【3/24】そんなにEUが嫌ですか?-英国EU離脱問題
ここ最近市場は安定していますが、一気にリスクオフへのいざなう心配事はまだまだ残っています。
その一つが英国のEU離脱問題です。
■国民投票が開催される
EU離脱の是非を問う国民投票が6月23日に英国で開催されます。
6月23日にEUの未来が決まるといっても過言ではありません。
■なぜEUを離脱するのか
英国はなぜEUを離脱したいのか。それは「もっと自由に発言し、もっと自由に通貨を使いたい」からです。
もともと英国はEUに加盟しながら、EUとは一歩下がった態度をとっています。
通貨はEUの共通通貨であるユーロではなく独自通貨であるポンドを公用しており、更に国境を廃止するシェンゲン協定に加盟していないため入国手続きが必要です。
このような態度の背景に「大英帝国のプライド」と「ドイツ、フランスとの対立」があります。
英国は産業革命時代、産業、金融すべてにおいて世界を牽引していました。
世界の共通言語である英語の「英」が英国の「英」であることから、その影響力がうかがえますね。
「誰の指図も受けない」そんなプライドが今も根付いているのです。
(認めないでしょうけどね)
また、ドイツとフランスとの対立も影響しています。
ヨーロッパの歴史=戦争の歴史といっても過言ではないようにヨーロッパはどこもかしこも戦争ばかりしていました。
民族意識が強く、他国の国民を人間と思っていないほどでした。
人と人がいがみ合い、過剰に戦乱を繰り返したことにより国力がどんどん低下していき、世界のリード役をアメリカに抜かれる羽目になったのです。
EUはそんな歴史を、戦争の歴史を断ち切るために発足されました。
しかし、人間の性根はなかなか改善しません。
心の奥底では「同じにされたくない」という感情があるのでしょう。
そんなこんなで、英国はEUに加盟しながら浮いた存在になったのです。
最後に、離脱したい一番の理由は「移民を受け入れたくない」からです。
昨年、シリア内戦の泥沼化で難民が大量に押し寄せるよう欧州になだれ込んできました。
欧州諸国は積極的に難民を受け入れていますが、英国は違います。
労働面にしても治安面にしてもこれを拒否する態度をとっており、ついにEUの首脳会議で移民労働者への社会保障の一部制限など、英国がつきつけた残留条件に大幅譲歩するかたちで改革案を合意しました。
■英国の存在は強大
英国はEUの中でもトップレベルの経済大国です。
そのため、英国が離脱してしまうとEUの体制を維持するために最も重要な経済支援(加盟負担金収入)の後ろ盾を失うことになります。
EUを運営するための税金的なものが減ってしまうのです。
また、英国は欧州を代表する国の一つであるため、英国が加盟していないEUなんて「欧州連合」でもなんでもないと思われ、その影響力がなくなってしまいます。
早くもEU側の英国への説得が始まっています。
■英国にもデメリットが
EUを離脱しますと、当然ながらEU加盟国への発言権は喪失します。
去ったものに言われる筋合いはないですからね。
輸出特権も喪失します。
EU加盟国同市の貿易に関税がかかりません。
英国の輸出先はEU加盟国が約半分なのでコストが一気にかかるようになってしまいます。
そして、金融業界にも影響があります。
ロンドン市場はグローバルな金融市場のなかでもひときわ際立った存在です。
いまだに世界の金融の中心として君臨しています。
その市場参加者には外国の参加者が多いです。
EUを離脱した後、その存在感を維持できるか、外国参加者を囲い込めるかは誰にもわかりません。
■波及する独立の流れ
EU離脱が成立すると、独立の動きが強まるでしょう。
そうなるとデメリットがあるのは実は英国自身です。
昨年はスコットランドが英国から独立する国民投票が開催されました。
結果は残留が多数となり、今に至りますが再び独立の動きが強まるでしょう。
スペインのカタルーニャ州などその他の独立をもくろむ地域の起爆剤となりえます。
■是非は拮抗状態
世論調査の結果は五分五分で、国民の20%ほどが態度を決めかねているという状況です。
拮抗しているとはいえ、残留が若干上回っているようですが、事態は変わりつつあります。
先のベルギーのテロにより、移民問題が表面化し、離脱の流れに向きつつあります。
余談をまったく許されない状況です。
■英国人のアイデンティティ
私見としましては、結局離脱しないのだと思っていますが、正直わからないというのが本心です。
英国人のアイデンティティは日本人に理解できません。
英国人の気持ちが高まってしまうと離脱もあり得るでしょう。
現在は取引市場ものんびりしていますが、6月に近づくにつれ、緊張の展開となることが予想されます。
そうなる前に準備しておくことが大切です。
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