vs女幹部3

「さあ、早く仲間になりなさい。これ以上情けない姿の魔法少女なんて、誰も見たくないでしょう?」
「ああっ!ぐう…っ」

頭をぐりぐりと踏み続けられ、リリーは屈辱的だった。
全く相手にならない。相手が強すぎる、そして自分が弱すぎる。今まで順調に悪を倒して来たのに。

「それか、もっと楽しませてくれるわけ?」
(こんなところで…終わりたくない…!)

レイの足がどけられたのを確認すると、リリーはゆっくりと立ち上がった。
途中に体が痛み、倒れそうになりながらも。また立ち上がったのだ。

「やーん、やっぱりすごい!それでいて魔法少女よ」

レイはボロボロの彼女を見て、嘲笑した。立っていられるのがやっとの様子だ。少し押しただけでも、まるで倒れてしまいそうなほどに。

「あなたのその目を見ていると、イライラするのよね」

レイは吐き捨てるように言うと、構えた。なんと両手に鞭が握られている。
(今度こそ私を潰すつもりだ…!絶対に負けない!)

鞭が振るわれると、リリーは背後に宙返りをして避けた。と同時に、ステッキを天に掲げる。素早く光の玉を発射した。

「なるほど、天井を壊すとはね」

年季が入って壊れかけの天井に、容易く穴が開く。激しい土煙に紛れ、リリーは大きくジャンプした。そして倉庫の屋根の上へと登ったのだ。

倉庫の上は平らになっており、足元が脆く少し心配になるものの、戦いに支障はないだろう。
周りに街灯はないが、満月が眩しいほどに辺りを照らしていた。すぐ近くに港があるので、特有の海の匂いがした。

(きた!)

リリーの作った穴から、レイも飛躍して後を追って来た。そのタイミングを逃さぬよう、ステッキを振るう。

「だから、甘いのよ。あなたの攻撃は」

レイは体を柔軟にくねらせ、難なく避けてしまう。リリーはさらにステッキを振るおうとした。しかし、体に痛みを感じ、がくっとバランスを崩してしまう。しまった、と思った。

「あっ!」

鞭が体を打つ。しかも一本ではなく、両手の二本だ。

「ああっ!うっ!ぐっ!ああああああっ!」

容赦なく攻撃を繰り返すレイ。限界ギリギリだったリリーの体から、力が抜ける。しかし、倒れるのさえ許されない。絶え間なく打ち付けられる鞭のパワーに、体は揺れながら立たされていた。

「あっ!は…ぁっ!ん!かはっ!」

鞭が止んだと同時に、体が傾く。それを逃さず、片方の鞭がリリーの胴体に絡みついた。

「さあ、ラストスパートよ!」
「んあっ!」

レイは思い切り手を上にする。華奢なリリーの体は、勢い良く宙に飛んだ。
そして今度は、下へと。レイが鞭を振り下ろすと、リリーの体は床を突き破り、倉庫の中へと叩きつけられた。

「がはああっ!」

衝撃的な痛みに、絶叫する。そして今度は、また浮遊。

「きゃああああ!」

天井を突き破り、再び屋根の上へと放り出された。鞭が離れ、体は自由を取り戻したものの、あまりの痛みに全く動けない。
ちょうど落下地点でレイが構えている。分かっているのに、動けない。

「ぐ…は、あっ」

見事なまでに綺麗な、レイの豪快な回し蹴り。頬にヒットした。
そのまま吹っ飛び、倉庫の脇へと落下した。レンガ状の地面に、リリーは成す術なく転がる。

(もう力が…入らない…)

ステッキがすぐ近くに落ちている。が、手を伸ばす力さえない。

「ほんっとうに無様ね」

いつの間にか隣に立っていたレイは、最後のトドメを刺そうと、鞭を向ける。
何の抵抗もできないまま、自分はこのまま死んでいくのか。まさに、絶望。

と、その時だった。

「何よ、こんな時に…」

レイの携帯が鳴り響いた。チッと舌打ちをし、画面に表示された名前を見る。
どうやら、自分より上の者からだったのだろう。鞭を向けたまま、電話に出た。

「何ですか?……ふうん、なるほど。至急ね?このまま獲物を置いて行けと?」

電話を切ると、あからさまに不機嫌そうに髪を搔き上げた。

「命拾いしたわね、リリー。あなたの処理は延期になったわ」
「ああ、んっ!」

乱暴に、リリーの尻を蹴る。それが最後の攻撃だった。
その3秒後、レイの気配は完全にこの場からなくなったのだ。

(負けた…初めて、負けた)

ただただ、悔しさ、惨めさだけがリリーの胸を締め付ける。
次会った時、自分は彼女に勝てるのだろうか。
朦朧とする意識の中、絶望に落ちていった。

#ヒロピン #リョナ #ソフトリョナ #小説
#やられ