〈読書録〉 give&take 与える人こそ成功する時代

とある人の一言。
「組織の仕事には損得がある」とすれば「あなたは損をしている」と。えっ?そ…そうなの??(笑)
私は「『隣人を助けられないような人』がいるのか?」と疑問に思うのだけれど、そういう人も中には「いる」という事実なようだ。

さて、
TEDで「Are you a giver or a taker?」というタイトルでスピーチをしている著者のAdam・Grantは、組織心理学者であるという。
スピーチでは、組織の中で疑心暗鬼があるとすれば、その発生源は「何をしてもらおうか」という意識の人(テイカー)であるという。
反対が「何をしてあげようか」という意識の人(ギバー)である。
調査によれば、ほとんどの人は真ん中の「ギブ&テイク」の人で、その「何かしてくれたら私も何かをしてあげる」というバランスを保ちたがる代償型(マッチャー)であるという。
ポイントは、ギブ&テイクのどちらが先に来るかということ。
テイカーの思考は「テイク&テイクン」で、与えるよりも多くを受け取ろうとし、自ら奪い取る人。ギバーの思考は「ギブ&ギブン」で、相手が何を求めているかに注意を払い、見返りなど関係なしに与える人。
マッチャーの思考は、与えることと受け取ることのバランスを取ろうととする人。
これらの人に興味を持ち、調査をしたその結果をまとめられたのが、今回の本である。

組織における成功者は誰なのか。
生産性や営業成績なとが最低の人は「誰かに何かをしてあげたい」と思うギバーである一方、なんと最高もギバーであるという。成功しているのはテイカーと思われがちだか、マッチャーに足元をすくわれ、さらにはやがて「因果応報」というツケが回ってくるという。

そうなれば、組織として誰を守るべきなのか。
組織を改善できるのはギバーであり、最も貴重な存在がギバーであるとのこと。そのギバーは気をつけないと燃え尽きてしまうため、特に守らなければいけない存在だという。そのための環境整備としては「助け合いが当たり前になること」が必要。
但し、その文化を作る際、テイカーが一人でもチームにいれば、助け合いは出し惜しみされ、「力を尽くすだけ損だ」というチームになる。
テイカーの前では、ギバーは自己犠牲に陥ってしまい、「やったね、この人に全部任せちゃおう」という位置付けになってしまう。
効果的なチーム作りに必要なのは、「テイカーの排除」である。なぜならば、ギバーとマッチャーの間には搾取が起こらないので、安心して親切さを発揮するという。
結果、組織では貢献そのものが大事。他者の成功を助けられるかどうか、であるという。

…TEDのスピーチと調査がまとめられた本により、誰がどのように対処しているか観察すれば、誰がギバーでテイカーなのかはすぐわかってしまう。(というか、ギバーには見分けられるようだ。)←自分がギバーかテイカーかは、Adam・GrantのHPで調べることができる。

私がこの本を読んで、転用できると思ったのが、第三次産業において低賃金と言われている「パートタイマーの方々は、社員よりもこの会社に愛着を持っている人なんです!!」とよく聞くことについて。パートタイマーが疲弊しているとすれば誰がが貢献を搾取し、職場で助け合いがなされていないということだろう。
それがどういう構造になっていて、ギバーとテイカーとマッチャーがどのような位置付けになっているかを客観的にみると、なんとも興味深い構図となり、どんな組織かが理解できる。

「与える」ということがどれほどのカギになるのか、(成功するしないはさておき)理解できてとても面白かった。

■ GIVE & TAKE「与える人」こそ成功する時代



2019.2.3.過去ログ



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