対中関税「第4弾」、米追加利下げの期待と中国の報復は

米国株式市場は続落し、ダウ平均株価(.DJI)は98ドル安で取引を終えた。
トランプ米大統領が前日、対中関税の「第4弾」を発表したことが引き続き嫌気され、この日も売りが先行。
ダウ平均は一時300ドル超値下がりする場面も見られた。ただ引けにかけて下げ渋る展開となった。

早くも追加利下げを織り込みだす

ダウ平均とS&P総合500種指数(.SPX)は6月下旬以来の安値を付けた。週間ではS&Pとナスダックが昨年12月以来の大幅な下げを記録した。
今週は米連邦準備理事会(FRB)が10年半ぶりの利下げに踏み切る中、パウエルFRB議長は長期の利下げ局面入りを否定。
さらにトランプ氏は9月1日から3000億ドル分の中国製品に10%の追加関税を課す考えを明らかにした。
キーターグループ(マサチューセッツ州)のマネジングディレクター、マシュー・キーター氏は「トランプ氏の通商政策がFRBに追加利下げを行う環境を提供している。市場はトランプ氏のタカ派ツイートで値下がりしている」と述べた。
注目された7月の雇用統計は、非農業部門雇用者数の伸びが鈍化する一方、賃金は緩やかに上昇した。
非農業部門の雇用者数は16万4000人増と、ロイターがまとめたエコノミスト予想と一致。時間当たり平均賃金は2カ月連続で前月比0.3%(8セント)上昇した。

7月の米雇用統計では非農業部門雇用者数の伸びが鈍化し、米中貿易摩擦の高まりと共に来月の追加利下げを後押しする可能性があるとの見方が出ている。

実際、金融市場ではFRBが9月の次回連邦公開市場委員会(FOMC)で追加利下げを決定するとの観測はほぼ完全に織り込まれており、ドルは円(JPY=)に対し0.76%下落し、1月3日以来の安値を付けた。ユーロ(EUR=)に対しては0.22%安、スイスフラン(CHF=)に対しては0.83%安となった。

中国は報復のかまえ

中国の国連大使に着任した張軍氏は2日、米国が通商面で中国と争うことを望むなら、中国側にも争う意思があるとし、米国の対中追加関税に対抗措置を取る用意があると述べた。
トランプ米大統領は1日、3000億ドル相当の中国製品に対する10%の制裁関税を9月1日付で発動させると発表。これについて張氏は国連本部で記者団に対し「理不尽で無責任」な決定とし、「中国の姿勢は非常に明確だ。米国が協議を望めば協議するし、争いたいのなら争う」と指摘。「基本的な権利を守るために必要な対抗措置を取るつもりだ。正しい方法で正しい解決策を見つけるために正しい軌道に戻るよう米国に求める」と語った。
米中の通商関係が北朝鮮問題での両国間の協力に影響を及ぼすかとの質問に対しては、現時点で予想するのは難しいとしながらも、「一方ではパートナーの協力を仰ぎ、他方ではパートナーの利益を阻害するということを想像するのは難しい」と指摘。「北朝鮮に対する制裁措置を維持しながら、同国にできるだけのことを実施するよう要請することはできない」とし、「適切な時期に」制裁が緩和される必要があると述べた。ただ中国は緩和すべき時期についてはまだ何も決めていないと述べた。

張氏はこのほか、新疆、チベット、香港などへの内政干渉は認められないとしたほか、混沌かつ暴力的となった香港デモの継続も看過できないとした。

トランプ氏は、通商協議で事態打開に向け中国にはやるべきことが多いという認識を表明、「ただ同一内容の合意を中国と交わすわけには行かない。中国とより良い内容で合意する必要がある」と記者団に語った。
カドロー米国家経済会議(NEC)委員長は記者団に、関税に伴う消費者への影響は最小限にとどまる見通しを示した。フォックス・ビジネス・ネットワークに対し、トランプ氏は中国との通商協議の進展に満足していないとも指摘した。

総括

トランプ大統領は、自らが課した関税は中国が支払うと述べているが、中国の報復により農業品は値上がりしており、また追加関税により与えられた経済的打撃により輸入品の売上が減る。
アップル製品など中国の売上が大きい企業にとって影響は大きい。

また、株式市場も冷え込んでおり、世界的に株価はさらに下落するだろう。

但し、トランプ大統領の言動にはパターンがあり、
自国の株価がピーク→中国へ制裁
自国の株価が下落 →歩み寄りをアピール
自国の株価が底打ち→制裁緩和
自国の株価上昇  →中国への不満
というサイクルである。

しばらくはこのサイクルに乗れば、これまでのようにトランプ大統領に振り回されることを防ぐことができるが、問題はもっと根深い。

米中貿易戦争が解決しない限り正常な為替の値動きには戻らない。

米中貿易戦争が激化すると、金融市場は米利下げを期待し始める。思惑で為替が動くので、実態経済と乖離がうまれる。

また、この頃の企業決算をみていると、米中貿易戦争の影響により、企業収益を悪化させている企業が多々ある。
言い訳に使っているところもあるかもしれないが、時が進むとさらに収益が悪化するのは容易に想像できる。
世界経済の混乱は、この時にピークに達すると予想する。

そのため、
長期的には世界経済混乱に備え、
中期的には上記トランプ大統領のサイクルに合わせ、
短期的には中国の報復の有無、
に気をつける必要がある。

最も今回の貿易戦争は、世界の覇権を争い実態経済への影響を無視した、まさに戦争だ。
被害が拡大せずに集計することを願うばかりだ。

今週は企業決算がピークになるのと、以下のイベントが控えており、かつ夏休み前という、まさに夏枯れ相場の様相なので注意。

8/5(月)
🇺🇸ISM非製造業景況指数
8(木)
🇨🇳中国貿易収支
9(金)
🇯🇵先物・オプションSQ日

出典

NYダウ続落98ドル安、米中摩擦激化を懸念

中国、米の対中追加関税に対抗措置の用意=張軍国連大使

ドル広範な通貨に対し下落、9月追加利下げ観測高まる=NY市場

アングル:ハイテクから農業まで、トランプ関税による影響は