為責任及び刑事罰等の可能性が示されており、著作権法 で新たに対応を行う場合は、これらの既存の措置との関係を整理した上 で検討することが必要と考えられます。(No387,388)

  • 本考え方では、法第30条の4の趣旨を踏まえると、AI開発に向けた情報 解析の用に供するために著作物を利用することにより、著作権法で保護 される著作権者等の利益が通常害されるものではないため、対価還元の 手段として、著作権法において補償金制度を導入することは理論的な説 明が困難であるとの考え方が示される一方で、著作権法の枠内にとどま らない議論として、技術面や考え方の整理等を通じて、市場における対 価還元を促進することについても検討が必要であるとされています。(No389,390)

  • 本考え方では、著作権(著作財産権)を中心に検討を行いましたが、今 後、著作者人格権や著作隣接権とAIとの関係 (俳優・声優等の声を含ん だ実演・レコード等の利用とAIとの関係等を含む) についても、検討す べき点の有無やその内容に関する検討を含め、議論を継続していくこと が必要としています。(No392,393)(1.総論関係 3.学習開発関係 同じ考えが提示されている。(No32,33,84,No146)

2.素案に追記し対応したもの

  • 明確化のため、記載を追加しました。(No372)

  • 明確化のため、記載を追加しました。(No379)

3.個別に考えを提示しているもの

  • AI生成物であっても、著作権法上の「著作物」の定義に該当する場合、 著作物となり得ます。本考え方では、著作物の定義から、人の創作的寄 与が必要であることを確認した上で、AI生成物の著作物性の判断の際 に、創作的寄与の有無に関して考慮されると考えられる要素の例を示し ています。(5. (3) イ)(No368)

  • AI生成物について誰が著作権を有するかという点については、著作権法上の従来の解釈における著作者の認定と同様に考えられ、共同著作物に 関する既存の裁判例等に照らして判断することになると考えられます。 なお、AIによる生成が既存の著作物に対する著作権侵害を生じさせるか という点と、AI生成物が新たな著作物となるかという点は別個の問題で あり、AI生成物が新たな著作物となる場合でも、既存の著作物との類似 性及び依拠性がある部分が含まれている場合には、既存の著作物の著作 権者は著作権侵害に基づく権利行使が可能です。(No369)

  • AIによる生成が既存の著作物に対する著作権侵害を生じさせるかという 点と、AI生成物が新たな著作物となるかという点は別個の問題であり、 AI生成物についても、著作権法上の「著作物」の定義に該当する場合、 著作物となり得ます。本考え方では、AI生成物の著作物性の判断の際に 考慮されると考えられる要素の例を示しています。(5. (3) イ)(No370)

  • 著作権侵害となるのは、類似性に加えて依拠性が認められる場合であ り、生成前から存在していた既存の著作物は、その後に生成されたAI生 成物に依拠していることはないと考えられることから、既存の著作物が AI生成物に類似していたとしても、このような場合は著作権侵害とはな らないと考えられます。(No371)

  • 本考え方では、AI生成物に対する加筆・修正部分に著作物性が認められるのは、当該加筆・修正が創作的表現といえるものである場合とされています。創作的表現に至らない、限定的な加筆・修正を加えたにとどま る場合は、当該加筆・修正部分にも著作物性は認められないと考えられ ます。(No375)

  • 本考え方では、加筆・修正については 「創作的表現といえる加筆・修正」 がある場合は、これが加えられた部分について、通常、著作物性が認め られるとの考え方が示されています。創作的表現に至らない、限定的な 加筆・修正を加えたにとどまる場合は、当該加筆・修正部分にも著作物性は認められないと考えられます。(No376)

  • 本考え方では、指示・入力 (プロンプト等)の分量・内容について、単に 長大な指示であれば著作物性が認められるといった考え方ではなく、創作的寄与があるといえるものがどの程度積み重なっているか等を総合的 に考慮して判断されるとの考え方が示されています。(No377)

  • 本考え方は、いずれかの要素があれば直ちにAI生成物が著作物となると いった考え方を示すものではなく、AI生成物の著作物性を判断するに当 たって総合的に考慮されると考えられる要素を示しています。個別具体 的な事案に応じて、これらの要素の程度から、人の創作的寄与があるといえる場合は、AI生成物に著作物性が認められ得ると考えられます。(No378)

  • ご指摘の点について、本考え方では、現状、特定の学習データたる著作 物の影響を、学習済みモデルから取り除くことは技術的に難しいことを 示しつつ、合わせて、生成・利用段階においては、権利者が、AI開発事 業者又はAIサービス提供事業者に対して、当該生成AIによる著作権侵害 の予防に必要な措置を請求することができると考えられることが示されています。(No384)

  • 本考え方では、現状の技術状況を踏まえて、現時点では、学習済みモデ ルから、学習に用いられた特定の著作物の影響を除去するということは 技術的に困難、又は再度学習済みモデルの作成を行うことが必要となる ため時間的・費用的に難しいとの考え方が示されています。他方で、AI と著作権の関係については、今後も、著作権侵害等に関する判例・裁判 例をはじめとした具体的な事例の蓄積、AIやこれに関する技術の発展、 諸外国における検討状況の進展等を踏まえて、引き続き検討を行ってま いります。(No385)

  • 本考え方では、コンテンツ創作の好循環の実現を考えた場合に、著作権 法の枠内にとどまらない議論として、技術面や考え方の整理等を通じ て、市場における対価還元を促進することについても検討が必要である と考えられることが示されています。AIと著作権の関係については、今 後も、著作権侵害等に関する判例・裁判例をはじめとした具体的な事例 の蓄積、AIやこれに関する技術の発展、諸外国における検討状況の進展 等を踏まえて、引き続き検討を行ってまいります。(No386)

  • 本考え方では、法第30条の4の趣旨を踏まえると、AI開発に向けた情報 解析の用に供するために著作物を利用することにより、著作権法で保護 される著作権者等の利益が通常害されるものではないため、対価還元の 手段として、著作権法において補償金制度を導入することは理論的な説 明が困難であるとの考え方が示される一方で、著作権法の枠内にとどま らない議論として、技術面や考え方の整理等を通じて、市場における対 価還元を促進することについても検討が必要であるとされています。(No391)

著作物性・その他の論点関係の考察

著作物性・その他の論点関係でまとめられている意見概要は26であり、そのうち個別に考えを提示しているものが12だった。

素案に追記されたものは以下のものが挙げられる。生成AIが利用された結果として生じる保護可能な作品の部分は著作権保護されること。著作物性がないコンテンツに対しても法的な保護が与えられることがあり得る要件や裁判例。

著作物性・その他の論点関係における事務局の考え方については以下のようにまとめる。

AI生成物が人の著作物となる場合に関しては以下の考えがあがる。
人の創作的寄与があるといえるものがどの程度積み重なっているか等を総合的に考慮して判断されるものとして、その考慮要素等に関する考え方を示しており(No373,374)、AI生成物であっても、著作権法上の「著作物」の定義に該当する場合、 著作物となり得る。著作物の定義から、人の創作的寄与が必要であることを確認した上で、AI生成物の著作物性の判断の際に、創作的寄与の有無に関して考慮されると考えられる要素の例も示している。(No368)
また、AI生成物について誰が著作権を有するかという点については、著作権法上の従来の解釈における著作者の認定と同様、共同著作物に関する既存の裁判例等に照らして判断することになると考えられる。 なお、AIによる生成が既存の著作物に対する著作権侵害を生じさせるかという点と、AI生成物が新たな著作物となるかという点は別個の問題である。AI生成物が新たな著作物となる場合でも、既存の著作物との類似性及び依拠性がある部分が含まれている場合には、既存の著作物の著作 権者は著作権侵害に基づく権利行使が可能である(No369,370)。
また、AI生成物に対する加筆・修正部分は著作物性が認められるのは、当該加筆・修正が創作的表現といえるものである場合である。創作的表現に至らない、限定的な加筆・修正を加えたにとどまる場合は、当該加筆・修正部分にも著作物性は認められない(No375,376)。これは指示・入力 (プロンプト等)の分量・内容についても、単に長大な指示であれば著作物性が認められるといった考え方ではなく、創作的寄与があるといえるものがどの程度積み重なっているか等を総合的に考慮して判断される(No377)。

これらの考え方や要素は、いずれかの要素があれば直ちにAI生成物が著作物となることを示すものではなく、AI生成物の著作物性を判断するに当たって総合的に考慮されると考えられる要素を示している。個別具体的な事案に応じて、これらの要素の程度から、人の創作的寄与があるといえる場合は、AI生成物に著作物性が認められ得ると考える(No378)。

著作物に当たらないものについて著作物であると称して流通させるという行為については、契約上の債務不履行責任、詐欺行為としての不法行為責任及び刑事罰等の可能性が示されており、著作権法で新たに対応を行う場合は、これらの既存の措置との関係を整理した上 で検討することが必要と考えられる(No387,388)。

法第30条の4の趣旨を踏まえると、AI開発に向けた情報 解析の用に供するために著作物を利用することにより、著作権法で保護 される著作権者等の利益が通常害されるものではないため、対価還元の 手段として、著作権法において補償金制度を導入することは理論的な説明が困難であるとの考え方が示される一方で、著作権法の枠内にとどま らない議論として、技術面や考え方の整理等を通じて、市場における対価還元を促進することについても検討が必要である(No389,390,391)。コンテンツ創作の好循環の実現を考えた場合に、著作権法の枠内にとどまらない議論として、技術面や考え方の整理等を通じ て、市場における対価還元を促進することについても検討が必要である(No386)

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