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The 100 Best Albums of the 2022 パート3


69 Yuta Matsumura - Red Ribbon[Red Ribbon]

シドニーでオイリーボーイズ名義でハードコア・パンク・バンドをしているドラマーが初のYuta Matsumura名義でソロとしてエレクトロニック作品をリリースした。ハイトーンやノヴォといったエッセンスにスロウなバレアリック・ビートが特徴的な傑作。


68 Horse Lords - Mess Mend[Comradely Objects]

ボルチモアで結成されたホース・ロードの新作「Comradely Objects」は、サードアルバムにあったようなデザート・ブルース・テイストは後退し、キャリアの中で貯留されてきた独自のマス・ロック性が一つの集大成を迎えた。


67 Gurun Gurun - Toumeiningen (ft Cuushe)Uzu Oto

チェコで結成された実験的なエレクトロニックやフリーフォーク・バンドの新作。日本からはCuusheとAsunaが参加している。涵養されたノイズとその結果繁茂したフリーフォークが一つに凝集した時、蔵原惟繕の映像を現在に蘇らせたような音の世界が広がる。傑作。

66 Persher - Face To Face Cloth[Man With the Magic Soap]

パーシャーは、パーリアとブラワンの二人によって結成されたメタル(!?)バンド。その記念すべき一枚目のアルバム「Man With the Magic Soap」は、テクノを射程とする二人にしか表せないメロディの浅根性と蠢くパワーノイズと暴力として常に深部で駆動するドゥームメタル、スラッジメタルの持つ深根性が結合した怪作!


65 VR SEX - Walk of Fame[Rough Dimension]

ロサンゼルスのバンドVR SEXのセカンドアルバム。リングア・イグノタやウェイリン・ストームがそれぞれデス・インダストリアル、カントリーの領域で新たなゴシックの系譜に連なる要素を堆積させる中、VR SEXはデペッシュ・モードをクロームやワイアーといったポスト・パンクに賦与されたエネルギーをどこにも帰結しないメロディとしてのノー・ウェイヴで現代に読みがえらせた。


64 Pyrithe - In Praise of Enochian Trickster[Monuments to Impermanence]

ピッツバーグで結成されたアヴァンギャルド・メタルバンド、ピリテのファーストアルバム「Monuments to Impermanence」は、「無常のモニュメント」とタイトルにもあるように残らないものに対する反逆としてのモニュメントとして捉えると、あながち小林秀雄が「無常ということ」で批評する西行の心情に共通していなくもないのではないか。ドゥームやドローンが静けさとのコントラストの間に静的な実験性として配置された傑作。


63 Daniel Rossen -  Shadow in the Frame[You Belong There]

「Silent Hour / Golden Mile」EPから10年経てダニエル・ロッセン(グリズリー・ベアー)が初のアルバムをリリースしたのだが、「Silent Hour / Golden Mile」には一切見られなかったゴシック・カントリーを纏いながら自身のバンドのネオフォーク性も加味され複雑に捩れる音の束がまとまった傑作。


62 Coby Sey - Etym[Conduit]

イースト・ロンドン(ルイシャム)出身のアーティストのコビー・セイは「Conduit」というサードアルバムで一気に彼の多岐にわたる影響源を集約したアルバムをリリースした。「River」まではヒップホップ性は陰に潜んでいたがこの作品では全編にヒップホップ性が散りばめられておりコビー自身が吸収してきた過去の音と今作は相補的にファンクショナルな傑作となっている。



61 Hinako Omori - A Journey[a journey...]

ロンドンで活動する大森日向子が「Auraelia」で私的な現象による「混乱、欠如、曖昧さ、希望、憂鬱」といったものを表現していたのに対して「a journey…」ではそれらの現象を治癒するまでの過程に位置付け「自然」を主題により鳥瞰的な拡がりを見せた傑作。


60 宇多田ヒカル - BADモード[BADモード]

宇多田ヒカル最新作であまり言及されてないように思う事は、今作で最も「フィールドレコーディング」に接近した点ではないだろうか。良い意味で抑揚を抑えたスクリレックスとの共作もブローステップ一辺倒を抜け出した楽曲になっていて今作の「冷静さ」が賦与した要素が強い。

ex Corbin - Promise to Me

ボルチモアのR&Bアーティスト。コービンの新曲。声帯を通して何にも被覆されていないエモーションを顕現させた様に状況(レ・シチュアシオン)に問いを投げかける。


59 Prison Religion - Banshee, Pale Fire, Landing[Hard Industrial B.O.P.]

リッチモンドを拠点に活動するプリズン・レリジョンの新作。彼らが説明する「破綻しつつあるシステムの歪んだレンズ」とはメディア全般の現状批判にも取れるのだが、かつてカート・コバーンが過当競争という明確な対象群を批判したのとは異なり「実際に聞いているのは誰だ」という曖昧なものに対する怒りと訣別をインダストリアルとトラップ・メタルすれすれの境界線で照射しながら表現した傑作。


58 Rutger Zuydervelt - Tuimelval 6[Tuimelval]

マシーンファブリックの別名義、ルトガー・ザイダーヴェルトの連作EPは「Hinkelstap」が前篇で「Tuimelval」が後篇になっておりビデオゲームやポッドキャスト、テレビシリーズ用に依頼されたトラックをリワークした作品で全篇に90年代のエッセンスが充満している中に「現在」の視座が伺えるテクノ、エレクトロニック要素が強い傑作。


57 Crewdson & Cevanne - Drinking Song[Rites For Crossing Water]

UKを拠点に活動するクルードソンとセヴァンヌによる共作2作目。コヴェントリー運河といった水路にインスパイアされたEPで牧歌的で「水」をイメージする清澄さを纏ったエレクトロニック・フォークサウンド。


56 Bienoise - LCL Open is Porn, Closed is Fetish[This Meaning Today]

イタリア出身のアルベルト・リッカのプロジェクト、ビエノイズの新作。年々複雑に、そして無数に選択される音の立像の型を疑問視するかのように問いを立て「ブレイク・コアと呼ぶもの」の背後に脈々と流れるダブ・テクノやIDMを主調音としながら構成し彼の問いを拵えた快作。


55 AKAI SOLO - Upper Room ft. Armand Hammer[Spirit Roaming]

ブルックリンのラッパー。基調となるパーカッションに重きを置く事のないドラムレスの旋律を巧みに用いAKAI SOLOは、ザ・ケアテイカーと双璧をなす20年から30年代にかけて生まれたブリテッシュ・ダンス・ホールと現代を繋ぐターンテーブルミュージックの新しいかたちを見事に捉えた怪作をリリースした。


54 Quadeca - House Settling ft Danny Brown[I Didn't Mean to Haunt You]

LAのヒップホップ/エモ/ R&B・アーティストのクアデカ新作は「From Me to You」で復位されたヒップホップ・テイストを前年にRimonが「Digital Tears」で提示したサイケデリック・ソウルのかたちにも通ずるR&Bテイストを強化した傑作。


53 Chat Pile - Slaughterhouse[God's Country]

オクラホマで結成されたチャット・パイルのデビュー作はノイズ・ロックやスラッジなハードコアな音楽として紹介されている事が多いのだが個人的にはナイン・
インチ・ネイルズのインダストリアル性と調和したオルタナティブ・メタルの今を示した作品だと思っている。



52 Infinity Knives & Brian Ennals - Coke Jaw[King Cobra]

インフィニティ・ナイヴズとブライアン・エナルズはボルチモアのラッパー。
彼らは「King Cobra」でラン・ザ・ジュエルやジェイペグマフィアといったエッセンスの中に歪んだシンセ・ファンクやポスト・クラシカルなテイストをカンニンリンギストの「Oneirology」を取っ掛かりにしたようなアブストラクトの領域を拡げた傑作をリリースした。


51 Polygonia - Hamadryas Amphinome[Living Patterns]

ミュンヘンを拠点に活動するアンビエント・テクノアーティストのポリゴニアは「Living Patterns」というシンセによる技巧と彼女が楽器で築き上げてきた演奏能力によって築かれたアルバムで、演奏とビートに柔和な力学が機能した作品で、
その中でも「Hamadryas Amphinome」は今年リリースされたテクノトラックで
最も優れた楽曲の一つだ。

50 Alvvays - Tile By Tile[Blue Rev]

前作よりもよりタイトになったオールウェイズの新作「Blue Rev」でマイ・ブラッディ・ヴァレンタインの残響部分を削ぎ落としポップなサイケデリアとしてシューゲイズとの横断性を見せた。

ex Midwife - Sickworld

サン・ミゲルのアーティスト、ミッドワイフの新曲。アンビギュアスでセンチメンタルな情感が幽かな音色を頼りに浮遊する。

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