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時代質問箱(1)参加型社会とは


インタビュアー=周平

回答者=橘川幸夫

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●参加型社会とは

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周平・参加型社会、という構想が橘川さんの中に生まれたときのことを教えてください。どうしてそんなことを考えられたのか?

橘川: 戦後社会というのは、戦争で焼け野原になった都市の復興から始まった。だから国民の目標は一つだった。「豊かになること」。経営者も労働者も、獲得する目標は違いなかった。国民がみんな同じ方向を向いていたので、組織はピラミッド型になり、メディアは一方向性でよかった。

 ところが高度成長が終わって、一応「豊かな社会」が誕生し、飢えて死ぬ人がいなくなった時に、国民全体の「目標」が失われたわけだ。それと同時に価値観の多様化がはじまるが、それは、社会が目標を設定するのではなく、ひとりひとりが自分の目標を探さなくてはならない時代に大きく転換したわけだ。それが1969年だと思う。

 豊かさを獲得した時に、人は次に何を目標にしたかというと、それは物質的な豊かさではなくて、精神的な幸福なんだと思う。モノは具体的に手に入れるか失うかだけど、ココロは抽象的なので、幸福といっても、ひとりひとり違うんだな。

 メディアは新聞社にしてもテレビ局にしても、一方向性で力のある人(権力者とか資本家とか)のメッセージを放送していたのだが、幸福を求める時代は、そうではなくて、これまで情報の受信者であった個人が、それぞれ発信する必要があると思った。僕は70年代に「逆流の思想」と書いたが、与えられた情報の回路を使って逆流する情報が必要だと思った。

周平・そこで具体的にとりかかったのが、雑誌というメディアの回路を使って、個人から逆流する流れを創ったということ?

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