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SONAR MUSICで紹介したかった2021年注目のアフリカンアーティスト!

アフリカ音楽キュレーターのアオキシゲユキです。
1月5日のJ-WAVE「SONAR MUSIC」をお聴き下さった皆さん、本当にありがとうございました!今回2回目のSONAR出演ということで「今年注目の海外アーティスト・アフリカ編」を担当させて頂きました。
「まだ聴いてない!」という方、大丈夫です!来週12日までならradikoのタイムフリー機能を使って放送を聴くことが出来ます。当日ゲストで出演された小田部仁さんDJ水月さん島晃一さんが紹介された注目アーティストもめちゃくちゃ面白かったので、ぜひぜひradikoでお楽しみください!

SONAR MUSIC(PART1) | J-WAVE | 2021/01/05/火 21:00-22:30

SONAR MUSIC(PART2) | J-WAVE | 2021/01/05/火 22:30-24:00

10分間で1曲だけの紹介だったので選曲はかなり悩みました。行きつけの洋食屋ARUKASで落花生をかじりながら悩みに悩んだ結果、当日ご紹介させて頂いたのはこちらのアーティストでした。

Azana

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南アフリカのダーバン出身、昨年デビューしたばかりの20歳のシンガー・Azanaは、ネオソウル、アフロポップ、ハウスまで歌いこなす幅広い音楽性と低音から高音まで豊かで温かみのある独特の歌声が魅力です。昨年リリースした1stアルバム「INGOMA」が南アフリカのApple Musicポップチャートで1位を記録し、今国内で大きな注目を集めています。
番組で紹介した曲は、Azanaを発掘した南アフリカのハウスDJ兼プロデューサーのSun-El MusicianがAzanaをフィーチャーした曲「Uhuru」です。

OAでは詳しく触れる時間がありませんでしたでここで簡単に説明させて頂くと、この曲のタイトル「Uhuru」はスワヒリ語で「自由」なんですが、曲のサビの部分では「not yet uhuru, not yet uhuru」と繰り返し歌われています。歌詞の大半はズールー語なので、英訳をベースに全体の世界観を僕なりに要約してみました。

あの黒人の男性を見てください
彼は仕事を探しているがその機会には恵まれません
道は暗い そしてこの問題は決して終わらない 
いつまでこんな抑圧される日々は続くのだろうか
私たちの子供たちは常に困窮しているのに
私たちに自由なんてない 未だに自由なんて訪れない

この世界観を理解した上で聴く「Uhuru」はグッと胸を締め付けらるものがあります。MVの冒頭に現れる文章は「南アフリカ独立の父」であるネルソン・マンデラが残した言葉で、ビデオでは言葉の一部が省かれているため参考までに全文を掲載します。

"Music is a great blessing. It has the power to elevate and liberate us. It sets people free to dream. It can unite us to sing with one voice. Such is the value of music."  ~Nelson Mandela~
音楽は偉大なる恵みです。音楽は私たちを高揚させ解放する力を持っています。音楽によって人々は自由に夢を描くことができます。そして音楽があるからこそ私たちは一つに団結し声を揃えて歌えるのです。それが音楽の価値です。(訳;アオキ)

またビデオの後半には、同じくアパルトヘイト対する抵抗運動家のスティーヴ・ビコ(Steve Biko)と思わしき人物と言葉が現れます。

“It is better to die for an idea that will live, than to live for an idea that will die”  ~Steve Biko~
どう死ぬかを考えながら生きるよりも、どう生きるかを考えながら死ぬほうがましだ。(訳;アオキ)

この他にも、2015~2016年頃に南アフリカで起きた、大学の学費値上げに反対するための学生運動「#FeesMustFall」、ネルソン・マンデラの妻で女性活動家のウィニー・マンデラ(Winnie Madikizela Mandela)、2019年のミスユニバースで優勝した南アフリカ出身モデルZozibini Tunzi、最後に革命闘争の英雄と称えられるSolomon Mahlanguなどのキャラクター達が、彼らが残した名言と共に次々と現れてビデオは終わります。
曲のリリースは2020年4月なので、同年5月にアメリカで起きたジョージ・フロイド事件よりもリリース自体は前ですが、MVのリリースは少し遅れての7月なので、こうした偉人たちが登場する映像構成は、もしかするとフロイド事件の影響を受けてのものだったのかも知れません。しかし、いずれにせよ歌詞に込められた彼女のメッセージは、未だに無くなることのない南アフリカの人種差別問題という現実に対する悲しみと、それに立ち向かおうとする決意、そして市民に対するエンパワーメントが感じられます。
また、1stアルバム「INGOMA」も全体を通して非常にクオリティの高い楽曲ばかりが揃っていますので、ぜひ一度お聴き頂けたら嬉しいです。


では、ここからは当日番組で紹介できなかった今年大注目のアーティストをピックアップしていきます。

Lyquidmix "Regalo"

Lyquidmixはナイジェリアの若手音楽プロデューサーらしいのですが、確実なソースがなかなか掴めなかったので、今後分かり次第加筆させて頂くかも知れません。とにかくトラックがメロウ&キャッチー。かなりクオリティが高かったのでこれから絶対来るアーティストだと個人的に思ってます。


Dr.Prvyz "Wake Up"

こちらもまだソースが掴みきれておらず、たぶんナイジェリアだと思うんですが、プロデューサーがさっきのLyquidmixなので、この界隈から出てくる音楽はもしかすると私の大好物かも知れません。こちらも引き続きリサーチします!


AYLØ "dnt' dlt"

知る人ぞ知る「Alté」(オルタナティブを意味するナイジェリアの新しい音楽性を持ったアーティスト達あるいはその楽曲の総称)の重要人物です。SantiやOdunsi達の仲間ですね。叙情的かつ先進的でアフロポップの代名詞であるリズム「3-3」や「3-2」のリズムにこだわらないところや、エッジの効いたシンセサウンドが特徴だと思います。この辺も今度しっかりご紹介したいと思っています。


DJ mOma "Momapiano"

DJ mOmaはスーダン生まれニューヨーク育ちのDJ/プロデューサー。この人の名前を始めて知ったのは、Adelineの2020年のEP「Intérimes」のリミックス盤「Intérimixed」の収録曲「After Midnight -DJ mOma remix-」がめちゃくちゃカッコ良かったのがきっかけでした。アメリカのクラブシーンで活動するDJならではのAfrobeatsやAmapianoの「混ぜ方」や「遊び方」があって、本流のナイジェリアや南アからはこのハイブリッド感は出ないんじゃないかなと思います。EPのタイトル「Momapiano」からしてファニーなんですが、例えばこれが王道のAmapianoなのかっていうと決してそんなことはなく、むしろ「Amapianoっぽさが漂うAfrobeats」のような柔軟さで、この辺りがのちにサブジャンルとして確立されて例えば「Amabeats」とか、それこそそのまま「Momapiano」が1ジャンルになることだって往々にしてあるので、引き続きDJ mOmaの動向を注視していきたいと思います。

ちなみにAdelineも私が大好きなアーティスト(彼女はNYを拠点にするフレンチカリビアン)です。1月5日リリースの新曲「Whisper My Name」の「A Colors Session」版では、ベースを弾きながら歌うAdelineが見ごたえ充分過ぎるのでこちらも是非!


この他にも南アフリカの若手ラッパーをご紹介します。

The Good Kid "Kas Lam"

こちらも本当はじっくりとご紹介したいんですが、今日のところは駆け足で音源のご紹介とさせて頂きます。

という訳で今回もお読み頂きありがとうございました。
アフリカ音楽キュレーターで金属製蝶ネクタイ「Metal Butterfly」プロデューサーのアオキシゲユキでした。

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