【MeWSS論文コラム】論文作成のスケジュール

 Outlineが出来上がったら、次はいよいよ論文ドラフトの作成です。その前に、全体のスケジュールについて書いてみようと思います。
 今論文を書いている、もしくは書こうとしている先生方は、論文作成開始から最初の投稿までどのくらいの時間を見込んでいるでしょうか?
一般的にかかる時間は最短で6ヶ月、多くの場合1−2年です。
さらにアクセプトまでを考えると、数年がかりというお話も珍しくありません。アクセプトされるまでにいくつもの雑誌に投稿し、苦労するのは精神的にもなかなかしんどいので、できれば1−2誌目で掲載までいけるといいですよね。

 あまり急いでいません、という論文作成のご依頼を受けることもよくあるのですが、そういう場合であってもなるべく早めの投稿を目指した方がいいと思います。研究データ取得後投稿まで早い方が、アクセプト率が高まる可能性があるからです。
 投稿が遅くなることのデメリットとしては、似たような研究論文が先に出てしまうことがまず挙げられます。一つ二つなら投稿雑誌を工夫することで対応できるかもしれませんが、テーマによっては1年の間にいくつも発表されることもあり得ます。またそれ以上に、2年も経ってしまうと、すでに研究対象とした患者層や治療法が時代遅れになってしまう可能性も出てきてしまいます。
 その研究トピックがホットな時期に論文投稿すれば、少し高めのIFの雑誌でも通ることもありますし、サンプル数が少なめだったり、単施設での研究など、通常その雑誌があまり好まないデザインであっても通してくれることがあります。
 逆に、珍しくない内容になってしまったら、そもそも研究のオリジナリティーを査読者から指摘されるかもしれませんし、エディターの段階で即リジェクトになる確率も高くなります。
 早くアクセプトされるために、ぜひ早めの投稿を意識してください。

 論文作成の律速段階はどこでしょうか?もし共著者とのコミュニケーションに関係する時間に問題があるのでしたら、事前のスケジュールの立て方はとても重要です。
 医学にかぎらず、どの分野でも共著者は大体多忙です。この先生方のやる気を上げて、何とか時間をとっていただくための戦略をたてなくてはなりません。
(1)早い段階で著者順、論文タイトル、投稿雑誌(できれば2つ)を決める。
(2)スケジュールを見える化する。
(3)Outlineで内容を固める。
(4)内容が固まったらなるべく間を空けずにテンポ良く進める。

 可能であれば、研究をデザインする時点で、遅くとも倫理審査委員会への書類提出までには(1)を決めておきたいです。
 スケジュールは、年月日をなるべく具体的に決めることをお勧めしています。論文のレビュー期間中に、共著者の時間がどうにも取れない時期が含まれているともったいないです。原稿を書くご本人にとっても、○月○日までに仕上げて共著者に提出、と決めておくと、ご自身の忙しさを理由に作業が進まないという事態を避けやすいです。
 Outlineの作り方は前回までに解説しました。繰り返しになりますが、ここで内容を固めておくことが大切です。(2)では、共著者のスケジュールを確認して全体計画を策定し、共著者から了解をもらうと思います。この時にOutlineについてもその意図や目的をよく説明し、理解してもらってください。Outlineレビューの際に見てもらうのはあくまで英語ではなく、論文全体の流れ、構成、内容であることを、しっかり確認しておきましょう。
 Outlineで内容を固める過程で、共著者とはかなりディスカッションしたり一緒に考察の中身を詰めたりするかもしれません。この勢いを逃してはいけません。Outlineが確定したら、なるべく早くドラフトを書き上げて共著者に見てもらいましょう。そのような時間が取れるように、逆算して作業開始からのスケジュールを立てることがお勧めです。
ここのテンポは実はあなどれないのです。
多数の論文作成や査読が同時進行しているという、共著者の立場を想像してみてください。その中の一つの論文について意見を述べて、それが反映されたらかなり面白いものになりそう、と楽しみにしていたのに、それから2ヶ月あるいは3ヶ月過ぎても次の原稿が来なかったらどうでしょうか?燃え上がった熱意も消失し、場合によっては内容も覚えていない、ということにもなりかねません。久しぶりに目にした原稿を前にして、またいちから中身を読まなくてはならず、余分な時間が必要になります。
 もちろん英語論文のドラフトを書くのは大変です。時間もかかります。そこで、Outlineに対する意見をもらいディスカッションが続いている段階から少しずつドラフトを書き始めておいた方がいいでしょう。ただし、たとえいい文章が閃いても、決してレビュー進行中のOutlineに入れてはいけません。Outlineの段階で英語をいじり始めると、共著者の方も英語が気になってきます。進行中のOutlineは触らずに、別ファイルでドラフトを書き始めましょう。
スケジュールの一例です。

 Outline作成:2ヶ月(データ解析結果取得後)
 Outline共著者レビュー:1ヶ月(この間にドラフト作成開始)
 1st Draft作成:1ヶ月(Outlineレビューの間に進めるので、正味2ヶ月)
 1st Draft共著者レビュー:1ヶ月
 2nd Draft作成:2週間(1st Draftにもらった共著者コメントに基づいて修正する)。
 2nd Draftの共著者レビュー:1〜2週間
 (2nd Draftに追加でコメントが入った場合は3rd Draft作成のプロセスが追加されます)
 最終ドラフト作成:3週間(データや参考文献の最終QCなど全部やるために少し時間が必要)
 最終ドラフトの共著者承認:1週間(ここは承認のみ。コメントが来てしまったら、またレビューラウンドを追加します)
 投稿
 
3rd Draftなどレビューラウンドが追加されたとしても、Outline作成開始から1年かからずに投稿したいな、というイメージです。

 ところで、共著者からはどのようなコメントをもらえばいいでしょうか?主に指導してくださる先生お一人のご意見だけでいいでしょうか?
 共著者に何をしてもらう必要があるか。これを知るには著者要件を知る必要があります。次回は著者要件について解説します。