見出し画像

情報化社会宣言・橘川幸夫

情報化社会宣言


 2020年のコロナ情況が引き起こした現象は何か。私達は、何を発見し、何を体験しているのか。その本質に触れない限り、これまでの理論やタイムスケジュールにのるだけの未来しか語れない。新型コロナウイルスは、私たちの歴史に、大きな亀裂を発生させた。この亀裂を勇気をもって飛び越えていかない限り、亀裂以前の社会に滞留するだけで、歴史の流れに取り残されるか、亀裂に墜落するしかない。

 かつて人類は、自然の森や海岸で、自然の恩恵による食料を採取して生き延びていた。やがて密林の中で出会った人と人、家族と家族が関係を築き、共同して大型野獣をハンティングしたり、よりそいながら定住生活に移行した。

 情報化社会とは、コロナ情況以前の、リアルな生活の中で、ビジネスを目的とした開発やコンセプトワークの延長に現れるものではなかった。それは、幻影の情報化社会でしかなく、人々は「参加する」のではなく「参加させられている」社会システムであった。その時代の模索は重要であり、その結果、私たちは多くの使える道具を保有することになった。しかし、そのことが情報化社会の全てではなかった。

 そして2020年コロナ情況は、整理され管理された現実社会を強制的に停止させた。その中で自覚したことは、私たちは、情報化社会の密林の中に、個人として放逐されてしまったということだ。私たちは、密林をさまよい、同じようにさまよっている個人と出会った。

 亀裂の彼方にある本当の情報化社会は、これまでのビジネスモデルや組織形態の延長にあるのではなく、情報化社会の密林の中で、出会った者同士が、新しい村、新しいコミュニティを作り出すことなのであろう。

 そこでは、新しい関係、新しい貨幣、新しい法律、新しい目的、新しい友情、新しいアート、新しいサービス、新しい政治、新しい組織、新しい文学、新しい希望が生まれるはずである。

 2020年の一年は、人類にとって、新しい時代の幕開けとなるであろう。情報密林の中での新しい出会いを狂おしく願う。


ここから先は

0字

¥ 100

橘川幸夫の無料・毎日配信メルマガやってます。https://note.com/metakit/n/n2678a57161c4