日商簿記範囲外のEX論点【債権・債務③】~コマーシャル・ペーパー~

日商簿記3級から1級の範囲外の論点、および範囲内ではあるものの出題率の極めて低い論点を紹介します。
基本的に、公認会計士・税理士等で紹介されるような論点となります。
なお、論点に対しての適用指針等は紹介しません。

今回は、債権・債務の論点から「コマーシャル・ペーパー」を紹介します。




1.コマーシャル・ペーパー

概要

コマーシャル・ペーパー(通称:CP)とは、企業が短期(1年未満)の資金調達の為に発行する、無担保の約束手形のことです。
短期社債とも呼ばれることがあります。

コマーシャルペーパーは、現金同等物として扱われます。


発行者側の仕訳

発行時の仕訳

現金預金  XXX / コマーシャル・ペーパー  XXX

コマーシャル・ペーパーは割引方式での発行となる為、償却原価法を適用し、償却原価コマーシャル・ペーパー勘定(流動負債)を計上します。

期末時の仕訳

コマーシャル・ペーパー利息  XXX / コマーシャル・ペーパー  XXX

期末時の処理は、償却原価法を適用する資産・負債に準じます。
ただし、償却額はコマーシャル・ペーパー利息勘定(営業外費用)を計上します。

償還時の仕訳

コマーシャル・ペーパー利息  XXX / コマーシャル・ペーパー  XXX
コマーシャル・ペーパー  XXX / 現金預金  XXX

償還時の処理は、償却原価法を適用する資産・負債に準じます。


取得者側の仕訳

取得時の仕訳

有価証券  XXX / 現金預金  XXX

取得者側も同様に、償却原価法を適用し、償却原価有価証券勘定を計上します。
コマーシャル・ペーパーは金融商品取引法上の有価証券に該当する為です。

期末時の仕訳

有価証券  XXX / 有価証券利息  XXX

期末時の処理は、償却原価法を適用する有価証券に準じます。

償還時の仕訳

有価証券  XXX / 有価証券利息  XXX
現金預金  XXX / 有価証券  XXX

償還時の処理は、償却原価法を適用する有価証券に準じます。


2.例題

(1)コマーシャル・ペーパー

以下の取引について、仕訳を示しなさい。

①X1年3月1日に、A社は資金調達のため、コマーシャルペーパー(額面70,000円、満期日はX1年4月30日)を68,800円で発行し、これをB社が取得した。

≪発行者側≫

現金預金  68,800 / コマーシャル・ペーパー  68,800

≪取得者側≫

有価証券  68,800 / 現金預金  68,800

②期末を迎えた為、償却原価法による償却額を計上する。

≪発行者側≫

コマーシャル・ペーパー利息  600 / コマーシャル・ペーパー  600

償却額600 = (額面70,000 - 発行価額68,800) × 1ヵ月 / 2ヵ月

≪取得者側≫

有価証券  600 / 有価証券利息  600

償却額600 = (額面70,000 - 発行価額68,800) × 1ヵ月 / 2ヵ月

③満期日を迎えたので、コマーシャルペーパーを償還した。

≪発行者側≫

コマーシャル・ペーパー利息  600 / コマーシャル・ペーパー  600
コマーシャル・ペーパー  70,000 / 現金預金  70,000

≪取得者側≫

有価証券  600 / 有価証券利息  600
現金預金  70,000 / 有価証券  70,000


3.余談

コマーシャル・ペーパーは短期の資金調達手段として運用されますが、無担保であるため、ある程度信用のある企業でなければ発行ができません。


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