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車検、どこで受ける?


車の維持費、結構頭の痛い問題です。

まだ4ヶ月先の話ではあるものの、我が家のTiguanは納車後満5年を迎えるので2回目の「車検」に出さねばならないのでどこに車検に出そうかと考えている最中です。

法定24ヶ月点検、車検時に行われる定期点検の事ですが、法定かつ自賠責保険の更新も必要となってくるので法定ながら罰則がない1年定期点検よりも義務というプレッシャーがかかります。(一年点検も義務なのですが……)

ちなみに冒頭で「車検」と括弧で括った理由は、念のため申し上げると車検は車検、24ヶ月点検は24ヶ月点検で、違うものだからです。(この記事では、これ以降は車検で統一します)
車検と24ヶ月点検は同時に行われるのでここまで厳密に書かなくとも良かったかもしれませんが、24ヵ月点検は、法で決まった箇所の点検を行う事。そしてその結果決まった基準に収まっているかどうか車検する、そんな関係だと思ってください。

さて、僕のTiguanですが、現時点で乗っている分にはこれと言ったメジャーな故障箇所や不都合を感じることは皆無だけれども、安全のためにはもちろん車検で診てもらわないといけないのですよね。

特に日本人ドライバーのほとんどは、自分でタイヤ交換もしたことがないと思いますし、特に分解整備に分類される整備はやはり有資格者に任せる方が安全です。
24か月点検ですが、実は有資格者でなくともその車両の保有者が自分で24ヵ月点検をやる分には構わないのです。(他の誰かにやってもらうのはダメなんですけど)でも、車検には合格しないといけないので、それなりの腕と設備が必要になるわけですよね。

しかし車検に出したからと言ってその後また2年間何事もなく過ごせるという保証がないのは人間ドックを受診しても次の年の人間ドックまでの間に残念ながら重篤な疾病が見つかる事があるのと同じ。
車とは二万点をゆうに超える部品の集合体ですが、車検という行為そのものは「ある時点」で、各項目が車検に「パスできる数値」に収まっているというだけの話です。

1.車検費用をざっくりと


さて、車検です。
車検を受けるために支払わねばならないものは、法定費用からいうと、
-自賠責保険金。
-自動車重量税。
-印紙代
上記費用がどの店に出しても(自分でやっても)必ず掛かります。(車種によって金額は違います)

そしてここからが店によって金額が違うところです。
-車検検査費用
-車検手数料
さらに点検の際に消耗品の取り替えやオイル交換といったメインテナンス費用や、故障や不具合があればそれに対する部品や工賃が上乗せになることもあります。(年式が古く走行距離が多ければ、消耗品の交換の必要性が高まります。)

法定費用同様、検査費用の金額は車種によって千差万別です。そして交換パーツの金額も同様。

そこでユーザーは、より安く済む車検を見つけて、そこで車検を通す事が多いようです。筆者はこれが一概に悪いこととは思っていませんが、安いことだけがどの店に出すかという判断基準になってはいけないと思っています。

何しろ平均して1.3 tくらいの重量物を街中でも50-60㎞/hで走らせるのですから、何かあったらやはりタダ事では済まないからです。

そうです。
高い店と安い店にはそれぞれ理由がある事を知ったうえで選択するべきだと思っているわけです。


街中のガソリンスタンドなどで「車検¥9,800より」などの看板を見かけますが、これは検査費用のことだけなので一応気をつけていただきたし。

一方でその車を買ったカーディーラーでの車検費用はちょっと9,800円と言うわけにはいきません。

「時間工賃」という概念をご存知の方も多いと思ういますが、検査項目の一つ一つにはメーカーが車種ごとに作業時間を定めており、ディーラーが自ら定める時間あたり工賃を乗じて検査費用は決まっているからです。

世の中にはカーディーラーを少し馬鹿にする風潮があるのは知っています。

なんでも、カーディーラーは技術もないクセに金だけはボッたくるという主張ですが、僕はこの考えに与しません。

ただ、カーディーラーとそれ以外という大きな区別で車検を受ける先を検討するのであれば、それぞれの出来ること、出来ないことをここに書くので、この記事をよく読んでから決めてもいいのではないか、というのが本生地の要旨だと思ってくださって結構です。

2.カーディーラーで車検

  1. 知識や技術が最新
    メカニックの人たちは新型車が発売されるたびにアップデートされる新技術についてしっかり学んでいる。技術的な講習も所定の水準をクリアしないといけません。特に今は電動車両(電気自動車やハイブリッド車)の高電圧を取り扱う資格がメーカー独自に設定されていることもあります。

    またメーカーの定める独自の技術力クラス別にできる仕事が細分化されており、より難しい案件にはレベル上位のテクニシャンが当たるように仕事がディスパッチされている。「ディーラーに修理に出したが直せなかった。アイツらは技術力もないくせに」という書き込みをよく見るが、主訴の症状を再現できなかったり、本当に原因不明であるケースはディーラーの責任ではなく、特に原因不明案件はメーカーが本来しっかりと対応すべきでしょう。

  2. 専門工具
    車種によっては専門の工具がメーカーによって開発され、ディーラーに販売されます。
    それがないと作業にやたら時間がかかったり、そもそも作業ができなかったりします。それ故何百という専門工具を各ディーラーのワークショップに備えています。

  3. 専用の診断機
    最近の車はECUと言う、各機構の制御を行う半導体が車種によっては100以上のECUが搭載されているのもザラ。お互いのECUは車内の通信プロトコルによって結ばれ総合制御されています。
    どこかのECUに不具合があれば車は止まってしまうかもしれないので、そのため診断機と言うものが必要になってきます。

    世の中には「汎用」と「専用」の診断機があります。
    当然特定のメーカー専用の診断機の方が必要にして十分な分析ができますが、汎用の診断機では深部までの診断ができない可能性があるのです。
    汎用の診断機だけでの診断は、結果として不具合が出て車が動かなくなると言う可能性は高まります。

    汎用と専用では何故そんな差が?メーカーが診断先のECUに制限をかけているからです。

  4. 車検の目的の違い
    カーディーラーにとって、こうした法定点検の目的は「車検」を通すという事ではありません。
    少し大袈裟に書けば、可能な限り新車のコンディションに近づけるというのがカーディーラーにとっての車検の目的です。

  5. 検査費用
    そのメーカーの専門家として必要十分な設備投資をしていますし、時間工賃を基本としているので、やはり高いと思います。しかしながら、そろそろカーディーラーも「車検手数料」という謎費用でお客様から利益を上げるのは止めた方がいいと思うのは筆者だけでしょうか。

3.その他の業態で車検

  1. 車の整備知識
    広く、浅くが基本です。
    カーディーラーとは違い、様々な車種を取り扱わねばならないその他の業種のお店では、専門性よりも汎用性の高い知識と技術が求められます。
    必ずしも正しい比喩ではありませんが、カーディーラーが○○皮膚科という専門の町医者であるのに対し、その他の業態は△△医院という、内科、循環器科、泌尿器科、皮膚科、小児科などを兼任している町医者だと思ってもらえればいいかもしれません。

    △△医院の先生は医学博士ですから様々な疾病に対応はできますが、○○皮膚科の先生の皮膚病に関する専門性にはやはり敵いません。
    ○○皮膚科の先生は、皮膚科の学会に出ていて最新の論文を読む機会も多いでしょうが、△△医院の先生に皮膚科学会の最新の知見を持つ事を期待するのは無理というものです。

    しかし、診断のプライマリーな窓口として△△医院はとても頼りになる存在であるのは間違いありません。カーディーラー以外の業態でも整備士資格を持った一定の腕を持つメカニックが整備マニュアルを参照しながら点検するのです。

  2. 専門工具
    もっていないでしょう。模造品は持っているかもしれません。
    それでもすべての車両メーカーの専門工具全部を持っているという仮定は、あまりに非現実的です。作業の種類によっては、専用工具がないがために「カーディーラーに外注に出す」こともあり得ます。

  3. 汎用診断機
    先述の通り、メーカーの正規ディーラーが持つ専用診断機でない限り、深層部の診断までは無理でしょう。この件に関しても一般の業態の店がカーディーラーに外注に出すことはよくある事です。
    最近の車は、電気自動車でなくとも本当に電気製品みたいなんです。不具合も機械的なトラブルよりもECUの不具合の方が多いかもしれません。汎用診断機だけで診断できるケースも多いですから一概に汎用が悪い、とは言い切れませんが。

  4. 車検の目的
    車検にパスさせる事がプライオリティであって、新車に近いコンディションに近づけるという目的は薄いと思います。その店のポリシーや取り組みの問題、ましてや車に対する愛情などの問題ではなく、単にそこまでは設備がない、データが持てないことに基づきます。
    しかし、ある特定の車種専門のガレージなどでは、カーディーラーに勝るとも劣らない情熱で車検を通してくれると思いますが、カーディーラーに勝るとも劣らない料金を取られることになります。

  5. 検査費用
    安めであることが多いです。それ自体が武器ですし、設備投資や教育に対する投資が少なくて済むためある意味当然かもしれません。

その他の業態と一括りにしてしまいましたが、当然ながら町の自動車整備工場と、コバックなどの民間車検場、ガソリンスタンドにとどまらず、最近ではオートバックスやイエローハットに代表されるようなカーアクセサリーショップでも当たり前に車検のビジネスを行っています。
それらに差がないかと言えばもちろんありますが、価格があまり変わらないのであればカーディーラー以外で車検を通す必要性は正直感じません。まあ、車検と一緒に何か違う商品を装着するならアリだとは思います。

4.任せたいお店を見極める


価格とその価値は一般的に言えば一次方程式的な相関関係があります。
後は自分が納得できるValue for money(価値に見合った価格)を見出すしかありません。そのためには、少なくとも私が上で列挙したような点の中で、車検を任せようとしている店がなにが提供可能か聞いてみるのが良いと思います。

また、カーディーラーの作業品質は欲しいけど、予算が厳しいと感じる人もいると思います。

カーディーラーのフロント業務 (車検や修理の受付をする業務。最近では『サービスアドバイザー』と呼ぶディーラーが増えてきました)のスタッフが作成する車検の見積もりは、一般的に
-法定費用
-点検費用
-点検手数料
-交換部品代やシステムアップデート費用

で構成されています。

車検の事前チェックや、その車のオーナーからの不具合の申告に基づいて見積もりを作ります。

法定費用はむろんですが、点検費用、点検手数料の価格交渉は基本的に出来ません。
しかし交換部品については、三段階に分けていることが多いです。

絶対交換: 保安基準に満たないため、そもそも車検に通りません。なので取り替えは必須。

交換を推奨:近い将来、基準を満たさないことが分かっているけど、車検は通るというギリギリの線。これは悩むところかもしれません。

その他:特に車の機能には問題はないけど、劣化していたり外観上あまり美しくないとかその類の交換推奨。ナビゲーション地図のアップデートなどもこれに入ります。

先ほど述べた通り、なるべく新車のコンディションに戻すことを見積もりを前提に作っているので、金額を見てびっくりするわけですよね。

5.「いや、やっぱり知り合いのところに車検出すから」

金額を見て怯んではいけません。そして知り合いは居ないのにそう言って逃げるのはあまり得策ではないと思います。(本当にもっと安い金額でカーディーラー並みに車検をやってくれる知り合いがいるのであれば勿論それはOKです)

ディーラーも何百何千のお客様につかわれてきた断り文句なのでそこは分かっています。

でもない袖は振れないこともあるでしょうし、その金額を出すなら他に買いたいものがあるという事情があるかもしれませんから、金額を見て怯むなというだけでは不親切です。

ではどう対処しましょうか?

もう一度交換部品の欄を見て一つ一つフロント業務のスタッフに説明してもらいながら要らないものを消していってみてはどうでしょうか。

-やってもやらなくても車の機能上変わらないものはカットしてくれと言って構いません。

-それから、近い将来交換が必要な部品については、いつ頃変えることになるのか、確認してみてください。場合によってはそれもカットできると思います。まとまったお金が出ていくことが少し緩和されるのではないでしょうか。
ただし、その部品交換は先延ばしになっただけだという事は忘れてはいけません。(忘れませんよね)

「この部品はカットしてくれとは言いづらい」と躊躇う必要はありません。ディーラーのフロント業務スタッフもプロですから、それについて何かしらの感情は生まれたとして(生まれないと思いますが)、顔に出すことはないでしょう。

6.車検の出し先についてまとめましょう。

ここまで書くと筆者がもの凄いカーディーラー推しに思えるかと思います。
ちなみに筆者はカーディーラーに出します。知り合いの腕利きガレージのオヤッサンは居ませんし、やはり車検の中身がそれぞれ違っているのを知っているからです。

その代わり、削るところはバッサリ削りますし、後回しにしてくださいとはっきりと言います。

それが正しいという主張ではなく、自分が納得するValue for Moneyのレベルを決めればいいのです。
時には、ガソリンスタンドに出すことは理に適っている場合もあります。
例えば走行距離が年間3千キロとか。
交換する部品なんてほとんどないでしょうし場合によってはオイル交換すら必要ではないかもしれないです。(日本独自のオイル交換の風習についてはまた後日書いてみたいと思います。)


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