不毛

不毛会議 #14

「あいつら農耕民族、おれらは狩猟民族だからさ」

アズナブルの定番の殿堂入りフレーズ”農耕民族と狩猟民族”。

「金儲けと言うものは一定範囲内で「待つ」のではなく、世界中どこからでも奪い取るもんだ。つまり狩猟だ」と説明する際に使用する。

使い方としては「俺たちは狩猟民族だからさ」と社内の基準(スタンダード)は狩りに行く人間の集いだと宣言しておく事から始まる。

続いて何を思ったか会議に参加している一人一人に

「お前は狩猟民族」
「お前は農耕民族」
「お前は狩猟民族」

とレッテルを貼り出した。

「江戸か浪速か」の次は民族だからたまったもんじゃない。
狩猟か農耕民族かを決める根拠はズバリただの「印象」。
農耕民族呼ばわりされているスタッフにも駆け回りオーダーを取りに行く奴がいても御構い無し。そうだ、事実なんかどうでも良いのだ。すべては印象(レッテル)。それで全てが決まる。

この狩猟民族哲学は相当根深い。
入社してから頻繁に耳にするから誰しもが知っている。
「おはよう」
「お、今日何狩る?」
昼飯何食う?くらいの感覚で浸透している。
まぁ狩られているのは我々スタッフくらいなんだけど。

と言いつつ実はこれ"行動基準"を暗に指している。
会社のスタッフの行動は「狩猟民族」風であるべきだと望まれているメッセージとなっているのだ。
その為、勘違いをして乱暴な態度をアズナブルにアピールする輩もいた。

例えばタクシーに乗るや(アズナブルの前では特に)運転手さんに暴言を吐いたり(「てめぇ遠回りしやがったな?」など)運転手のシートを後ろから蹴り上げたり。と言った具合だ。

いやいや待て、流石にアズナブルでも「やめなさい」と言うだろう。こんな行為は売上につながらないし非常識だ。俺たちはそんなんじゃない。こんなのアピールになんかなるわけないだろ。

と考えてたら、横でもっとやれやれとアズナブルが運転席側のシートを蹴り上げまくっていましたけれども。

このように社内では狩猟民族らしく立ち回る事を暗に要求されている事にスタッフは気付きだす。

そして良識ないスタッフは修羅の国アピールに走り、良識あるスタッフはポーズをとりながら上手くやる。
気がつかないスタッフと「お前はどこぞの小作人じゃ!」と罵声を浴び、なかなか拭えない印象(レッテル)を背負う事になるのだ。

つづく

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?