ドイツ歌曲の話 詩人の恋 Dichterliebe #2 初演は誰
「詩人の恋」の初演は女声だと、昔、小耳に挟んだことがある。それからも断片的ではあるけどもそういう情報を見かけて、そうなんだ、とインプットされていた。
確証がほしい。
でも詩人の恋、初演、と検索しても、ヒットしない。ドイツ語でも、英語でも。
分かったのは詩人の恋はヴィルヘルミーネ・シュレーダー・デーフリントというソプラノ歌手に献呈されたものであるということ。ディースカウの「シューマンの歌曲をたどって」にも書いてあった。(初演とは書いていない)
献呈されたということは、彼女の声を想定して作曲した、ということだろうから、ますます女性が歌うべきですよね、これ。
と、思ったのですが。
いざ練習してみると、たとえばIch grolle nicht とか、終曲のDie alten,bösen Lieder なんて、女声には厳しいと感じる。詩の内容云々ではなく、声楽的にという意味。
私の師匠、オランダ人のバリトン、フランス・ホイツに相談してみた。先生はこの曲がソプラノ歌手に捧げられたという話はご存知なかった。
で、私の疑問を投げかけた。女性に書かれたにしては、ごつくないですか?
先生は
「献呈されたからと言って、彼女が歌ったかどうかは分からない」
そうきたか😅
しかし作曲家がある人のために書く、という時は、普通はその人が歌うということを想定するでしょう。デーフリントのために書くけど、初演は別の人がしてくださいね、あなたは歌わなくていいから、というのはおかしな話......
そこでこのデーフリントさんがどういう人だったのかを調べることにした。詩人の恋が作曲されたのが1840年だから、音源が残っている歌手ではない。
しつこく調べるとクララと親交があり、またワーグナーがとても気に入っていた歌手だということが分かった。
ならばおそらく強い声の持ち主であろうと思われる。
一応解決。
私が強い声の持ち主ではないということは横に置いておいて。
そして、あった!初演情報。正確にははじめてチクルス全体を公の場で歌ったという情報。それはジュリウス シュトックハウゼンというバリトン歌手と、ピアノはブラームス。なんだ、男か....(笑)
1861年。シューマンが亡くなって5年後のこと。シュトックハウゼンは翌年にクララ シューマンのピアノででも演奏している。クララは彼のことをかなり気に入っていたようだ。
話戻して、シューマンは男の失恋についての組曲をなぜ女性の声を想定して書こうと思ったのか。たとえば男性によって歌われるとダイレクトに過ぎる、痛すぎる、と思ったのかもしれない。このへんはすべて「知らんけど」の範疇(笑)
しかし、Am leuchtenden Sommermorgen のように、声楽的にも非常に繊細なものの方が、この組曲には多いことを考えると(我々の耳はIch grolle nicht のように派手なものに行きがちではあるが。)これは女声を想定したとうなづけるところはある。
たとえばディースカウは男らしい歌はやたらに荒々しく歌う傾向がある。その表現がスタンダードになりすぎてはいないか。少なくとも私が真似する必要はないとして(そもそも無理)。私に出来る表現は何なんだ?シューマンはどう書いている?
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