2017年に読んだ本

毎年恒例、年の瀬に一年の振り返りを綴ろうと思い立ったものの、例年通りまとまらずに年を越す。年末年始のSNS更新は諦めつつも、昨年はよく本を読んだなぁと思って読んだ本をリストアップしていたら、なんとなく自分の興味関心が透けて見えてきた。思考も興味関心もとっちらかってて普段あまり外に出さなかったので、せっかくなら紡いでみようと思い今に至る。自分のための文章なので、である調を採用してみる。

リストアップしてみたところ、2017年はざっと数えて43冊の本を読んでいた。子育て本、ビジネス書・自己啓発、あと理系的な興味の本が多かった。

子育て関係14冊

コウノドリ1〜x巻 / 鈴ノ木 ユウ
嫁ハンをいたわってやりたい ダンナのための妊娠出産読本 / 荻田和秀
最新 育児の百科 / 松田道雄
小児科医ママの育児の不安解決book / 森戸やすみ
「語りかけ」育児 / サリー・ウォード
子どもの心のコーチング / 菅原裕子
仕事と家庭は両立できない? / アン=マリー・スローター
「育休世代」のジレンマ / 中野 円佳
マンションは学区で選びなさい / 沖有人
グラフィック乳幼児心理学 / 若井邦夫
記号創発ロボティクス 知能のメカニズム入門 / 谷口忠大
はらぺこあおむし / エリック・カール
じゃあじゃあびりびり / まついのりこ
しましまぐるぐる / 柏原晃夫

昨年は7月に長女が生まれた。初めてづくしで学びの連続だった。

妊娠出産については「コウノドリ」とそのモデルとなった荻田先生の「ダンナのための妊娠出産読本」から学ぶ。どちらもとてもいい教科書になり、またもしものときの覚悟ができた。

7月に無事に生まれた後も、心配事は日々生じた。ネットではエビデンス不明の記事しか出てこなくて困っていた。そんなときに、辞書のように信頼していたのが、妻の実家にあった「最新 育児の百科」(1987年初版)。一定の信頼を置けるものが手元にあったのはとてもよかった。

妻から紹介された「語りかけ育児」は絶賛実践中。意識して子供と向き合う30分間は案外難しい。「子どもの心のコーチング」は子供と話せるようになってからの本。子どもが自主性、自己肯定感、自律、責任などを身につける上での親の向き合い方について書かれている。親の側というよりも、朝起きれなかったり宿題をやらなかったり自己肯定感等を育めていなかったりする自分自身との向き合い方を考えさせられた。

育休取得に苦労していた最中に読んでいたのが「仕事と家庭は両立できない?」。仕事と家庭のフィット、競争とケアの話。どう両立するかは答えは出ていないけれども、今後の人生の優先順位と共働きでのキャリア観が変わった。

赤ちゃんの日々の成長を目の当たりにしている中で、ハンドリガードという現象(子どもが自らの手を発見する)を知った。「どうやって子どもは概念を獲得していくのだろう」と気になって「記号創発ロボティクス」を読んだ。身体を介した知覚と行動のループから概念(入力と出力の間の関連性の予測のようなもの?)を獲得することについて、構成論的アプローチで研究している方の本。AlphaGoが李世ドルに勝利する前の出版(2014年)で直接的に深層学習について触れているわけではないけれど、とても深層学習チックな話だった。日々の赤ちゃんの行動がもうディープラーニングにしか見えなくなった。また本書を読んで、発達心理学の方面ではピアジェの理論として概念獲得の話が体系化されているらしいことを知る。初期段階では初期設定の反射を繰り返したり、快楽を得られた行為を繰り返す中で、出力としての行動と入力刺激との関係からシェマ(行為や認識の概念?)を獲得していくとかなんとか。これがめちゃくちゃおもしろい。詳しくはこちらのブログやこちら臼井隆志さんのnoteを参照。現在探求中。

絵本はお互いの実家から大量に掘り出してきた。「しましまぐるぐる」だけは新しく購入。どの絵本にしろ繰り返し表現が好まれるのはなぜだろう。

人生と行動について12冊

イノベーション・オブ・ライフ / クレイトン・クリステンセン
はてしない物語 / ミヒャエル・エンデ
嫌われる勇気 / 岸見一郎
やり抜く力 / アンジェラ・ダックワース
アルケミスト―夢を旅した少年  / パウロ・コエーリョ
私とは何か――「個人」から「分人」へ / 平野啓一郎
夜と霧 新版 / ヴィクトール・E・フランクル
漫画 君たちはどう生きるか / 吉野源三郎
謙虚なコンサルティング / エドガー・H・シャイン
「良い質問」をする技術 / 粟津 恭一郎
モチベーション3.0 / ダニエル・ピンク
キャリア・アンカー / エドガー・シャイン

仕事だけでもいっぱいいっぱいで引きずられがちだけどこれから共働き子育てを始めたい。いったいどうすればいいんだという悩みから、いろいろ考え直そうと試行錯誤した一年だった。

「自分の軸」とか「主体性」とか「やりたいこと」とかがなかったがために荒波に揉まれて転覆しそうになっていた頃に、自分の人生(と家族の人生)に自分で責任を持とうとか何とか思うようになって手に取ったのが「イノベーション・オブ・ライフ」だった気がする。経営学の視点から人生、目的、戦略、優先事項、資源配分について考える本という印象。一番ぐさっときたのは「資源配分の方法が、自分のきめた戦略を支えていなければ、その戦略をまったく実行していないのと同じだ。」という一文。目的や戦略があっても行動できていない自分に直面する。

児童書好きな母親から、この歳になって「はてしない物語」を借りる。ハードカバーで装丁はあかがね色の布張り。普段は専ら電子書籍だけれども、この本は実体ある本で読めてよかった。本の中で何度も問われる次の言葉は、昨年の課題テーマになった。"「『汝の欲することをなせ』というのは、ぼくがしたいことはなんでもしていいっていうことなんだろう、ね?」「ちがいます。それは、あなたさまが真に欲することをすべきだということです。あなたさまの真の意志を持てということです。これ以上にむずかしいことはありません。」"

「変われないこと」について。行動できずに変われずにいる青年の鬱屈にひたすら共感しながら読んだ「嫌われる勇気」。原因ではなく目的を考える。自分にできることに集中できる思考の枠組みなんだろうと理解した。これを読んで少し我儘になり少し周りに負担をかけ少し自分を大事にするようになった。しかしまだまだ行動力が足りていない。

「継続できないこと」について。自分の興味が長く続かないことが自分の行動にとって結構致命的だなぁと思っていた頃に「やり抜く力(GRIT)」を読む。人生の大目標として選んだもののためならやり抜く力が発揮できる(大目標よりも優先してることがあるならそっちがより上位の大目標)とあったので、人生の大目標を考える。これが結構難しい。大目標のためであればものぐさな自分でも動けるのではと思ったが、蓋を開けたら動けていない。現状維持の方が大目標だなんてことは否定したい。困ったので試行錯誤は続く。

「選択」について。友人に紹介されて読んだ「アルケミスト」。夢で見たピラミッドの宝物を目指して羊使いの少年が旅をする話。旅の先々で決断を迫られる。他者からの期待、現状維持、お金や安定、最愛の人、そして夢に見た宝物。自分がより望む方を自分で決断する。オアシスに残ろうとした少年に対する錬金術師の言葉は、結局現状維持を選びがちな自分にもぐさりとくる。"なぜなら、おまえをオアシスに引き止めたものは、二度と帰ってこないのではないかというお前自身の恐れだったからだ。その時、おまえの宝物は永久に埋もれてしまったと、前兆は語るだろう。"

「分人」について。以前から気になっていた「分人」について学ぶべく、「私とは何か――「個人」から「分人」へ」を読んだ。"私という人間は、対人関係ごとのいくつかの分人によって構成されている。そして、その人らしさ(個性)というものは、その複数の分人の構成比率によって決定される。分人の構成比率が変われば、当然、個性も変わる。"という考え方。「◯◯での自分は本当の自分じゃないと感じる」「他者から自分のことを決めつけられることに反発を覚える」「将来何になりたいの?という質問がつらかった」というエピソードに強くうなずきつつ、それらを分人の概念で捉え直す。本著の主張とはずれるかもしれないが、自分の「一度決めてもその後簡単に気が変わる、選択・決断・約束・予約・計画を苦手と感じる」ことも、分人の考え方で見てみたらけっこう腑に落ちた。

「なぜ生きるか」について。「不安と心配」に本で保険をかけようという記事を読んで、いつか読もうと思っていた「夜と霧」を読んだ。強制収容所という極限の状況にあっても、運命と対峙し、絶望から踏みとどまり、自分を見捨てず投げやりにならず、希望も尊厳を放棄せず、未来を信じ、精神的に何かをなしとげる。投げやりで諦めがちな自分には次の言葉を書き記す。"わたしたちが生きることからなにを期待するかではなく、むしろひたすら、生きることがわたしたちからなにを期待しているかが問題なのだ"。

「どう生きるか」について。「君たちはどう生きるか」、そう、それが知りたいんですよと思いながら手に取った。”心に感じる苦しいやつらさは人間が人間として正常な状態にいないことから生じて、そのことを僕達に知らせてくれるものだ。”、"自分勝手な欲望が満たされないからといって、自分を不幸だと考えているような人もある。(中略)その場合にも、人間は、そんな自分勝手の欲望を抱いたり、つまらない見栄を張るべきものではないという真理が、この不幸や苦痛の後ろにひそんでいる。"という考え方は積極的に活用しようと思った。

「厄介な問題への取り組み方」について。たまたまSNS上で見た書評をきっかけに、「謙虚なコンサルティング」を読んだ。解決に必要な知識や技術が自明でない「適応を要する課題」に取り組むには、クライアント自身が学習し続けて、ものの見方、世界の捉え方を変えていく必要がある。そのため必要な関係性と対話の仕方についての本。解決策を示す・教えるのではなく、問いかけて気づきを引き出す。化物語の登場人物、忍野メメの「自分は助けない、相手が勝手に助かるだけ」という言葉を思い出す。また、読み始めた頃に友人からコーチングという概念を教わり、本書の話に似てるなと思い興味を持つ。その後縁あって実際にコーチングを受ける機会があり、自分のこれからという厄介な問題について考えと行動を進めた。

好奇心の本8冊

利己的な遺伝子 / リチャード・ドーキンス
世界はシステムで動く  / ドネラ・H・メドウズ
重力とは何か / 大栗博司
物理数学の直観的方法 / 長沼伸一郎
ゲーデル、エッシャー、バッハの薄い本#1 / ゆるげぶ
アフォーダンス――新しい認知の理論 / 佐々木 正人
法のデザイン / 水野祐
サービスデザインの教科書 / 武山政直

研究室時代に「SYNC」を読み、自己組織化、非線形科学、創発、複雑系、人工生命に魅了された。研究では結局追求できなかったものの、これらへの興味は未だに衰えず。その延長として今年読んだ/読んでいるのが「世界はシステムで動く」「利己的な遺伝子」。ぽちぽちとprocessingでgenerative art的なものを触ったりもしたけれど、この領域の興味ももっと深めて手を動かして、何かしら形にしてみたい。

ものごとの原理を突き詰めていくのってとても面白いですよね?法則・定理を遡っていくと公理に達する、みたいな。数学でも物理でも化学でも生物でもシステムでも、根源的な原理原則・起源・公理はとても魅力的に映る。そんな興味関心の持ち方から読み始めたのが、「重力とは何か」「物理数学の直観的方法」「ゲーデル、エッシャー、バッハの薄い本#1」。

唯一、仕事と関連するのが「法のデザイン」。日々法令の条文とにらめっこし、規制を考えていると、最低限としてはいいけれども社会のデザインとしてはいまいちだなと思うことがしばしば。そんな中で、「法により創造性やイノベーションを加速させることは可能か」と問い、「リーガルデザイン」という新しい考え方を提唱する本書。環境設計、空間設計、触媒設計、サービス設計など、枠組みの設計により創発的な場・現象・価値を生み出すことにとても魅力を感じる身としては、リーガルデザインという考え方がもっと発展して社会を面白くしてほしいと思った。

その他もろもろ9冊

これからデータ分析を始めたい人のための本 / 工藤卓哉
マネジャーの最も大切な仕事 / テレサ・アマビール、 スティーブン・クレイマー
サーチ・インサイド・ユアセルフ / チャディー・メン・タン
「死ぬくらいなら会社辞めれば」ができない理由 / 汐街コナ、 ゆうきゆう
生きるのが面倒くさい人 回避性パーソナリティ障害 / 岡田尊司
聲の形1-7巻 / 大今良時
夕凪の街 桜の国 / こうの史代
ぼおるぺん古事記 一 天の巻 / こうの 史代
長い道 / こうの史代

サーチ・インサイド・ユアセルフ」を読んで、気が向いたときにカジュアルに瞑想するようになった。

「死ぬくらいなら会社辞めれば」ができない理由」は保険本。落ち込んだりもしたけれど私は元気です。「生きるのが面倒くさい人 回避性パーソナリティ障害」は、社会生活に支障が出ているかはさておき自分も回避性の傾向があるなと思い読んだ本。自分のでこぼこと上手に付き合っていくということについてはsoarの記事に日々学ぶところが多いけれども、同じように自分の性格・傾向と上手くつきあっていく方法を考えるにあたってとても参考になった。


振り返ると2017年は特に内省的な一年だった。2018年もいい本に出会えますように。

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