世界の不確実性は増大、終わる兆しの見えない不安
米国株式市場は大幅高で取引を終えた。債券上昇の一服に加え、ドイツの財政出動を巡る報道が株式市場への資金回帰につながった。
世界の不確実性は大きく増大、終わる兆しが見えない
主要3株価指数は上昇したが、週間では3週連続で下落した。米中貿易摩擦の激化や地政学的な緊張感、債券市場を発端とする景気減速懸念の高まりなどが市場を揺さぶった。
シュピーゲル誌は16日、ドイツの連立政権が、景気後退に陥った際に備え財政均衡ルールを撤廃し、新たな借り入れを行う用意を整えると報道。ドイツ経済が景気後退を回避するとの期待が広がり、世界的な景気減速懸念が後退した。
レノックス・ウエルス・アドバイザーズのデービッド・カーター最高投資責任者(CIO)はシュピーゲル誌の報道について「素晴らしいニュース」としながらも、「最終的には不確実性を生み出し、市場を軟化させる可能性がある」と指摘。「世界の不確実性は大きく増大しており、終わる兆しが見えない」と述べた。
報道を受け、米10年債利回りは3年ぶりの低水準から上昇。金利動向に敏感な銀行株(.SPXBK)が2.6%高となった。
S&P11業種全てが上昇。工業(.SPLRCI)、情報技術(.SPLRCT)、金融(.SPSY)が最も上昇した。
トランプ大統領、中国が関税を負担、物価は上昇
トランプ米大統領は15日、ニューハンプシャー州マンチェスターで行った選挙集会で、自身の経済運営や中国との貿易戦争を巡る対応を正当化する姿勢を示した。
このところのリセッション(景気後退)懸念で、経済を再び偉大にしたというトランプ氏の再選に向けた主張に疑問が生じている。
ニューハンプシャー州は2016年の大統領選でトランプ氏が共和党候補指名を獲得するにあたり重要な役割を担った州で、来年の再選の鍵となる可能性がある。
トランプ氏は、米中通商問題について、9月の協議再開予定を前に両国は依然として合意には程遠いものの、中国に圧力をかける自身の戦術は機能していると主張。中国人民元の下落はやがて中国に「大きな打撃を与え」、譲歩を余儀なくするとし、「彼らは合意するだろう」と語った。
多くのアナリストは、トランプ氏が導入した対中関税がコストを押し上げ、消費者に転嫁されることから米経済の減速につながっているとみている。しかし、トランプ氏はこの見方を否定。「(中国が)関税を負担している。物価は上昇していない」と語った。
また、20年の大統領選で民主党候補が勝利した場合、増税につながると警告。16年に自身が勝利していなければ市場は崩壊していただろうとし、20年に再選されなれば、市場は崩壊すると述べた。
民主党候補の指名争いに関してはバイデン前副大統領が勝利するだろうとした上で、誰が勝利しても関係ないとの認識を示した。
トランプ氏は米経済を巡る問題については、利下げに消極的な連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長に責任があるとの見解を示している。ニューハンプシャーに向かう前にニュージャージー州モリスタウンで記者団に対し「パウエル氏は利下げするべきだ」と述べた。
総括
中国への追加関税第4段に対する市場の反応は、トランプ大統領の想定を上回っている。
ダウ平均は14日に3%下落という混乱が生じ、その後トランプ大統領は国内金融大手3社のトップと電話で協議した。
これは明らかな焦りである。
逆イールド現象、ドイツや他新興国の弱い経済指標を受けて、世界は景気後退に恐怖しはじめているが、これの根本は中国での売上の減少である。
もちろん、中国自身の成長鈍化もあるが、追加関税が重しとなっている。
この実態を無視して、トランプ大統領はFRBの金利政策を避難している。
だが、FRBが利下げしたところで上述の根本原因が解消されないので、市場の心理や実態経済は改善してくれない。
ナショナリズム観点ではそうかもしれないが、ナショナリズムを突き詰めた結果、世界経済が回らなくなり始めてきたのだろう。
米中通商協議を8月中に実施するとのことだが、
ポイントは追加関税第4段の廃止、米農産物の中国の購入、ファーウェイの取引再開。
これらがポジティブな結果となれば、市場心理も改善されると予想する。
出展
ロイター 8/16 トランプ大統領、米経済・中国への対応を正当化 選挙集会で
ロイター 8/17 米国株は大幅高、ドイツ財政出動巡る報道で資金回帰
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