2022年ゴアグラインド名盤20選

本年もたくさんのゴアグラインドに出会うことができました。昨年同様順不同にて20作品紹介していきます。本年もウェブ形式のみでの発表になりましたが、来年はまたZineとか作りたいですね。


さてゴアグラインドといえば…

私が執筆しました『ゴアグラインド・ガイドブック』が2023年に発刊されます。現在は私が運営しておりますHDPの通販Amazondiskunion等で予約が始まっております。後ほど書店等でもお求め可能になります。何卒よろしくお願いします。

そんなこんなで諸々の事情により語彙力が枯渇しており、過去一雑なレビューになっております。真実は皆様の耳で感じ取っていただければと思います。
それでは以下本編です。


・Putrefaction Sets In "Repugnant Inception Of Decomposing Paroxysm"

RegurgitateGeneral SurgeryExpurgoLymphatic Phlegmのメンバー (元メンバー) によるプロジェクト。最強のメンツが集まったら、まさしく最強の音源が出来上がってしまった。オールドスクールの良いところを詰め込み、しかしデスメタルには行き過ぎずあくまでゴアグラインドに特化した楽曲を収録。ベテランによる技巧に最初から最後まで圧倒され続ける一枚。

・Pulmonary Fibrosis "Pulmonologists"

フランス出身。みんな大好きカンカンスネアに速いのから遅いのまで何でもござれな芸達者バンド。あらゆるゴアグラインドファンに刺さるフレーズや展開を詰め込みまくった一枚。これだけで恐らく一生楽しむことができるだろう。ピッチシフター×2のツインヴォーカルも素晴らしい。

・Organ Failure "Neurologic Determination Of Death"

シカゴ出身。去年発売されたデモの時点から圧倒的なクオリティと楽曲の幅広さを見せつけた彼らによる全俺待望の1stアルバム。本作においてもゴアグラインドファンのみならずデスメタル、グラインドコアファンにも刺さるような楽曲を収録。欲しいところに欲しいフレーズを容赦なく組み込んでくるので最初から最後までとても耳が心地よい。

・Houkago Grind Time "The Second Raid"

カリフォルニア出身TRUEアニメゴア第2期。Mince系のゴアグラインドにテクニカルなギターソロを挿入するという唯一無二のスタイルはそのままに、本作では歌詞にも焦点を当てており、よりコンセプチュアルな作品になっている。ちなみにジャケットの元ネタは私も崇拝するアニメ『ひだまりスケッチ』から来ているが、言及されるまでそのことに気づかなかったのは非常に悔やまれる。

・Gronibard "Regarde Les Hommes Sucer"

全世界待望、日本でも恐らく5人ぐらいが待ち望んでいたフランスのファニーゴア・キングの新作。ジャケットからしてもしかしたら普通のグラインドになったのではないかと不安ではあったが、そんなことはなくGronibard節が隅々まで効いた、まさに王の復帰作とも言える作品となった。しかしながら「あの声」を20年以上衰えることなく出し続けられるのは本当にすごい。

・Egggore / Capsaicin Stitch Rupture "The Deprivation Process / Capsaicin Stitch Rupture"

チェコ新生ゴア2組によるスプリット。ファストでパンキッシュなEgggoreとハイスピードで時折グルーヴィなCapsaicin Stitch Ruptureという抜群の安定感とハイセンスな楽曲ですでに人気の2組。独特な世界観も相まって破壊力や親しみやすさも十二分に高く、現行のチェコグラインドシーンを知る上では必要不可欠な1枚である。

・Guineapig "Parasite"

イタリア出身のバンド、約8年ぶりの新アルバム。スタイリッシュで力強い音作りと強烈な下水道ヴォーカルが特徴的。ミドルテンポを中心としたひたすら遅いゴアグラインドで、デスメタルっぽい箇所やメタルコア風のリフなども挟まれている。全体を通しても非常にオシャレな出来栄え。

・Ambulance "Introduction Of Horrendous Pathological Practices"

メキシコ出身。一目でわかる"あの人"ロゴからも推測できる通り、オールドスクールなゴアグラインド。わりとデスメタル要素強めだが、挿入されるミドルテンポパートはノリ重視。プロダクションは小ぎれいな感じではあるが腐臭漂うような古臭い雰囲気はビンビンに伝わってくる。

・First Days Of Humanity "Demo '22"

辞めるって言って結局続けてくれた (嬉しい) ご存知FDOH。今年も多くの音源を発表しているが、個人的に好みだったのはこちらのRegurgitate初期デモ完コピ系デモ音源。ジャケットのパロディのみならず、ちょっとノイズグラインドっぽいところも上手く再現されている。

・Goreossion "Pathologist In Love"

ポーランド出身、ParricideやらPsychoneurosisのメンバーがいるらしい。Dead Infection系の作風ではあるが、ポーランドっぽさはそこまで感じられず、メキシコとかそっち系統の雰囲気が漂っている。グラインドよりもしっかり「ゴア」らしさを表現しており、ヴォーカルや音作りもわりと汚い感じ。

・Lipoma "Horrors of Pathology"

ゴアノイズと思いきやわりとちゃんとしてる作風で近年特にバズってるLipoma。本作でも「もはやデスメタルといっても差し支えないのでは?」と思えるほど多様なリフ、フレーズを組み込み、唯一無二の世界観を繰り広げている。Lymphatic Phlegmにスラッシュ系ハードコアの要素をもっと加えたようなイメージ。ちなみに中の人はOrgan Failureでドラムを担当している。

・Blasted Pancreas "Pathogenic Organisms In Blood"

ギリシャ出身。2008年から活動しているがオリジナルメンバーが亡くなり解散、2021年に再始動。ハイスピード系ブルータルデスメタルの要素が強いが、グルーヴ感やヴォーカル、曲の雰囲気などはゴア寄り。ギター、ドラム共にテクニカルな一面もあり。

・Naegleria Fowleri "Dissolved In Substance"

ロシア出身、Inopexiaのドラマーが現在やっているHydroceleのメンバーが在籍している。こちらも「超速ブラスト&ピッチシフターこそが至高」といった雰囲気でひたすら突き進むゴアノイズ系の作風。ドラムはテクニカルな部分もあり、楽曲に彩りをつけている。計10分ほどなので少なくとも10周は聴ける。

・OBLITEROT "Executed, Eviscerated & Eradicate"

メキシコ出身。メンバー等不明、SNSも無し。"Gory Deathgrind"らしく、古き良きデスメタル&グラインドのクロスオーヴァー的楽曲に、現代風のグルーヴ感やさらなるゴアっぽさを組み込んだスタイル。今年に入ってから音源を発表しているバンドだがすでにクオリティは高く、間違いなく来年以降より一層評価されるであろうバンド。

・Sordid Clot "Raging Of Noble Rots"

グルーヴィゴアファンにはお馴染み、ロシア出身Sordid Clotのまさかの新譜。非ポルノ的作風ながらもこちらのツボを確実に突いてくるグルーヴィゴアをプレイする珍しいバンドだが、約4年ぶりの新作である本作でもバンドの持ち味を最大級に活かしたファスト&グルーヴィな楽曲で聴き手を魅了する。

・Massive Gore Bulge "The Enlarged Cystic Abomination Spewing Out Membranes And Fetuses"

シカゴ出身。数多いるゴアノイズバンドの中でも個人的にとても好みのスタイルだったMassive Gore Bulgeによる1stアルバム。デモ音源と比べてもプロダクションは向上し、また緩急つけたクラシックなゴアグラインドへと近づいたことで非常に高品質な作品となった。しかしゴアノイズ流の荒々しさもしっかりと表現されている。

・Fake Meat "腐肉"

台北のゴアグラインド。Patisserie等のHagamoto氏が参加していることでもお馴染み (本作の布陣は不明) 。ファストなオールドスクールゴアを基調とした楽曲が特徴的だが、邪悪で汚く、そして力強いスタイルで聴き手の心を鷲掴みにし、容赦無く粉砕していく。ゲストギターソロにはHoukago Grind TimeのAndrew氏が参加。

・G.O.D. / Gourmet / Pulmonary Fibrosis "Trigonous Tonotopic Terror"

カナダ、フランスの実力派3wayスプリット。G.O.D.とGourmetは久々の音源。G.O.D.はファストでキャッチーなパンキッシュゴアを収録。ヴォーカルも非常に心地よい。Gourmetはグルーヴ感強めの楽曲を収録。Pulmonary Fibrosisはアルバムと比べるとロウなプロダクションではあるが、満足度の高い楽曲を収録している。どのバンドももっと聴いていたいと思わせる1枚である。

・Gamborimbo "Fiesta Mexicana"

ドイツ出身。12月中盤リリースの作品にて滑り込みランクイン。非常に覚えやすい名前と非常にわかりやすい楽曲が特徴的。ひたすら踊れるゆったり系グルーヴィゴアを軸に、時折速めのパートも織り込まれている。ヴォーカルはちょっとRompepropっぽい。メンバー等一切謎だが今後の活躍に期待大。しかしドイツのバンドながらメキシコリスペクトとはこれ如何に。

・Gut Explosion "Gut To The Future"

東京のバンド。Gutalax風のバンドは数多くいれど、同バンドを研究し尽くし、その影響をここまで楽曲にぶち込んだバンドは非常に珍しい。完璧に「わかってる」フレーズや展開も多く、すでに海外で話題沸騰なのも納得の出来。今日本で最もOEFに近づいているバンドと言えるだろう。結成わずかながらすでにステージ慣れし切っているライブも必見。


番外編 ゴアグラインドじゃないやつ

・Soiled Hate "The Nine Billion Names of Hate"

東京を中心に活動するバンド。パワーバイオレンスを中心にニュースクールハードコア、デスメタル、グラインドコア等様々な要素を組み込み、独創性溢れる世界観を確立している。圧倒的なパワーと技量で多くのリスナーの心を奪い、その独特の魅力はライブにおいても遺憾なく発揮されている。

・Trikorona "様々な困惑"


東京エモバイオレンスバンドの10年ぶりの新アルバム。様々なフレーズが複雑に絡み合う楽曲が彼らの大きな特徴だが、本作でもさらに激しく、またさらに美しい音を詰め込み、それらが絶え間なく入り乱れている。10年の時を経ても一才の衰えを感じさせず、さらに難解でカオスになったTrikoronaが容赦なく襲いかかる。

・Gurgulator "Risen From The Slime!"

イギリス出身の新生ワンマンプロジェクト。デスメタル、スラッシュ、グラインドなどをミックスし (少しゴアっぽさもあり) 、わかりやすく、ノリやすいグルーヴィな楽曲に仕立て上げている。オールドスクールな作風だがとにかく親しみやすく、あらゆるエクストリームファンに刺さるであろう作品。

・Teething "Help"

スペイン出身。グラインドコアとニュースクールハードコアを良い塩梅にクロスオーヴァーさせたフルモッシュ必至な作風。パワフルなのはもちろんだが、緩急の付け方にも磨きがかかっている点も評価できる。最近たまに見るちょいオシャレなグラインド系バンドに容赦なくパンチを喰らわせるような作品。非常にチャラい。

・Moribund Punishment / Masspress "Execution / Masspress"

国内最高峰パワーバイオレンス2組によるスプリット。Masspress​は新旧パワーバイオレンスの長所をうまく組み込んだ荒々しくもキッチリとした楽曲が特徴的。​Moribund Punishmentは「これぞパワーバイオレンス」という模範的なスタイルの下、多くのファンを惹きつける文句なしの楽曲を収録。


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