米中通商協議、第一段階合意の署名は現実となるか

米中通商協議の第一段階合意の署名に関して、是非が相反する情報が飛び交っている。

中国共産党がもたらす課題に立ち向かう必要=米国務長官

ポンペオ米国務長官は30日、中国共産党は「世界制覇」に照準を置いていると批判し、中国政府がもたらす諸課題に米国を含む世界は立ち向かう必要があるとの見解を示した。

前週のペンス米副大統領の中国に関する演説と同様、強硬姿勢を打ち出した。
米保守系シンクタンク、ハドソン研究所の夕食会に向けた講演でポンペオ氏は、米国は長年、中国の人々と友好を温めてきたが「現在の中国共産党政府は中国国民と同一ではない。中国政府が用いている、あるいは用いようとしている手法は米国や世界に課題をもたらしてきた。われわれ全員が集団として、このような課題に真っ向から立ち向かう必要がある」とした。
また、米中両国の制度間の「根本的な違いやそれが米国の国家安全保障にもたらす影響を見過ごすのはもはや現実的ではなくなった」と訴えた。
トランプ大統領は就任初日から中国について警鐘を鳴らしてきたとし、「われわれはようやく、米国や米国の価値観に対して共産党がどれだけ敵対的であるかについて認識しつつある。これが可能となったのはトランプ大統領のリーダーシップのおかげだ」と大統領を持ち上げた。
ポンペオ氏は今後数カ月間で、中国共産党の情報機関による世界的な影響力拡大への動きや中国政府の「不公正で略奪的な」経済慣行を含む、相反するイデオロギーや価値観について何回かにわたって講演する予定だと明らかにした。

「中国共産党はマルクス・レーニン主義の政党で、『闘争』と世界制覇に照準を置いている。指導部の言葉を聞けば明白だ」とした。さらに、中国の軍事力は「自衛に必要な範囲を大幅に超える」まで増強されていると語った。
ポンペオ氏は一方、米国は中国との対立は求めておらず、透明性と公平な競争環境が確保された、互恵的で市場原理に基づく体制へと中国が変わるのを望んでいるとした。米中通商交渉の「第1段階」の合意に、その体制に向けた第一歩が含まれる可能性があると語った。
「第1段階」の米中通商合意文書への署名は11月にチリで開催が予定されていたアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議に合わせ行われる計画となっていたが、チリ政府はこの日、APECの開催を断念すると発表。ただ、ホワイトハウスは、文書への署名が来月行われると引き続き想定していると表明した。[
中国外務省報道官は定例会見で、ポンペオ長官の発言について「一部の米国の政治家の政治的な偏りと悪意ある反共産主義的な見方」が露呈したと発言。

「ポンペオ氏の発言は、中国共産党と中国政府に対する悪意のある攻撃だ。党と人民の間にくさびを打ち込み、中国の国内・対外政策を中傷するものだ」と述べた。

米農産品購入実現に向け、追加関税撤廃は可能=中国貿易団体トップ

中国商務省管轄下の貿易団体のトップは、米中通商問題を巡り、中国の輸入業者による最大500億ドルの米農産品購入を容易にするため、昨年から課している追加関税を撤廃することは可能との認識を示した。

トランプ米大統領は今月、中国が通商部分合意で年間400億─500億ドルの米農産品購入を約束したと述べた。
ただ、中国は市場情勢に基づいた購入を望んでおり、この要求が交渉の難航を招く主な要因になっている。

中国食品土畜輸出入商会のCao Derong会長が30日夜、ロイターのインタビューで「政府にできるのは追加関税を撤廃することで、双方がそうする必要がある。企業には自らの考えや市場ルールに基づいて購入させるべき」と述べた。

そうすることにより、企業に一定期間に決められた金額の購入を強いるよりも、「便利」で「良好な」貿易環境に向けた状況づくりができると強調した。
中国食品土畜輸出入商会は、国内の主要食糧会社やカーギルなど世界的な貿易会社の中国法人が会員に名を連ねる有力貿易団体。

同会長は「追加関税が撤廃されれば、貿易は通常の状態に戻り、企業は市場情勢に基づいた購入が可能になる」と述べた。
また、中国は市場に基づいて購入を増やせるが、400億─500億ドルの目標は非常にハードルが高く、達成は保証できないと述べた。

米中通商合意、来月の調印を楽観=中国国務院顧問

中国国務院(内閣に相当)の顧問を務める朱光耀氏は、米中通商協議について、両国が外交ルートを通じて今後も緊密に連絡を取り合えば、「第1段階」の通商合意文書に来月調印できるとの見通しを示した。

トランプ米大統領は、11月16─17日にチリで開催予定だったアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議にあわせて、中国の習近平国家主席と会い、「第1段階」の米中通商合意文書への署名を行うことを望むとしていたが、チリ政府は反政府デモが続いていることを踏まえ、同首脳会議の開催を断念した。
朱氏はシンガポールで開催されたフォーラムでロイターに「相互信頼と相互利益(の原則)に基づき、両国が大きな成功を収められると信じている」と述べた。
朱氏は財政次官として、米国との通商協議に直接関わったが、2018年に引退した。

中国商務省は31日、中国と米国は従来の計画通りに二国間の通商交渉を継続するとした上で、交渉は順調との見解を示した。
同省の声明によると、両国は引き続き緊密に連絡を取り合っており、双方の交渉責任者は11月1日に電話協議を行う予定。

フォーラムを共同主催した政府系シンクタンク、中国国際経済交流センターの魏建国・副理事長もロイターに「チリでのサミット中止は米中貿易合意に全く影響を及ぼさない」とし「米中首脳が調印するための選択肢はたくさんある。中国や米国、もしくはシンガポールのような第3国で調印が可能だ」と述べた。

米中、計画通りに通商交渉継続へ 1日に電話協議=中国商務省

中国商務省は31日、中国と米国は従来の計画通りに二国間の通商交渉を継続するとした上で、交渉は順調との見解を示した。

同省の声明によると、両国は引き続き緊密に連絡を取り合っており、双方の交渉責任者は11月1日に電話協議を行う予定。

総括

重要イベント前はこのようにあらゆる情報が飛び交うのが常である。
ニュース発信業者からすれば、ページビューが稼げるからだ。

業者の意向に騙されず、冷静に状況を判断していく必要がある。

米中通商協議の交渉状況は、APECがなくなったものの米中ともに11月に署名する意向を示しているため、これまで揉めに揉めたような問題はないように思える。

注意すべきは各国経済指標と、盛り上がりつつあるトランプ大統領の弾劾であろう。

これらは今市場に折り込まれておらず、常に売る理由を探している市場の格好の的となる可能性がある。

出典

ロイター 10/31 中国共産党がもたらす課題に立ち向かう必要=米国務長官

ロイター 10/31 米農産品購入実現に向け、追加関税撤廃は可能=中国貿易団体トップ

ロイター 10/31 米中通商合意、来月の調印を楽観=中国国務院顧問

ロイター 10/31 米中、計画通りに通商交渉継続へ 1日に電話協議=中国商務省