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(20)焼きそばパンの逆襲■出会い系スクール


第八章
2003年9月

ボブ 27歳 外資系コンサルティング会社 勤務

■出会い系スクール

 土曜日の午後は桂乃の英語レッスンの日だった。とはいっても高い教材が必要だったり、駅前へ留学するのでもない。費用がかからなくて実践的な英語学習方法がある。日本の在留外国人は毎年増え続け、今は登録されている人だけでも185万人程度の外国人が日本で生活している。ビジネスマンや留学生などさまざまな理由があって日本に来ているのだろう。中にはバックパッカーの途中で日本が気にいってしまった者や、不法入国している者まで、多様である。在日外国人向けのフリーペーパーもいろいろと出ている。そのペーパーのインフォメーションコーナーを見ると、日本人と友達になって日本語を学びたいという記事が結構ある。だいたいメールアドレスが入っているから、あとは直接連絡すればよい。ルームシェアリングと同じ発想である。外国語を学びたい日本人と、日本語を学びたい外国人がメディアを通して出会うことにより、バーターの関係で、お互いのノウハウを交換できるわけである。もちろん日本女性のガールフレンドが欲しいだけの不良外人もいないことはないが、一度会って話せば、だいたいその人のインテリジェンス度が分かると桂乃は思っていた。「出会い系英語スクール」とでも言えばよいのだろう。

 もともと日本で隆盛を極めている英語学校は、こうした外国人を登録して、生徒を紹介することが大きな機能であった。インターネットをはじめとする個人と個人を結ぶ情報回路が出来てしまえば、こうした英語学校の機能は不要になる。いわゆる「中抜け」である。英語だけではなく、世界中の言語や、言語以外のさまざまなノウハウが、こうした、バーター・エクスチェンジ(相互交換)のスタイルになっていくだろう。商品そのものも、もういちど、物々交換の時代へネオテニー(先祖返り)していくのである。

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