【MeWSS論文コラム】 システマティックレビューのプロトコール

 

 システマティックレビューのプロトコールを登録・公開する、PROSPEROというサイトがあります。2011年発足以降2020年時点で登録数は10万を超えたそうです。登録したプロトコールは永久に保存され、検索に表示されます。

https://www.crd.york.ac.uk/PROSPERO/

 システマティックレビュー論文を投稿するのにPROSPERO登録は必須ではありませんし、競争が激しい分野のメタアナリシスなどは、登録しないことも多いでしょう。PLoS journals、BMJ、 BioMed Central といった雑誌のように、投稿時に登録したかどうかを訊いてきたり、原稿に書くよう求めるものもあります。
 以前はレビュー(システマティックレビューの作業)が完了するまでに登録すればいいから、と言っていたのですが、今はレビュー開始までに登録してね、となりました。このPROSPEROの仕組みは、システマティックレビューの立案から完成までは時間がかかるので、重複して無駄な作業計画を立てずに済むように、情報を早めにみんなで共有しましょう、というものです。

 登録は義務ではないとしても、このPROSPEROは利用すると便利です。今やろうとしているテーマ(クエスチョン)で以前システマティックレビューした人がいるか、既に論文になっているものなら文献検索して分かりますが、現在進行中のものはPROSPEROで検索するしかありません。
 試しに見てみましょう。COVID関連の登録は1万件を超えていますが、その中で"Long COVID"関連は783件でした。2020年から2021年にかけて登録されたものがほとんどでしたが、2024年5月の時点でレビュー完了、publishedとなっているものは5%だけでした(39/783)。Long COVIDに関しては2023年に立派なnarrative reviewがNature reviews Microbiologyからpublishされているので、続けれられなかったものもあるかもしれません。
 今回私もPROSPEROの登録内容を初めてじっくり見てみたのですが、システマティックレビューを検索するのは面白いと思いました。「こんなテーマで誰かやってるかな?」と思いついたら探してみるといいかもしれません。
 計画が取り下げられたわけではないのに、3年経っても進んでいない計画が、もし自分がこれからやりたいテーマと同じだったらどうしたらいいでしょう?作業しているのなら途中の進行状況もアップデートされていると思いますので、少しずつでも進んでいるのなら避けた方がいいかもしれません。分からなければ著者と連絡を取ってみるのも一つです。
 ちなみに実際に登録するときには色々質問があり、それに答えていくとシステマティックレビューの計画が妥当なものかどうかがわかります。

 システマティックレビュープロトコールのガイドラインはPRISMA-Pです。

このチェックリストがあるからといってシステマティックレビューがすぐに作れるわけではありませんが、システマティックレビューの方法立案するのには最低限必要な項目ですので、これをもとに計画を立てるといいです。
 次回はもう少し細かい作業手順について書きます。