『まーごめ180キロ』

 7月6日。言わずと知れたサラダ記念日だが、振り返ってみると、私個人にとってはとてつもなくまーごめな一日だった。

 「まーごめをご存じか?」煮えたぎる熱量を持ったインド映画の大作『RRR』の名セリフだ。私も例に漏れず映画館で鑑賞した。後半の肩車脱走シークエンスが一番好きだ。あの絵面はそうそう見られるものではない。

 私の2023年7月6日は大寝坊をかましてエスキスを飛ばしてしまった失態から幕を開ける。夜な夜な案を練ったのに勿体ないが、いくら後悔をしても時間は遡らない。そこで私は、最近映画を観ていないのが原因ではないかと考えた。映画を観ない奴が映像研究会に居ていいのだろうか、いや別に居ていいのだが、自分自身においてはどうやら虫の居所が良くないようだ。

 京都には映画館がいくつかある。良い都市だ。京都に根城を構えているだけですっかり教養人気分。烏丸通上に見えるは我らが京都タワー。鼻高々。しかしそれは同時に、志の足りぬ怠惰な自分の住処でもあるのだ。そういう自分との戦いのためのリング、京都。外へ出ると南中を終えた太陽がこちらを照らす。吹き出す汗とともにアップリンク京都へと向かう。 

 アップリンク京都は、新風館という施設の地下にあった。案内がやや不親切という点はあったものの、外と繋がったトンネル状通路の空間設計は面白かった。新しい風が前へ後ろへ通り抜ける。内と外を曖昧に。建築学生にとっては耳に銀だこがオープンするほど聞いたフレーズだろう。小ぢんまりとした映画館のロビーはフランス映画とキューブリックを混ぜたダイナーの様で、とても御洒落。

 サンミュージック所属の漫才師ママタルトの大鶴肥満から放たれる「まーごめ」とは何か。辞書的な説明は(この世の全ての辞書が「まーごめ」と書かれた一枚の紙になる前に)各自調べてほしい。『まーごめ180キロ』は体重180キロの大鶴肥満の人生を通して、まーごめのルーツや、彼が如何にしてまーごめの器となったかを描いている。親族との関係や学生時代のいじめ、恋愛、きゅうり。以外に内容はやさしいだけのものではないが、本作を観て可愛そうだと思うなら、それはあなたがそういう人間だということだ。久しぶりに底から笑った。まーごめ。

 もちろん晩ごはんはマクドナルド……ではなくフレッシュネスバーガー。小さい頃にマクドナルドのハンバーガーを戻してしまったのがトラウマで、あれ以来あの店ではソフトクリームしか食べていない。やはりハンバーガーは相応の対価を払って食べるものだ。ごめんね。でも奮発してコーラフロートを頼んだよ。世界で初めて炭酸飲料にバニラアイスをぶち込んで売った人には、多分一生をかけても追いつかないと思う。コロンブスの卵。

 おそらく来週はジブリの新作を観る。情報が何にもないので、楽しみだか楽しみじゃないんだか。

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