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転換期ということ

「アパレル業界は、タイタニック号のよう」

カリスマ編集者、軍地彩弓が語る「変わる消費者、変われぬ業界」


 アパレルも出版も同じ問題を抱えていて、それは、ファッションに興味を持たない世代が出てきたとか、若者は本を読まなくなったという表面的な現象ではなく、もっと根本的な問題が露出してきたのだと思う。必要性がなくなったのだ。

 それは、自己表現しなくなった人類の問題である。表現をする必要がなくなった人類の現在、ということでもあろう。近代的自我の方法論の終焉である。

 ファッションも自動車もアートもグルメも、個人にとっては、他者との差別化と、自我確立のための手段であった。それがインターネットという「つながりっぱなしの世界」の環境に人類が突入することによって、差別化や個性化の必要がなくなった。世界が分断されていた時代は、大声をあげたり、特異な衣装や思想で、自分を示すことによっててでしか、多くの他者が振り向いてくれなかった。そういう方法論は終わる。衣装は機能であればよい時代に戻る。

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