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僕らはこれを運命と呼ぶ

出会いはあるフォロワーのツイートだった。


「situasionザイ゙ゴォ゙ォ゙ォ゙ォ゙ォ゙ォ゙ォ゙ォ゙ォ゙ォ゙ォ゙ォ゙ォ゙ォ゙ォ゙ォ゙ォ゙ォ゙ォ゙ォ゙!゙!゙!゙!゙!゙!゙!゙!゙!゙!゙!゙!゙!゙!゙!゙!゙」
(パブサ回避のために言葉は変えているがおよそこれ。特に内容はない魂の叫びであった。)


なんだこれ。


2022年の秋頃だったか、このようなツイートが目立ち、TLでもその「situasion」という文字をよく目にするようになった。

当時の私は大学受験を終え、その開放感ゆえ、とにかくあらゆるアイドル現場へ足を運んでいた。それまでもアイドルは好きでLIVEに行くことはあったが、これからお金と時間の自由ができるというなかで、新しく自分好みのアイドルを模索していた時期であった。当然、situasionも気にならずにはいられなかった。

それから程なくして、私はsituasion、そしてそのフロアで発生する"それ"を目にすることになる。

この日のお目当ては実はきのホ。であった。
(その時初めて観たきのホ。さんのステージは圧巻であり、地方拠点のアイドルにも目を向けるきっかけとなったが詳しい感想はここでは割愛する。)

後攻situasionのLIVE終盤、"それ"は起こった。

『JAPANESE HORROR STORY』

曲の始まり、ワクワク感を増幅させるキャッチーなギターリフ。
歌詞から散見されるダーク感。それを表現するメンバーの鋭い目線。
会場の音響とシナジーを生む心臓に響くEDMビート。


心地よい。


____ステージだけでは無い。

曲が始まるや否や聞こえてくるリフの大合唱。
Aメロが始まるや否や右から押し寄せる振りコピの波。
ドロップで巻き起こるモッシュ。

私の体も自然と揺れていた、いや、その場の空気に揺さぶられていたのかもしれない。


やばい、楽しい。


Cメロ前、降霊ダンス。

目を見張るものがあった。
フロア後方、控えめながらも広げられたサークルには
年齢、性別、職業、国籍、人種に関係なく皆思い思いに回っているのだ。


Cメロ、愛実さんパート。

サークルから解き放たれ一気にフロア前方に押し寄せる緑の塊。
呼応するかのように力強く歌い上げる愛実さん。

Music unites the venue, generating an overpowering, uncontrolled “situasion.”
(音楽が鳴り、会場が一つになった瞬間のエネルギーを原動力に、何にも支配されない圧倒的な「状況」が構築される)

situasion official siteより

Cメロにかけて引き起こされた"それ"は正しくこれを体現していた。
今、会場は一つになっている。
この状況に身体的、社会的な違いは関係ないのだ。


まだ知らなかった世界がそこには広がっていた。


"それ"は地上アイドルからライブアイドルに目を向けて間もない私にとって、十分すぎるカルチャーショックであった。




それからというもの、私はsituasionが創り出す事象の地平面のその向こうにまんまと惹き込まれた。

狭いライブハウスのなかで一時的に生まれる何にも支配されない圧倒的な状況。そこでは誰もが仲間だった。


situasionが繋いでくれた新しい音楽との出会いがあった。


たった一つの曲のほんの一部分に過ぎないが、その一瞬が私にとってsituasionのはじまりの合図であった。

この状況を僕らだけは口を揃えて運命と呼ぶのだろう。

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