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ドイツ歌曲の話 詩人の恋 Dichterliebe #17 夏の朝

12.
Am leuchtenden Sommermorgen
Geh’ ich im Garten herum.
Es flüstern und sprechen die Blumen,
Ich aber wandle stumm.

光り輝く夏の朝に
僕は庭を歩いた
花達がささやきかけてきたけど
僕は黙って歩いた

Es flüstern und sprechen die Blumen,
Und schau’n mitleidig mich an:
„Sei unsrer Schwester nicht böse,
Du trauriger, blasser Mann.“

花達はささやき、話しかけ
僕を気の毒そうにみつめた
「私たちのおねえさんを悪く思わないで、悲しげな、青ざめたあなた」

自分の演奏貼り付けてみた。えへ。

ロ長調、八分の六拍子
Ziemlich langsam かなり遅く
八分の六はこのチクルスで初めて出てきます。

かなり遅く、ということは、遅いんじゃないですよね。
レッスンなんかでziemlich gut! なんて言われても、手放しで喜んだらアカンやつ。

前の曲は変ホ長調でジャーンジャジャーン!と終わって、その第三音のGを半音下げ、ドイツの六の和音から始まる、驚きの始まり方。前の曲もこの曲も次の曲も幸い原調で歌うので、その関係を壊さずに済む。

ソードードドーミードーシーラー(移動ド読みね)と、民謡調のシンプルなメロディで始まる。調が変わってドキッとすることはあっても、基本的にこのシンプルさは最後まで失われない、

「花がささやきかけてくる」
で一瞬嬰ヘ長調?不思議な世界に行きそうになるけど、聞こえないふりしてまた変ロ長調になんとか戻る。

この曲の白眉は、最後の花達のセリフ
「私たちのおねえさんを悪く言わないで」ロ長調からト長調への転調。お花さんが話してる。
実写とアニメの合成ドラマってあるじゃないですか。ディズニーのメリー・ポピンズとか。ああいうの想像してしまいます。アニメ描写された、顔があるお花さん達が、主人公(実写)に話しかけるの。

お花さんたちの言葉は詩人の心の声に違いない。彼女を悪く言っても仕方ないじゃないか。はじめは無視してみたけど、やはりそうなんだよ....

そしてこれも長い後奏。このメロディは最後、終曲の後奏にも使われる、キーワードならぬ、キーメロディ。


終曲が、この曲の後奏を使っているのか、この曲が終曲を暗示しているのか、さあ、どっち。

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