2023年7〜8月に読んだ本まとめ

2023年7〜8月に読んだ本を多少の備忘録とともにまとめるやつです。
(7月は多忙で読んだ本が少なかったので、8月にまとめました)


比嘉智康「命短し恋せよ男女」

余命宣告を受けた中学生4人の多角関係ラブコメ。
正直なところ、あまり魅力は感じられなかったですね……。
設定からやりたいことは伝わってくるものの、ひとつひとつのエピソードがあっさりと軽めなので、今ひとつ印象に残るものが無かったです。
一方で伏線のうまさであったりとか、言葉選びのおもしろさ、クライマックスの切なさはさすがの技量だと思います。
比嘉さんの今までの作風を理解しているので、続刊に強い期待を寄せたいと思います。
キャラクターでは、良いナースさんなのに、どことなく退廃的な雰囲気を漂わせる刈谷さんが好きでした。


協力:福本伸行、原作:萩原天晴、漫画:上原求、新井和也「1日外出録ハンチョウ 第16巻」

今回は共感できたりこの作品らしかったりと、興味深いエピソードが多くて嬉しい1冊でした。
職質されにくい格好を探る「職質」、宮本さんのために料理を作ってあげる「作置」、若者とおじさんの価値観の違いを描いた「歩花」、宮本さんがバスケにハマる「籠球」が個人的に好きです。
巻末に収録されているAIがお話を考えたハンチョウ、いつものパターンを踏襲しているはずなのに、拭い切れない違和感がまるまる置かれてしまっててめちゃくちゃ笑いました。
AIがお話を考えるって、そのまま無加工で出すってことじゃないと思いますよ!


石田灯葉「絶対に俺をひとり占めしたい6人のメインヒロイン season1.さて、誰から振ろうか?」

6人の花嫁候補たちとゲームや共同生活をしつつ、将来の伴侶を選ぶ“恋愛留学”を描いた物語。
幼馴染や元カノなどの立場の違いはあれど、最初から6人のヒロインが横並びで登場するので、個々の掘り下げは必要最低限といった感じでしたが。
この1冊でまずひとりが脱落するのですが、ルールの隙をついて全員合格……とかじゃなくちゃんと脱落者を出しているのは好印象。
恋愛であり、頭脳戦的な面も楽しめる作品でした。
個人的には幼馴染でストーカーの咲穂が、過去エピソード含めて頭ひとつ抜けてかわいいと思うので、生き残って欲しいですね……。


白鳥士郎「りゅうおうのおしごと!18」

スパコンを用いた将棋AIで将棋の結末を見た八一と天衣。
将棋の未来に絶望するふたりの前に立ちはだかるのは、宿命のライバルである“人間”たち。
圧倒的なまでの強さを前にして、さらに圧倒的な強さを叩きつけてくる凄まじい1冊でした。
ここまで18冊の長期シリーズを描いてきたこの作品で、それでもなお心震えるような新しい勝ち方があることに驚きます。
将棋ってこんなにも奥深い競技だったのか……。
いよいよ本編はラストスパート。八一とあいと銀子と将棋の未来から目が離せません……!


新田漣「さよなら私のドッペルゲンガー」

ノリと勢いで乗り越える、ひと夏の切ない恋物語……といった感じでしたね。
作品全体が若さ特有の馬鹿馬鹿しいやり取りに満ちていて、楽しく読めました。
そのうえでクライマックス以降は切なさもあり、1冊で“青春”の良いとこが詰め込まれてます。
基本は青春小説だと思うのですが、数少ない大人の登場人物たちの雰囲気が良かったですね。
墨染と深谷は特に手のつけようのないバカという感じだと思うのですが、そこら辺の名も無い大学生たちのほうが更に輪をかけてぶっ飛んだバカたちだったのは……京都の若者、ヤバすぎるかもしれない。


犬塚惇平「異世界食堂2」

事件らしい事件など起こらず、異世界の人々が日本の洋食屋を訪れて感激する。
それだけではありますが、多種多様な立場の、人間から魔族など様々な来訪者の視点から描かれるので飽きずに楽しめます。
今回からは魔族の給仕アレッタも加わりました。
他の扉からやってきたお客さん同士の繋がりも描かれ始め、世界が広がっていく感じが好きでした。
今回は高貴なるお方が頂く「カルビ丼」、女の子たちの大好物「クッキーアソート」、貧乏一家のお楽しみ「ハムカツ」、冒険パーティーをまとめて魅了する「オードブル」などのエピソードが良かったです。


石川博品「ヴァンパイア・サマータイム」

これはめちゃくちゃ好きでした。
昼の人間と、夜の吸血鬼が共存している世界。
夜の短くなったサマータイムの中、時間の重なった人間ヨリマサと吸血鬼冴原の恋愛小説。
別世界のふたりが些細なことで惹かれ合い、恋に落ちる描写が丁寧で良かったです。
互いに互いのことを理想的でかっこいい姿に妄想しながら、実際のところはそんなにかっこよくもない男の子女の子、という等身大な感じが凄く好きでした。
普通の恋愛小説としても刺さる内容なことに加えて、吸血鬼としてのエッセンスが加わって、唯一無二の恋物語に昇華されていました。


中村颯希「ふつつかな悪女ではございますが 〜雛宮蝶鼠とりかえ伝〜」

めっちゃおもしろくて一気に読みました。
悪女と中身の入れ替わってしまった病弱少女の玲琳が、手に入れた健康な身体で新生活を満喫するお話。
玲琳が鋼のメンタルすぎて、周囲が呆気にとられる様がおもしろい。
悪女と蔑まれながらも、玲琳の素質と努力ですべての逆境をひっくり返していく展開は、どんどん読み進めて行きたくなる爽快感がありました。
玲琳は心根が清らかなだけでなく、身内の女官を貶されれば静かにキレたり、とんでもない環境でも楽しめるところだったり、なかなかに破天荒な“おもしれー女”なのもすごい良かったです。


ゆいレギナ「100日後に死ぬ悪役令嬢は毎日がとても楽しい。」

100日後に死ぬと宣告された悪役令嬢が、後腐れなく旅立つために終活する話。
ルルーシェの令嬢らしからぬ行動力だったり、泥棒猫たるレミーエを教育するだったりといった、リミットがある中でのルルーシェの活躍は良かったです。
地の文がお嬢様言葉で描かれているのですが、丁寧さが徹底されておらず、時折くだけた言い回しを使っていたりするのは気になりました。
閑話で色々な背景が語られたものの、ルルーシェとの間のすれ違いは解消されず、この1冊ではモヤモヤっとしたラストとなってしまいました。
神様の目的も謎だしねえ……?


風見鶏「太っちょ貴族は迷宮でワルツを踊る 1」

家から勘当された太っちょ貴族が、冒険者としてダンジョンに潜るお話。
すごく丁寧に描かれており、読みやすい作品でした。
貴族のミトロフが慣れない冒険者生活に苦労しつつも、楽しみを見出したり成長する様が見れるのが良かったです。
太っちょだったり貴族だったり、食べるの大好きだったり、新しい趣味のお風呂だったり、惹かれる要素がたくさんあるのが楽しいですね。
全体がきれいにまとまっている分、突き抜けた“この作品ならでは”という部分では少し弱かったかもしれません。
呪いで骨の姿になった少女、カヌレがかわいかったです。


個人的な今月のお気に入り作品トップ5

第1位/ふつつかな悪女ではございますが 〜雛宮蝶鼠とりかえ伝〜

第2位/ヴァンパイア・サマータイム

第3位/りゅうおうのおしごと!18

第4位/異世界食堂2

第5位/さよなら私のドッペルゲンガー