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ハチゲキの青空に虹がかかった。


 0.8秒と衝撃。(ハチゲキ)の最初のアルバム「POSTMAN JOHN」が出たのが2009年だから、塔山忠臣と出会ったのは、その1年ぐらい前か。当時、僕は、ロッキング・オンのサイト構築を手伝っていて、そこで、全国の新人バンドの作品参加を募集していて、そこに応募してきたのが、ハチゲキであった。

「POSTMAN JOHN」を聴いて「こりゃあ他のバンドと比べようもなく凄い」と感じて、遠山に直接連絡を入れた。「もっと聞きたいのでアルバムになってたら購入したい」と。遠山から連絡があって、JMと三人で会った。そして、二人の音楽を聞きまくった。下北沢のプライベートライブ、新宿ロフトの初ライブはほとんど観客もなく、ロフトの常連客っぽいのが、ぼーっと見ていた。僕は一人で踊りまくったようなこともあった。

 そして、ハチゲキは日本の音楽シーンを暴走し、周りをなぎ倒しながら壁にぶつかっていった。そのハチゲキが「虹」というコンセプトで復活を遂げた。

『Ecstasy.』

 懐かしさの初体験。ハチゲキは、初期のピュアーな感情爆発から、肉体や存在そのものに爆薬を仕込み、爆発させていく。Ecstasy.も、懐かしい音楽に新しい冒険を加えている。ユーロビート風の音色が優しく身体を包む。そして、JMの懐かしい声。遠山の言葉。

 塔山忠臣は、僕の子どもたちよりも若い。だけど、不思議な同時代人の感覚を持つ。塔山忠臣という名前は、自分の名前ではない。僕も本名は知らない。塔山忠臣は彼の高校時代の親友の名前で、そいつはバイク事故で夭折したと聞いた。その事故以後、彼は、亡くなった親友として生きることを決めたのだ。それは、僕が学生時代に亡くした友人なのかも知れない。

 ハチゲキの初期のライブは、ほとんど通っていたと思う。そこで、若いハチゲキファンの女の子たちとも知り合い、JMのお母さんとも仲良くなった。良い年したおっさんが踊っているのだから変だろうと思うが、あの音楽を生で聴いていてじっとしていられる方が変だ。

 しかし、その頃、僕の体調に変化がおき、何度か原因不明の気絶をした。階段登るだけで目眩がし、ふらふらして日常生活を送っていた。今は、あの頃ほどではないが、昨年は、右目が爆発した。

 ライブにも足が遠のいた頃、遠山とメールしていて、「もう駄目かもしれん」みたいな弱音の話をした。そしたら返事が来て「死んだら、ぶっ殺すぞ」と書いてあった。遠山らしい、やさしさだ。

 さて、新しいバンド名は「虹」だ。虹を見せてくれるのか、虹になるのかは分からない。また老体に鞭打って、彼らの音楽を追いかけてみることにする。しかし、あれから10年が昨日のようだ。これから10年も明日のようだろう。

 初期の名曲に「この世で一番美しい病気」というのがある。好きな曲だ。すべての苦難も、唾棄すべき現実も、面倒なしがらみも、すべては「美しい病気」なんだな。音楽でしか伝えられないものがあることを、僕らはロック音楽から学んだ。音楽を聴くことでしか見ることの出来ない光景というものがあることをロック音楽から学んだ。いつかある橘川の葬式は、宮崎要輔に指示を出しているが、音楽は「FOLK GUERILLA」を中心に編集してくれ。

▼虹についての情報はTwitterの以下のアカウントで。楽曲は、Spotifyなどストリーミングサービスで聴くことが出来る。


なお、はじめて「虹」を聴く方は、0.8秒と衝撃のデビューアルバムから順に通して一度、聴いてみることをおすすめします。どういう回路を彼らが通ってきたか、分かりやすいぐらいに分かるはずです。

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