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【3/10】ECB大胆な追加緩和を発表も株価は急反落、なぜ?

欧州中央銀行(ECB)は10日、主要3金利の一斉引き下げや月額の資産買い入れ枠拡大を含む一連の追加緩和策を発表しました。

景気を支援するとともに、低インフレの定着回避を狙います。


■政策を総動員

10日実施を決めた追加金融緩和は、

①予想されたマイナス金利幅の拡大に加え、

②市場調節金利の「ゼロ金利」化や、

③量的緩和の拡大など、

政策を総動員する内容でした。事前予想を超える緩和政策を打ち出しました。

その内容をみていきましょう。


■主要政策金利の引き下げ

主要政策金利のリファイナンス金利を予想外に0.05%から0.00%に引き下げました。

上限金利の限界貸出金利も0.30%から0.25%に引き下げました。

下限金利の中銀預金金利はマイナス0.30%から、市場予想通りマイナス0.40%に引き下げました。

もともとマイナス金利幅の拡大に加え、追加利下げにゼロ金利化と、これだけでも大胆な打ち出しですね。


■量的緩和の拡大

資産買い入れ規模を月間600億ユーロから800億ユーロに拡大します。

買い入れ額は、市場予想の700億ユーロを上回りました。

資産買い入れの期限は2017年3月となっています。


■投資適格級ユーロ建て債券を買い入れ

これに加え、圏内の金融機関以外の企業が発行する投資適格級ユーロ建て債券を買い入れ対象に加えます。

また新たに6月から期間4年の条件付き長期資金供給オペ(TLTRO2)を4回実施することも決めました。

TLTRO2の金利は、今回ゼロまで引き下げられた主要リファイナンシング・オペ(MRO)金利が適用されました。

しかしより多くの融資を実施する銀行はさらに優遇し、最大で中銀預金金利と同水準まで金利を引き下げるとしました。

金利調整に加え、量的緩和と豪華で大胆な金融政策の発表により、ユーロ株は急騰しましたが・・・


■追加利下げの否定

ドラギ総裁は「本日の観点、およびわれわれの措置が成長やインフレにもたらす支援を勘案すると、一段の金利引き下げが必要になるとは思わない」とし、追加利下げの可能性は低いとの考えを示したことで株価は急反落しました。

「政策を出し尽くした」と判断され、失望されたのです。

予想を下回る追加緩和策で失望を誘った昨年12月と同様、ドラギ総裁は市場との対話に再び失敗したとの批判も上がりました。

市場を落ち着かせるには、多少のリップサービスも必要なようですね。


■銀行システムへの影響

総裁は「銀行システムに何ら影響を及ぼすことなく、望むだけマイナス幅を拡大できるのか。答えは『ノー』だ」とも指摘しています。

欧州の銀行と言えば、今年始まって金融システム崩壊懸念が勃発し、暴落の一要因となりました。

中央銀行に預金をすると金利をとられるマイナス金利の拡大は、銀行経営を圧迫して逆に貸し出し余力を奪うリスクがあるため、銀行業界は「経済にむしろマイナス」と懸念あります。

これはマイナス金利を導入した日本にも言えます。

欧州の金融システムを混乱の原因とならなければ良いですが・・・。


■政策の内容はすばらしい

ドラギECB総裁は理事会後の会見で「(低インフレの)二次的影響を回避することが極めて重要」と強調。

包括的な追加緩和策を決定したのは、異例の低インフレが経済全般に波及するのを防ぐためと説明しました。

追加利下げの可能性をちらつかせたことにより市場の失望を買ったかたちとなりましたが、非常に大胆な金融緩和ですので、欧州経済にとってはプラスとなるでしょう。

但し、マイナス金利拡大による銀行、金融システムへの影響が気になるところです。

中国、原油に意識を奪われがちですが、欧州金融システムへの警戒も注視しておいて損はなさそうです。