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Airstreamを買ったら

プロローグ


僕がAirstreamに出会ったのは、1983年の事。
実物を見たわけではないが、テレビから流れてくるMTVの映像の中に、それはあった。
当時15歳だった僕は、そのフォルムとアルミのボディーが映す、夕暮れから暗闇へと色を変えてゆく空の色に心を奪われた。

そもそもAirsteamとは何か。

アルミニウム素材剝き出しで丸みを帯びたボディーが特徴の、アメリカオハイオ州生まれの高級Travel Trailer(日本語的に言えばキャンピングトレーラー)である。

いわゆる750kg未満の、けん引免許を必要としないキャンピングトレーラーとは違い、最近の全長が16フィート(訳4.8m)ほどの最小モデルでも1tを超え、要けん引免許とハードルが極めて高いうえに新車では内装込みで1,200万円を超える価格が一般人を寄せ付けない孤高のキャンピングトレーラーである。

ちなみに1,200万円出せば、この時分旧軽井沢あたりでも築25年くらいで程度のよい中古の別荘が手に入れられる。

僕が見たMTVとは、James IngramとMicheal McDonaldが歌う「Ya Mo be there」だ。
その映像の中に出てくるAirstreamは、完全に特定できたわけではないがどうやら1965年あたりに製造されていたCaravelの19フィートかBanbiの17フィートのどちらか、というのが有力。

ちょっと待てよ、そうだったのか。このMTVが放映された時点ですでにCaravelまたはBambiは18年を経過したオールドタイマーであったわけだ。中古であればひょっとして、という考えがよぎる。

早速調べてみた。

中古の価格は程度により様々だ。たまたま1962年製のBambiがあったが、価格は682万円ということだった。内装はレストア済みとは言え、やはりちょっと簡単に手が出せる金額ではない。

スケルトン(内装がない骨組みが剥き出しのモデル)の1975年製29フィートAmbasador(アンバサダー)なら500万円。現金で払えない金額ではないが、この低金利時代、黙って現金払いする必要はなかろうと思うし、キャッシュアウトを抑えて投資に回したいところ。

じゃあ、仮に29フィートのアンバサダーを購入したとしよう。

僕は何がやりたい?

もう、目的もないのに見た目で欲しくなる典型である。
それはジャケ買い(音楽そのものではなくレコードやCDのジャケットのデザインだけで買う事)を繰り返してきた僕なら十分あり得る。

ともかく後付けでも構わないから、Airstreamを買うことをどうやって正当化するか。ちょっと考えてみた。

可能性1)キャンピングトレーラーとしてキャンプに没頭する


世の中はキャンプ流行りなんだそうだ。(と初めて知った感を出す)

僕は数年前にキャンプ道具一式を揃えて(ズブの素人なのでColemanで全部揃えてしまった。キャンプサイトで全部展開するとそこには……Colemanのショールームが出来上がる)当時小学生だった息子と一緒にキャンプに出掛け、テントを立て、焚火を起こし、炊飯し、星空を眺めながら

「あれが夏の大三角形だよ」
とか言い、

「わー、お父さん凄いね! そんなことも知って(出来)るんだー」
と、尊敬の眼差しを受けてみたかった。

そんな不純な動機でキャンプに誘う父を横目に、当時息子は毎週のようにサッカーの遠征に出掛けていて実現されておらず、恐ろしいことに20万円ほど費やした装備は、キャンプサイトであたふたしない様にと(持ち主である地主に許可を得て)空き地でテントやタープを貼る練習をしたり、レイアウトを研究したり機能をチェックする目的で数回「使って」みたくらいでほぼ新品同様であるがガレージに作ったキャンプ道具専用の棚に長らく眠ったままである。

息子のせいにしてしまったが、実は何度かキャンプサイトの予約を試みたことがある。
しかしながら、その試みはことごとく失敗に終わった。
というのも、このキャンプブームで僕のような初心者が言ってもあまり困らないであろう高規格キャンプ場は予約が開始されるとあっという間に埋まってしまい、ものすごく予約が取りずらいからだ。

もう息子に尊敬されることなど諦めて、それらを程度のよい中古品としてフリーマーケットに出すなどすればちゃんと自家用車であるVW Tiguanが収まるはずだが、僕は、サンクコストを吸収できないという何ともセコいサラリーマンである。

Tiguanをを買ったのもそもそもキャンプが目的だった。不整地を走る前提で最低地上高が少し高いSUVにしてみたわけだが、我が家のTiguanはガソリン車(詳しい方はピンとくると思うが、つまりAWDではない)。
キャンプサイトによってはAWDしか入れませんというところもある。
逆に言えばAWDなら少しこのキャンプサイト難民時代にアドバンテージがあったのかもしれないがとにかく僕のTiguanは前輪駆動だ。

そこでこのエアストリームの登場である。
Airstreamを乗り入れ可能なキャンプ場に牽いて行けば、テントとか要らないではないか。
炊事も車内で出来る。シャワーやトイレもついているのだ。

そしてTiguanは前輪駆動ではあるが、スペック上、十分エアストリームのけん引能力はある。(色々と調べていたら、けん引能力は1,480kgまでしか申請が通らないとか。Tiguanはパーキングブレーキが電磁式で、そこが陸運局にネガティブに取られるようです)

もちろん、リアバンパーにはトレーラーヒッチメンバーを装備しなければそもそもけん引できないのであるが、けん引免許を取らないといけないという事もあって、結構面倒くさそう。

しかし、キャンプ道具をあらかた売ってしまってTiguanをガレージに入れることができるし、ってアレ?
何がしたいんだっけ?(笑)

そもそもAirstreamはどこに置くんだとかそういう話をすっ飛ばして非現実的な想像をすることくらいはお許しいただきたい。

キャンピングトレーラーには、けん引免許不要の750kg未満の規格で、4人就寝でき、キッチンとユニットバス付のとても魅力的な国産の新車が300万円台で十分購入可能だ。
WFH(在宅勤務)で使う人も多く、無理やり庭に置いたら何とかなるかもしれない。

可能性2) セカンドハウスとして、別荘地に固定する

別荘を持つことには一定の憧れがある。
中学時代の友人の別荘に招かれたことや、最初に勤務した会社の同期の家族が持つ蓼科高原の別荘に何度も遊びに行ったことでその思いは強くなった。

しかし、別荘を一から建てる資金を調達する自信がない。家庭内稟議が通らないからだ。(稟議を決済しない妻の判断は間違いなく正しい。)

しかし、今この世の中は中古の別荘をタダでもいいから引き取ってほしいというオーナーまたは自分の親から別荘を相続した子女がかなりいる。

実際、築40年くらい(僕よりも若い)の物件では100万円以下はザラに見つかる。もちろん100坪以上の土地付きも簡単に見つけることができる。
デベロッパーが開発した別荘地はどうにも法外ともいえる管理費を取るところもあるのでランニングコストも考慮にいれるべきだが、固定資産税の一部と思えば年3万円くらいまでなら我慢できる。

しかし、相応の大きさのAirstreamを建物の代わりとして考えれば、安価な土地だけ用意してそこに固定してしまえばいい。
キャンピングトレーラーは不動産ではないから、固定資産税は要らないという説もあるし実際に固定資産税を払わずにキャンピングトレーラーに住んでいる方もいるようだが、上下水道及び電力を常態として接続しているのであれば僕は払った方がすっきりする。
(工具を使わずにそれらのインフラの接続をすぐに解消できればいいのだそうだが、それはそれで不具合があるという)

変な話、土地だけなら那須や軽井沢近辺でも50-60万円で100坪以上の別荘地が手に入ったりするわけだ。これは家庭内稟議は必要のない範囲で、直ぐにでも気に入った土地があれば契約できる。

別荘として使うには、ある程度の快適さを確保するには上述の通りAirstreamは相応の大きさでないとだめだ。

それからどんな土地でもいいわけではなく、その「相応の大きさ」のAirstreamが搬入できる道幅の道に接続しており、平坦な場所に設置しなければならない。
殆どが傾斜地の安い別荘地はいくらでもあるがその二つをクリアできる土地はそれなりの価格になっているかもう売約済みに。

それでも、現地で良い不動産屋とうまく付き合えれば好物件の情報は流してもらえそうなので何度か足を運ぶ必要はありそうだ。

いずれにせよネット上の情報だけでは判断はできないし、現地でする判断は多いのだろう。

可能性3)商業施設として活用


7月の誕生日を過ぎ、僕もあと数年で定年退職の年齢になった。
将来のことは分からないが、今のところ会社は定年を延長することはなさそうで、大幅な年棒ダウンの延長雇用を受け入れて働き続けるという選択肢が最も現実的だ。

それよりも、一国一城の主として経営者になったらどうか。

エアストリームを商業施設として改装すればレッドオーシャン産業の筆頭に挙げられる飲食店としても差別化が図れるのではないか……?

否、自分で書いていて嘘くさいのである。
今時Airstreamくらいで驚くような消費者はそれほどいないし、居たとしても結局はその他のマーケティングミックスがまともでなければリピート率を上げるのは至難の業で、Airstreamが切り札って云う事は絶対にない。

マーケターとして会社に貢献してきた自負はあるが、自分は経営者タイプではないことも自覚している。

きっとうまくいかない、そう思いながら書いていた。
それでも狭いながらもショットバーに改装したAirstreamの写真などをpinterestなどで見るにつけ、そのセンスや行動力に感銘を受けて「ようし、僕も一丁やってみるか」的な気持ちになること位はご容赦いただきたい。

キッチンカーという手もあるが、それこそ今のキッチンカー主流は軽ボンネットバンだし、大きくてもせいぜいTOYOTAのクイックデリバリー(ヤマト便とかでよく見る大型のバンです。残念ながらもう新車では売っていません)位ですよね。29フィートのAirsteamである必然性は全くない。

その他の可能性としては宿泊施設として運用しているところも最近よく目にする。
最低10台くらいのAirstreamの導入が望ましいし、その上センター施設を作ってレストランとか入浴施設とかそういうものも用意(各Airstreamにはシャワーやらキッチンはついているものの)した方がウケがいいことは分かっているが、どうにも投資効果は低そうにしか計算できない。

実際、その手の宿泊施設は価格設定がアグレッシブ過ぎて、投資金額の早期回収しか考えていなさそうに思えるので一見さんが興味本位で一泊してInstagramに写真載せたらお終い、次はありません見たいな展開になりそう。

では、結局僕はどうしたいのか。

断然、可能性2の「セカンドハウスとして別荘地に固定する」だ。
キャンピングトレーラーとして日本中をAirstreamをけん引して回るにはコストとリスクが大きすぎる。
たとえけん引免許不要の750㎏未満のキャンピングトレーラーであっても高速道路の料金も2割増し(良心的だとは思うが)、狭い道に迷い込んだ時のことを考えるとちょっと自信がない。

そこそこの大きさのAirstreamを安く買い、そしてまた安く買った別荘地に据え付ける。

購入する条件は、
-自分の蓄えだけで、家庭の貯蓄には手を出さない、ローンは組まない。
-自分で出来ることは自分でする。
-時間に制約を付けない。(慌てて買わない)

そして条件に合わなくなったら、この案から撤退する。

無理してまで普通のサラリーマンがやる事でもないし、老後のことも考えないと(老後のことも踏まえて今回の事を考えているのですが、それはまたの回に。)

ちょっとずつこのプロジェクトを皆さんにシェアしていきますね。

今後とも宜しくお願い致します。

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