【MeWSS論文コラム】 システマティックレビューの作成 実践編その3

 前回のコラム「実践編その2」で、ChatGPTにsearch strategyを作ってもらいました。それを使ってPubMED検索すると、動物実験と英語以外の言語を除いて期間を10年以内に限っても、1500件以上からなる文献集が出来上がってしまいました。
 本来であればこの後は、タイトルとアブストラクトから解析に含めるものを選択する作業なのですが、無理して大量のデータを処理しようとするのはあまりお勧めできません。自分一人だけなら「やります」で済むかもしれませんが、システマティックレビューの文献選択作業には必ず二人以上の意見を取り入れなければなりません。プロジェクトに同じように熱意を持った共著者だとしても、過剰に負担のかかる作業を計画するのは無理があり、どこかで破綻する可能性があります。
 私ならsearch strategyを考え直します。もともとのクエスチョンが一般的すぎたので、もう少し絞ってみましょう。
 そもそも薬物治療と比べたい本当の介入方法はなんでしょう?運動ですか?食餌療法ですか?例えば低糖質ダイエットの効果を知りたいということにしてみましょう。
 再びChatGPTにお願いしたところ、
Inclusion Criteria:

  • Studies involving adults diagnosed with type 1 or type 2 diabetes.

  • Studies evaluating the effects of a low-carbohydrate diet on diabetes control.

  • Randomized controlled trials (RCTs), cohort studies, case-control studies, and cross-sectional studies.

  • Studies published in English.

  • Studies reporting quantitative outcomes related to diabetes control (e.g., HbA1c levels, fasting glucose levels, insulin sensitivity).

Exclusion Criteria:

  • Studies focusing solely on gestational diabetes.

  • Case reports, editorials, and reviews without primary data.

  • Animal studies.


Example Search String for PubMed:

("type 1 diabetes" OR "type 2 diabetes" OR "diabetes mellitus") AND ("low-carbohydrate diet" OR "low-carb diet" OR "carbohydrate-restricted diet" OR "ketogenic diet" OR "Atkins diet") AND ("diabetes control" OR "HbA1c" OR "glycemic control" OR "blood glucose" OR "insulin sensitivity" OR "diabetes management")

 この検索式をPubMEDに入れると、期間を限定しなくてもヒット数は396件(English、Humanでフィルタリング後)でした。これならかなり現実的な数です。
 一次の検索結果が手元にある状態でプロトコールを再検討します。自分達が求める答えを導き出すのに必要な文献はあるのか、ざっとみてみましょう。
 これと同時にやることがあります。以前のコラム「システマティックレビューのプロトコール」でご紹介したPROSPEROの検索です。今回取り上げたテーマはChatGPT提案のクリニカルクエスチョンから派生しており、多くの人が興味を持ちそうなテーマでもあります。"low-carb diet AND diabetes"で検索すると18件がヒットしました。完了して論文化されたものは1件のみで、あとは全て進行中です。
 これらの情報をもとに、どのように進めるのかよく検討しましょう。他で進行中のレビューとは違った視点の、独自のテーマを立てる必要があるかもしれません。思い付いたらまたChatGPTにsearch strategyを提案してもらって文献数をみてみましょう。解析するのに十分な数の文献が発表されており、進められそうだったら、まさにシステマティックレビューを書く大きなチャンスです。プロトコールを固めて、PROSPEROに登録し、早速始めましょう。
 今回はそもそものクリニカルクエスチョンからChatGPTを頼りましたが、多くの場合は既に独自のテーマをお持ちだと思います。その場合もやり方は同じです。ChatGPTでsearch strategy→PubMEDとPROSPERO検索→必要であればクエスチョンを改定・検索を繰り返す→プロトコール最終化→PROSPERO登録→他のデータベースでも検索して統合→アブストラクトとタイトルで選択→30〜50程度抽出。あとは読み込んで解析・ディスカッションです。
 テーマの独自性と面白さがあり、時期を逸していなければ、論文アクセプトは難しくはありません。