恋文

手紙が届いた。差出人の名前はない

こんな手紙は何通も届いている。
中身を見るが何時も白紙で
切手も貼られていない。
こんな悪戯はもう見飽きた。
でもなにか書いてあるのではないか。
そう思いながら僕は
少し期待して封筒を開ける。
目を丸くした。書いてあったのだ。
女性らしくない字で書かれた恋文だ

初めて貰った恋文に心を踊らせているが、私には中学から9年間片想いしている人が居る、了承は出来ない。
読み返している時にふと、
書き手が女性では無い事に気が付いた。
一人称が私ではなく僕なのだ。
そんな人も確かに居るが、恋文に書くだろうか。
出す所を間違えたのだろうか。
それなら自業自得だ
返さずに貰っておく。

この手紙は僕の片想い相手に告白する際に参考にしよう。
手紙を何度も読み返すと僕と似たような点が出てきた。
大学に通っていること。
メガネをかけていること。
他にも色々書いてあるがキリがない。
これはもう僕のドッペルゲンガーなのかもしれない。
だとしたらもうそろそろ告白の時期なのだろう。

来月告白しよう。
そう決めたら相当な準備が必要だろう。
心の準備も服装も。
1ヶ月間 友人達に相談を積み重ねてどうにか整った。
もう一度あの日の手紙を見直そうとする。
引き出しを開ける。
クリアファイルを覗く。
ポケットを探る。
どこにも見当たらない。
仕方ない。思い出して便箋に書こう。

そう思い立ち、机に向かう。
スラスラと手が動く。
あの日の手紙と大きさも形も同じ字が現れる。
そうか。あの日の手紙は僕が書いたものなのか。
謎と謎が全て合致した。
切手が貼られていないのは貼らなくても届くから。
宛名がないのは未来の僕がポストに入れといたから。
あの日の貴方は僕だった。

手紙という温もりのあるもので、未来から背中を押した。
この気持ちは何とも伝え難い。
1番近い表現はきっと炬燵だろう。

暖かで優しい感情を貴方が教えてくれた

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?