【MeWSS論文コラム】 Publishの前のもう一つ_プルーフ

 論文アクセプトを見事獲得した著者の皆さん、おめでとうございます。幸せな気分をぜひ満喫してください。でも実際に出版(publish)されるまではまだ完全に気は抜けません。最後にもう一つとても重要なタスクが残っているのです。Proofチェック(著者校正)です。
 雑誌を発行する出版社では、編集部とプロダクションチームは独立しています。最初に原稿を受け付け、査読者の意見を参考にアクセプトを決めた担当編集者とはもうお別れです。アクセプト後の論文原稿は、編集者の手から完全に離れてプロダクションチームの元に送られ、その部署がその後の出版までの作業を受け持ちます。プロダクションは論文出版のためにレイアウト・割り付けなど雑誌のスタイルに合わせて原稿を整えます。以前は相当数のチームメンバーがいてそれぞれがプロフェッショナルだったので、校正的に細かく見ていくつも指摘をくれたものでした。しかし現在は、ほとんどの出版社がプロダクション部門を縮小し、業務を外部委託しています。担当者の専門性も低下しており、多くの雑誌では著者名や所属などをもう一度確認するように促したり、参考文献スタイルの指摘程度にとどまっている印象です。つまり、一部の高IF雑誌を除いた雑誌に掲載の研究論文では、いわゆる「校正作業」は著者自ら徹底するしかないのです。プロダクションを請け負っている会社はとにかく数をこなすことを第一としており、丁寧さは期待されていません。業務評価にCorrection発生率は入らないということも聞いたことがあり、ミスを恐れるよりも数をこなせと依頼元からも言われているようです。
 論文の原稿は、これまで著者が何10回あるいは100回、それ以上見てきたものでしょう。査読者も見ていますし、これ以上確認しようがないと思っている人もいるかもしれません。でも、意外とあるのです。見落としていたケアレスミスやタイプエラーが。また、ページレイアウトに合わせて表を配置した結果、意図しないところで改行されていたり、タブがおかしくなっていることもよくあります。
 これまで原稿作成に携わっていなかった同僚や友人などに依頼して、一度新しい目で全体を細かく見てもらうことをお勧めします。固有名詞のスペルや、表の数値の表記(桁や小数点など)、グラフのレジェンドなどが特に確認のポイントです。出版後に間違いが見つかった場合はCorrectionを出さなくてはなりませんが、これは決していいことではありません。さきほど出版社はCorrectionを気にしないようだと書きましたが、Correctionはあくまでも著者の責任です。Proofで最後に全体を確認するのは著者が全責任を追うべき作業なのです。
 Proof添付のメールでは48時間で回答を返すようになど急がせていますが、著者による最終確認が終わらないと出版しないはずですので、時間がかかるようならメールでその旨を伝え(意図的でなく勝手に公開される事故もないことはないので事前の連絡は重要です)、しっかりとProofチェックをお願いします。