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TOKYO MXへの公開質問状

賛同期日:7月12日(水)
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2023年7月 日

東京メトロポリタンテレビジョン株式会社(TOKYO MX)
代表取締役社長 伊達 寛 様
「堀潤モーニングFLAG」
メインキャスター 堀 潤 様

「堀潤モーニングFLAG」朝鮮学校報道を問う有志の会
代表:早尾貴紀(東京経済大学教員)
山本かほり(愛知県立大学教員)
板垣竜太(同志社大学教員)

質 問 状

 私たちは、貴社の番組「堀潤モーニングFLAG」における朝鮮学校に関する報道が朝鮮学校関係者を傷つけ侮辱するものであったことを問題視する研究者・教員や市民らによる有志の会です。
 今年6月19日(月)に貴社のチャンネルで放送された「堀潤モーニングFLAG」の「ニューグローバル」のコーナーで、朝鮮学校がいわゆる高校無償化制度から排除され、東京都の補助金も停止されている問題を取り上げました。その際、コメンテーターの大空幸星氏は朝鮮学校に対してだけ補助金を停止することの正当性を主張するとともに、その責任を朝鮮学校側に押しつけるような発言を行いました(下記1.を参照)。それに対してメインキャスターの堀潤氏は一言も訂正や批判を加えることなく、次のコメンテーターの河崎環氏、茂木健一郎氏へと発言を促していきました。河崎氏・茂木氏ともに大空氏のコメントを真に受けそれに賛同する方向の発言をし、朝鮮学校・無償化・補助金に関して全く無理解なものでした(同じく下記1.を参照)。結局番組の中で堀氏はコメンテーターらの発言に異論を挟むことなく同コーナーを終了しました。
 同コーナーでは堀潤氏が、朝鮮学校が無償化および補助金から排除されていることが、すべての子どもたちが平等に学ぶ権利に反するのではないかという問題提起を行ない、また自ら朝鮮学校に足を運んで取材し、朝鮮学校の教員に運営が困難な状況を説明してもらっています。実際、これら行政の朝鮮学校に対する処遇については、人権侵害・民族差別であるとして、これまで繰り返し、国連の人種差別撤廃委員会やアムネスティ・インターナショナルや弁護士会などから、改善するよう勧告や声明が出されているように、国内外から強く問題視されており、堀潤氏はそうした状況を踏まえてこの問題を取り上げたものと理解しています。しかし、それに対する大空氏・河崎氏・茂木氏のコメントは、無償化制度や補助金制度に関する事実に基づかないばかりか、学校とそこに通う子どもを恣意的に切り離したうえで、政治的偏見にもとづき、朝鮮学校の排除を当然視するものでした。これは、子どもを含む朝鮮学校関係者への偏見を助長し、人権侵害・民族差別を正当化する、ひじょうに悪質な発言でしかなく、放送を期待して視聴していた朝鮮学校関係者を侮辱し傷つけるものでした。また、放送内で堀潤氏はこのコメントに対し一切の訂正や批判を加えておらず、コメンテーターらの発言を容認してしまったことも問題であったと考えます。
 そのため放送終了後に多くの批判が起こりましたが、それに対し、7月3日の番組内で堀氏と大空氏は「差別はしていない」という旨の釈明を行ないました。しかし差別の問題は本人に差別の自覚があるかどうかの問題ではありませんので、検証がなければ意味のない自己弁護にすぎません。そこで、私たちはコメンテーターらの発言に対する貴社および堀潤氏の立場を確認するために、下記2.で質問いたします。14日以内に下記連絡先まで文書にてご回答を送付してください。なお、本質問状および回答に関しては、放送倫理・番組向上機構(BPO)および報道機関各社に情報提供を行なうとともに、SNSを含めweb上で公開する予定であることを申し添えます。

1.コメンテーターの発言

大空幸星氏の発言

「そもそも、朝鮮学校に対しての補助金がなくなることが、〔東京都〕こども基本条例に本当に反するのかっていう考え方があると思うんですね。というのは、これはあくまで朝鮮学校に対する補助金なわけですよ。子どもたちへの直接補助ではないわけですよね。しかも基本的には公立の小学校、中学校がありますよ。在日朝鮮人の人はみんな朝鮮学校に通わせているわけではなくて、そういう公立学校に通わせている人たちもたくさんいるわけですよね。だから、やっぱりこれはね、僕は朝鮮学校の経営が下手くそすぎるのが問題だと思うわけですよ。これ、第9初級学校のホームページに載ってるんですよね、東京のね。入学金は0円、無料ですよ。授業料は月額1万4000円なんですよ。これ、私立の学校なわけですよね。もうめちゃくちゃ安いわけです。経営が厳しいのであれば、授業料を上げるとか、やっぱり何らかの付加価値をつけて、他のインターナショナルスクールと同様に高い教育の質を担保する、それができないんだったら公立の学校に入ってもらうっていう、他のところが当たり前にやってることをやるっていうこともね、必要なんじゃないか。子どもたちを盾にするっていうのが僕はいちばん卑怯だという気がします。」

河崎環氏の発言

「今のお話聞いてなるほどなって思ったのですけれども、私からすると、例えば、私立外国人学校を対象にした補助金を、都内の朝鮮学校に対してのみ、政治的な理由を盾にして支給していないというところで、そもそも、その学校に行く子どもたちが所属する時点で、自分がその政治的な論争の対象であるっていうのをすごく意識しながら学校に通うのって、どんな気持ちなのかなって思ったりはする。で、それを強く感じざるを得ないような環境で、例えばね、今おっしゃったような、その学校も、それを子どもに刻みつけるような状況で、意識させながら、民族意識をあおりっていうか、教えながら、育つっていうのもちょっと過剰な環境ではあるのかなっていうのは、いま感じました。」

茂木健一郎氏の発言

「僕は基本的に、教育支援というのは、子どもとか家庭に直接やるべきだと思ってるんですよ。というのは学校に行かない子もいるし。学校単位で支給とかそういうものをやると、結局、既得権益とか、そういうとこにつながっちゃうので。これはだから要するに、一人ひとりのご家庭とか、生徒の判断とかをどれぐらい信頼するかってことだと思うんですよ。だから、たとえば今、ホームスクーリングで家で勉強してる子だっているわけだし、そもそも学校単位でこういうことをやっていくこと自体の立て付けがまずいのではないか。この例で言うと、朝鮮学校には支給しないんだけど、そこに通ってらっしゃるお子さんの、ある年齢層の方には……まあ世帯収入とか〔要件はつけるとしても〕……直接支援するってアプローチにしたらいいんじゃないですか。」

2. 質問

  1. 東京都の「私立外国人学校教育運営費補助金」は、文字どおりに「学校」の「運営」に対して補助されるものであり、子どもへの直接補助でなく学校に対する補助であることは制度上の規定です。同制度は、「教育条件の維持向上」や「修学上の経済的負担の軽減」などを目的とするものですから、学校への補助は結局のところ全て子どもたちの学びに直結するものです。つまり、子どもへの直接補助ではなく、学校への補助制度だから、政治的にカットされても子どもの学ぶ権利に無関係であるかのような大空氏の発言は、まったくの虚偽であると考えます。この点、どう認識されますか?

  2. 同じく私立外国人学校教育運営費補助金は、学校経営が上手か下手かということとはまったく無関係な制度です。また、補助金が停止されれば、その分の運営費が減少し、運営に影響することは当然のことです。にもかかわらず、大空氏が補助金停止をめぐる議論に「経営が下手くそ」などという補助金と無関係な主観的評価を絡めるのは、まったく不適切です。高額の授業料を課すことが在日朝鮮人の現状でどのような結果をもたらすか、日本の公立学校や私立学校(一条校)では民族教育の実施が可能な制度となっているのか、補助金の突然のカットが学校にどれほどの負の影響を及ぼしたのかといったことを一顧だにせず、朝鮮学校側に全ての責任を押しつけようとするマジョリティの特権的な発言でしかありません。この学校経営への問題のすり替えについて、どう認識されますか?

  3. 大空氏の「子どもたちを盾にするっていうのがいちばん卑怯」という発言は、誰のことを「卑怯」だと言っていると理解されますか? 文脈からは、「子どもたちを盾に補助金支給を求める朝鮮学校が卑怯」と言っていると視聴者には伝わります。『広辞苑』によれば「盾にする」(盾に取る)とは、「防御物とする」または「いいわけやいいがかり、主張などの材料にする」という意味です。つまりこの発言は、朝鮮学校が子どもでない何かを守るために子どもを防御壁にしている、または朝鮮学校が子どもと関係のない何かのために子どもを材料に補助金を要求している、それは「卑怯」なことだという意味で理解されることになります。この主張は、日々子どもたちの教育のために奔走している朝鮮学校関係者を誹謗中傷するものです。このような誹謗中傷のコメントを、貴社として妥当であると考えますか?

  4. 河崎氏は、「政治的論争の対象になっている」朝鮮学校に子どもを通わせることを否定的に述べ、「民族意識を教えて育つ環境」を「過剰」と批判しています。しかし、第一に、他人事のように語っていますが、一方的に「政治的論争の対象」にしているのは日本社会の側であって、朝鮮学校の側ではありません。第二に、日本社会における制度的差別を学校が教えることについて、民族意識の「あおり」や「過剰」などと言っていますが、逆にいえば、これは差別があっても教育の場では黙っていることが子どもには適切な教育環境だとの主張と解釈されるものです。これは差別の克服を目指す民族教育の根本を否定する見解です。第三に、そもそも民族文化を教え民族意識を育むことは、ユネスコをはじめとする国連諸機関・諸条約に認められた正当な権利であり、また日本による植民地支配の歴史を踏まえればなおさらその意義は尊重されなければなりません。貴社は、この民族教育権を否定し、日本社会の歴史的責任および現在の責任を否定する河崎氏の発言を妥当なものと考えているのでしょうか?

  5. 茂木氏は、「教育支援は子どもとか家庭に直接やるべき」と発言しました。フリースクールにも言及していることから、一見朝鮮学校を含むユニバーサルな支援策を提言しているようにも聞こえます。しかし、高校等に通う生徒個々人に対する就学支援策である高校無償化制度でも、学校要件が課され、朝鮮高校の生徒のみが排除されてきたのが現実です。直接支給にすべきだと言いながら、現行制度が不当に朝鮮学校だけを狙い打ち的に排除していることに反対するわけでもない茂木氏の主張は、結果的に学校単位の支援策であるかぎり朝鮮学校が排除されて当然であるというメッセージ以上のものにはなっていません。貴社としては、この茂木氏の発言が、制度の現実も踏まえていないもので、朝鮮学校だけが排除される現状を当然視するものになっていることを、どう認識しますか?

  6. これまでの質問に関わりますが、同コーナーを準備するにあたって、専門家でも当事者でもなく正確・詳細な知識を持たないコメンテーターらに対して、「私立外国人学校教育運営費補助金交付要綱」「私立高校授業料実質無償化リーフレット」などの関連資料を共有したり、朝鮮学校を補助金や無償化から排除していることに対して人種差別撤廃委員会などの国際人権機関から是正勧告があることを伝えたり、事前レクチャーをコメンテーターに対して行ないましたか? 事前レクチャーを行なったとすれば、なぜそれが番組で生かされなかったのか、事前レクチャーを行わなかったとすれば、なぜそれを不必要と考えたのか、その理由はなんですか?

  7. メインキャスターの堀潤氏は、重要な問題提起と現場取材をされたと思いますが、それにもかかわらず、大空氏・河崎氏・茂木氏の3人のコメントは、まったくその提起・取材とは無関係かつ無根拠なものであり、結果として提起・取材を台無しにしました。このことに関して、堀氏は放送内でコメンテーターらに対して事実認識の間違いを指摘したり、朝鮮学校に対する差別の扇動だと注意したりしませんでした。放送後もそうです。この点についてどう認識しますか?

  8. 同コーナーは、子どもの教育を政治に巻き込んでいることについて問題提起し、朝鮮学校が無償化や補助金などの制度から排除されていることを問題視する意図でありながら、全体としては、さまざまな支援策から朝鮮学校だけを根拠なく除外すること、あるいは結局は政治を根拠として排除することを正当化する差別に加担するものでした。これは明確な「差別行為」または「差別扇動」であると貴社は認識しますか?

  9. 同番組の放送で同様の問題があった場合、貴社としてどのような対処をするのか、具体的にお答えください。


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