2023年11月に読んだ本まとめ

2023年11月に読んだ本を多少の備忘録とともにまとめるやつです。


有象利路「組織の宿敵と結婚したらめちゃ甘い」

異能系バトルラノベ、のその先で結婚したヒロインとのお話。
異能バトルのキャラたちが一般人としての生活を送る様子は楽しく、嫁である律花もかわいく、楽しく読める作品でした。
描かれるわけでもない異能バトルの設定も、しっかりと作り込まれていて好き。
過去作品だと尖ったギャグに抜きん出ていたり、とにかくシリアスだったりと極端な有象さんですが、今作はそのどちらもバランス良く盛り込まれている感じです。しかしその分作品全体の印象も、マイルドにおさまってるかも?
犀川家の飼い猫にゃん吉がいい感じにかき回してくれて、かわいくて好きでした。
異能バトルをしていた頃の武器や強化外装が、ごく普通の日常生活を送る今となっては、ただ部屋に飾られているだけだったり、物置にしまわれていて処分に困ったりと世知辛い扱いを受けているのも、物語の終わりの先の物語という感じで好きでしたね


鴨志田一「青春ブタ野郎はハツコイ少女の夢を見ない」

凄すぎました。読書人生でもトップクラスの凄まじい読書体験でした。
咲太と、麻衣と、そして翔子の紡いできた物語の集大成といいましょうか。
前巻ラストの衝撃的な展開から、咲太が愛おしい日常を取り戻すための奮闘は手に汗握るストーリーでした。
物語全編において咲太の生きたいという気持ち、そしてみんなが咲太に生きていてほしいと願う気持ちに満ちていて、展開のひとつひとつが涙腺に直撃します。
なんてことない日々の一コマひとつにも涙をこぼすほどで、「幸せ」の何たるかを教えてもらいました。
友人としての理央の号泣も、名シーンです。
さらにさらにさらに、クライマックスにすべてをひっくり返すオチが待っていて、「青春ブタ野郎」というシリーズの凄まじさには脱帽です。
本当にめちゃくちゃおもしろかったし、感動しました。


手塚治虫「火の鳥1 黎明編」

女王ヒミコやヤマタイ国の登場する古代を舞台にした物語。
日本神話などの要素も交えつつ。
物語の節目節目で、時代背景なんかも丁寧に説明されていて良かったです。
かつて敵同士でありながらも、仲を深めていくナギと猿田彦の関係性が楽しく見れましたね。
火の鳥を求めた者たちが志半ばで果てていく中、火の鳥を求めていなかった者たちが子を成して後代へと繋がっていくのが、なんとも考えさせられます。


竹岡葉月「おいしいベランダ。 午前1時のお隣ごはん」

独り暮らし女子大生と、ベランダ菜園が趣味なお隣さんのラブコメ。
かなり読みやすいのと、ラブとコメと園芸知識と料理ネタとのバランスがめちゃ良く、かなり好みの作品でした。
葉二は顔はいいけど性格が残念で、なのに先に惚れた弱みでなんだかんだ惹かれてしまうまもりとの絶妙な距離感が良かったです。
まもりもそうですが、沖縄出身の湊ちゃんなんかも、食べるの好きな感じがすごくよく出てて好ましい……。
まもりが実家に帰省するシーンでは、わざわざ鉢まで連れ帰っていて、彼女のベランダ菜園への深い愛情が感じられて良かったです


協力:福本伸行、原作:萩原天晴、漫画:上原求、新井和也「1日外出録ハンチョウ 第17巻」

泥酔して記憶を完全に失ったところから宮本さんを探しに行く「追跡」と、牧田さんの次男の弘樹くんが1日外出についてくる「背伸」が好きなエピソードでした。
大槻の弘樹くんとの交流は、なかなかに微笑ましくて良かったです。
この回は登場人物がいい人しかいない。
気取ってない等身大の、でもたしかに子どものそれとはぜんぜん違う大人の日常を体験して、それを大人になっても忘れないでいられるってのは本当に良い経験。
巻末は特別編の「1日休日録ミヤモト」。休んでもいい、と前向きに背中を押してくれる良い回でした。


石田灯葉「絶対に俺をひとり占めしたい6人のメインヒロイン season2.次に振られるのはキミだ」

完結! 最後はやや駆け足気味に結論に辿り着いてしまった感はありますが、そりゃあその娘を選ぶよね、という王道展開で良かったです。
絶対に回り道でしたが、必要な回り道だったのかも。
個人的にも推しの子だったので、真一と結ばれて良かった……。
6人のメインヒロインとの絆や成長を描いたうえで、ラブコメやお色気もあったりとボリューム満点な作品だったと思います。
最後の最後は、ラブコメの域を飛び越えてとんでもなオチも待っていたりしつつ。
爬虫類両生類が苦手な十条さんがかわいすぎて、大外からまくってくる勢いで良かったです。


中村颯希「ふつつかな悪女ではございますが5 ~雛宮蝶鼠とりかえ伝~」

苦難を乗り越え友情の芽生えてきた玲琳と慧月、初めての喧嘩をする。
お互いにお互いのことを想っているがあまりにすれ違い、喧嘩慣れもしていないせいで拗れに拗れてしまう大喧嘩。ハラハラさせられつつも微笑ましい。
攻撃的に甘える慧月、可愛かったです。
一方その裏では、後宮の残る三家がいずれもきな臭い動きを見せ、そちらの方もどうなってしまうのかが気になります。
というかきな臭い展開が複数同時進行していて、現妃世代ドロドロすぎて絹秀様お可哀想に……。
玄家は一番安心できる雰囲気だったのに、結果どこよりもきな臭いし……。


手塚治虫「火の鳥2 未来編」

はるか未来の西暦3404年、隆盛を誇った人類が滅びへと向かう物語。
それのみならず、火の鳥から永遠の命を与えられたマサトが人類の滅びた、その先の未来まで延々と見届けるのが凄まじかったです。
描かれる年月があまりにも膨大で、それをずっとひとりで見守っていたのかと思うと、気が遠くなります。
そして待ちに待った新人類の誕生で作品全体がひとつの円環を形作るのもまた、作品構成としてもすごいし、生命の愚かしさも表現していて凄かったです……!
結局この作品を通じて描きたかったのは、この物語のラストに登場する火の鳥の「今度こそ信じたい」に尽きるのかなと思いました。


詠井晴佳「いつか憧れたキャラクターは現在使われておりません。」

青春小説として、とても綺麗にまとめられている作品でした。
学生生活に馴染めずにいたマガリと明澄は、何者かになろうとして足掻き、しかしそれぞれ正反対の結果に行き着いてしまう。
そうして大人になり、得たふたりの“キャラクター”に対し、かつての自分たちの作り上げた“キャラクター”が責め立てにやってくるという構成。
響來から「堕落しやがって」と罵られるような丸まり方をした生き方でも、最終的にはそれも立派に戦った結果なのだと認めてくれる優しさがありました。


相沢沙呼「教室に並んだ背表紙」

教室にどことなく居場所のない中学生の女の子たちと、司書のしおり先生の交流を描く連作短編集。
相沢沙呼さんなのでガッツリミステリなのかなと思い込んでいたのですが、どちらかというと思春期の悩める女の子たちの心にそっと寄り添う素敵な小説でした。
生徒たちに寄り添うしおり先生の存在が素敵で、改めて本というものの素晴らしさも感じられたり。
まだ何者でもない女の子たちの、些細だけれどでも切実な悩みを読んで、しおり先生や本とのふれあいを通じて立派に育っていけたらいいなと思ってしまいますね。



個人的な今月のお気に入り作品トップ5

第1位/青春ブタ野郎はハツコイ少女の夢を見ない

第2位/おいしいベランダ。 午前1時のお隣ごはん

第3位/ふつつかな悪女ではございますが5 ~雛宮蝶鼠とりかえ伝~

第4位/火の鳥2 未来編

第5位/絶対に俺をひとり占めしたい6人のメインヒロイン season2.次に振られるのはキミだ