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万能選手な江戸小紋とはどんな着物?作り方や歴史、柄の種類も紹介

(※この記事は以前こちらのサイトで掲載していたものを引っ越ししてきました。https://mewlifestyle271889071.com/)

私は派手目なものが好きなので、着物でも割とはっきりした色のものを選びます。なので最初は、正直江戸小紋は地味だなぁと思って敬遠していました。好きな色柄になかなか出会えなかったという理由もありますが。

しかし、江戸小紋は着回しが良い、由緒正しいと言われるんです。私も数年前にお気に入りを見つけた後で、江戸小紋が好きになりました(画像準備がなくすみません)。

今回は江戸小紋について深堀りしていこうと思います。

そもそも小紋とは?

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小紋とは柄を着物全体に同じ間隔であしらっているもののことを指します。普通の小紋と呼ばれる柄は遠目から見てもどんな柄かが分かります。しかし、江戸小紋の一番小さい柄の場合はすぐそばまで寄って見ないと柄が認識できないくらい小さいのです。

江戸小紋は遠目で見ると、ほぼ無地です。ついでに私の無知もさらしますが、「柄の意味無くね?」って昔は思ってました。

江戸小紋の歴史とは?

江戸小紋とは、江戸時代に武家の裃(かみしも:将軍にお目通りするときの礼装)に使われていた柄のことを指します。

遠目だと無地に見える柄の江戸小紋はなぜ生まれたのでしょうか?

それは江戸時代に発布された「奢侈禁止令(しゃしきんしれい)」と言って、要はぜいたくを禁止する法令に起因しています。服装も華やかで派手なものはNGな時代です。じゃあ人々はどうやって他人と差を付けるかというと、細かい小紋柄にして差別化を図っていったんですね。

しかも柄が細かいほど技術が優れていることが一目で分かるじゃないですか。それで地方の大名たちは参勤交代で江戸へ出張するときに、独自の小紋柄をまとったのでしょう。現代でも柄が細かいものの方が、格上と考えます。

私の勝手な推測ですが、上様の位置から諸大名の着物の柄なんて見えないし、みんな無地に見えるから華美だと誤解もされず、けれど自分は人とは違うという満足感も得られた…だから流行ったんじゃないかと思います。

当時は藩によって使える柄が決まっていましたが、現代では誰でも着ていいんです。後ほど説明しますが、例えば行儀小紋柄は仙台藩・伊達家が使用していた柄で、平民の私でも着ようと思えば着れるんです!これってすごいことですよね。

江戸小紋はどうやって作られるのか?

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江戸小紋の何がスゴイかを少しでもお伝えできればと思います。

江戸小紋は伊勢型紙という丈夫な和紙に穴をあけて柄を作り、型紙を生地の上に置いて染め上げる方法で作られます。ごく稀に、江戸小紋の精緻な柄を織りで作っているヤバいメーカーさんを見ることがあります(どこだったか忘れたけど)。

織りの場合は模様を出すために計算しながら織るため、大変なことは誰でも想像がつきますよね。

「染だったら型紙使って要はプリントするんでしょ?そんなの簡単な技じゃん」と最初何も知らなかった私はそう思いました。機械印刷と何が違うんだろう?と。

この型紙を彫る人にお会いするまでそう思っていました。人間国宝と言われる彫り師(なんか893っぽいですね)にお会いして、少しだけ技を見せていただいたことがあるんです。

その方は市販の彫刻刀では太すぎるので、ものすっっごい細い刃の彫刻刀を自分で作っているんです。そのほっっそい彫刻刀を使い手作業で細かく細かく型紙に穴を空けていくんですよ!だから目からやられていくんだとおっしゃってました。

後継者が少ない問題もありますが、70代や80代の方たちが現役で仕事をしています。この彫る技術が人間国宝に指定される理由なのです!!型紙も使えば傷んでいき、彫る方も高齢のため減っていく一方です。

染めのところは見学などしたことがないのですが、細かい柄なので少しズレると柄が潰れてしまったり、つなぎめが見えてしまったりするので、神経使う作業であることは間違いないでしょう。

人の手作業で作られたものや描かれたものには、機械には出せないようなゆらぎを感じることがあります。本当に良い江戸小紋柄は、規則正しいようで完全ではない、そんなところが伝統工芸の魅力だと思っています。

江戸以外で小紋に種類はあるの?

江戸小紋は、1955年(昭和30年)に小紋型染の職人である小宮康助が、人間国宝に指定されたときに江戸小紋という名称が誕生しています。江戸小紋は呼称が生まれてから歴史は割と浅いものなんですね。

 京小紋

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引用元:https://www.city.kyoto.lg.jp/sankan/page/0000041367.html

京で型染の型紙が作られたのが1200年前とされていて、江戸時代以前から独自の小紋染めが存在していました。江戸小紋の流行を受け、京友禅の影響も受けながら独自に発展し、多色使いで自然な模様が多いのが特徴です。

 加賀小紋

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引用元:https://kimonofukushima.co.jp/blog/2008/04/post-657.html

江戸小紋にルーツを持つ加賀伝統小紋は、江戸小紋よりはやわらかくと京小紋よりは色味を抑えた、両者の中間にあたる色使いが特徴です。加賀小紋は加賀友禅の影響を受けた小紋で、こうみると加賀は独自の技術を発展させる力がある国だったことが分かりますね。

江戸小紋の柄はどのくらい種類があるの?

調べてみるとたくさん出てきました。ありすぎて全てを紹介しきれませんが、今回は一部を紹介していきます。

江戸小紋五役

藩独自の家紋のような意味合いを持つ柄のことで、他藩が使用するのはNGだった柄を定め柄といいます。その中でも江戸小紋三役とは行儀・角通し・鮫で格が一番高いものです。江戸小紋五役とは江戸小紋三役に大小霰・万筋を加えたものを指します。

 行儀(ぎょうぎ)小紋

行儀小紋柄は仙台藩・伊達家が使用していた江戸小紋柄です。丸が斜め45度に規則正しく行儀良く並んでいて、礼をつくすという意味があります。お辞儀をするときの丁寧な角度も45度とされていて、行儀小紋は優等生のような印象を私は持っています。

 角通し(かくどおし・かくとおし)小紋

角通し小紋は細かい正方形がタテヨコ規則正しく並んでいる模様のことで、タテにもヨコにも筋を通すという意味があります。松本藩・戸田家の柄だそうですが、戸田家のことを私は知りませんでした。松本の藩主はめまぐるしく変わったようで、2度藩主の座についたことがあるのが、戸田氏のようです。

 極鮫(ごくさめ)小紋

極鮫小紋は紀州藩・徳川家の定め柄で、現代でも人気がある柄です。動いたときに柄が揺れるように見えることがあっておもしろいので、私は江戸小紋五役の中では一番好きな柄です。鮫皮は固いので、魔よけや厄除けの意味もあります。魔よけや厄除けの意味もあります。

 大小霰(だいしょうあられ)小紋

不揃いな大きさのドット柄が現代でも違和感なく着られる模様です。これは薩摩藩・島津家の定め柄です。関ケ原の戦いで、島津豊久が最期に敵の中央を突破しようとした「捨て奸(すてがまり)」と呼ばれる武勇伝を知ってから私は島津家の大ファンなのです。

 万筋(まんすじ)小紋

万筋もただのストライプではないんですよね。柄模様によってはベルベット(起毛しているよう)に見えたこともあり、奥が深いなぁと感心した記憶があります。しかもストライプだから簡単なように見えますが、これは染めるのがすごく大変なんです。

普通に生地の上に置いてもハケを動かすとズレてしまいますから、型紙を固定する手間もかかるんです。柄には真っ直ぐ筋を通すという意味もあります。

五役に入らないが定め小紋

江戸時代には藩の数が多く、五役に入らない独自の小紋柄が多数あります。一部を紹介していきます。

 梅鉢(うめばち)小紋

梅鉢小紋は<strong>肥後藩・細川家</strong>の裃柄として使われました。梅も縁起が良いため日本人が好む模様ですね。肥後藩は今の大分県と熊本県のあたりです。

 菊菱(きくびし)小紋

菊菱小紋はひし形に変形した菊の模様が特徴的で、加賀藩・前田家の定め柄です。前田家の家紋は梅鉢ですが、裃には菊菱が使われていました。加賀藩は今の石川県ですね。

 胡麻小紋

胡麻小紋は肥前藩・鍋島家の定め柄です。花が並んでいるように見えますが、これは胡麻の断面を表しているんです。なんとも不思議な柄ですよね。肥前は今の佐賀県にあたります。

いわれ柄の種類

小紋には「いわれ柄」という普段着用のものもあります。江戸小紋五役は格式が高いものであるのに対して、いわれ柄はしゃれが効いた町人文化に由来するものでカジュアルな位置付けになります。

柄によってはフォーマルな席でも使えるものがあるでしょうが、柄の種類は数千にものぼり、柄に意味を持たせているものが多いのが特徴です。面白いものがたくさんありますよ。

 菊

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引用元:https://www.someichie.jp/SHOP/order1709.html

日本人が好きなため、非常にバリエーションが豊富に存在する柄です。特に「重ね十六菊」といって花びらが16枚ある丸っこい菊模様は、明治2年に天皇家の紋章になっています。

 桜

桜は人気のある柄なので、柄の大きさもピンキリです。フォーマルな席でも使えるか否かは、柄次第かと思います。上に紹介した画像ではフォーマルの席も可だと思いますが、私にはちょっと断言できないところではあります。

 福来雀(ふくらすずめ)小紋

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引用元:https://www.kawanoya.co.jp/goods_info/rare/r0888.html

すずめは冬になると羽毛をふっくらさせて体温の低下を防いでいるのを知っていますか?ふくら雀は冬の季語にもなっており、「福来」の字をあてて縁起が良いとしています。雀が飛び回っているようで元気な印象がでますね。

 蓑亀(みのがめ)小紋

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引用元:https://www.someichie.jp/SHOP/order908.html

カメが蓑(みの)を尾からなびかせているのが、柄に動きを与えていて素敵な模様です。亀はいわずと知れた長寿の生き物ですね。蓑とは昔話などで登場する”わら”で編んだ雨具ですが、神様が来訪するほとんどのときに身に付けていて呪力があると言われている道具です。

 波頭(はとう)小紋

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引用元:https://www.someichie.jp/SHOP/order3605.html

寄せては返す波は、再生や不滅に繋がり縁起のよい模様です。

 狢菊(むじなぎく)小紋

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引用元:https://www.someichie.jp/SHOP/OR12054.html

狢とはアナグマのことですが、狸のことを指す地方もあります。狢の毛のように菊の花びらを描いていく手法です。細かい柄の場合、毛並みのようにふわふわして見えることがあります。

絣はどんな時に着られるのか?NGな席はある?

五役柄でも紋付ではないものといわれ柄の場合、特にしゃれの効いているいわれはカジュアルな扱いになってしまうので、式が付くイベントには使用できません。

私の江戸小紋は紋無しですが友人の結婚式の披露宴に来ていき、友人代表のスピーチをしてきました。ほんとはいけないのでしょうけど私個人の感想としては、しゃれ小紋柄でなければうるさく言われないことが多いと思います。

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天皇陛下に謁見する紫綬褒章受章した場合や、国民栄誉賞受賞式などの場合は江戸小紋はNGです。それ以外の場ではほとんど使えるので、使いまわしのよい着物と言えます。

結論:好きな柄と好きな色に出会うまでが長い

江戸小紋の種類は非~常に多いことが分かっていただけたと思います。日本の職人はアイデアの横広げも探求心も、ほんとにすごいですよね。そのため気に入った色柄に出会うまでも時間がかかるかもしれません。</p><p>江戸小紋の種類は非~常に多いことが分かっていただけたと思います。日本の職人はアイデアの横広げも探求心も、ほんとにすごいですよね。そのため気に入った色柄に出会うまでも時間がかかるかもしれません。

しかし、江戸小紋は一世一代のイベント以外で使える着物です。日本の技術を存分に堪能して、着て楽しんでくださいね。

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