日商簿記範囲外のEX論点【債権・債務①】~現先取引~

日商簿記3級から1級の範囲外の論点、および範囲内ではあるものの出題率の極めて低い論点を紹介します。
基本的に、公認会計士・税理士等で紹介されるような論点となります。
なお、論点に対しての適用指針等は紹介しません。

今回は、債権・債務の論点から「現先取引」を紹介します。




1.現先取引

概要

債券等を一定期間後に一定の価格で買い戻す、もしくは売り戻すことを条件に売買を行う取引を現先取引(条件付売買取引)と呼んでいます。

現先取引は、債券等を売却・購入しても、一定期間後に買い戻す・売り戻す以上、権利の支配が完全に移転したとは認められません
そのため、債券等の売買取引として処理せず、資金取引(借入や貸付)として処理を行います。

なお、期間は短くて1日、長くて数ヶ月程度の為、売り手側は短期の資金調達手段、買い手側は短期の資金運用手段として主に金融機関が利用しています。


債券の売り手側の仕訳

売却時の仕訳

現金預金  XXX / 短期借入金  XXX

債券売却時の金額は、現物価額(スタート価額)で計上します。

なお、売却時に利息を計上する場合は、短期借入金は先渡価額で計上します。

買戻し時の仕訳

短期借入金  XXX / 現金預金  XXX
支払利息   XXX /

買戻し時の現金預金の金額は、先渡価額(エンド価額)で計上します。
短期借入金はそのまま現物価額で計上し、差額は支払利息で計上します。


債券の買い手側の仕訳

購入時の仕訳

短期貸付金  XXX / 現金預金  XXX

債券売却時の金額は、現物価額(スタート価額)で計上します。

なお、購入時に利息を計上する場合は、短期貸付金は先渡価額で計上します。

売戻し時の仕訳

現金預金  XXX / 短期貸付金  XXX
         / 受取利息   XXX

売り戻し時の現金預金の金額は、先渡価額(エンド価額)で計上します。
短期貸付金はそのまま現物価額で計上し、差額は受取利息で計上します。


2.例題

<1>現先取引

以下の取引について仕訳を示しなさい。 (単位:円)

①A社は4月1日に、その他有価証券(帳簿価額48,000円、時価51,000円)をB社へ売却し、代金は現金で受け取った。
また、売却時に当該有価証券を6月30日に買い戻す契約を締結した。
当該有価証券の現物価額は50,000円、先渡価額は53,000円である。

≪債券の売り手側≫

現金預金  50,000 / 短期借入金  50,000

≪債券の買い手側≫

短期貸付金  50,000 / 現金預金  50,000

②満期日を迎えたので、現先取引を終了し、有価証券と現金の決済を行った。

≪債券の売り手側≫

短期借入金  50,000 / 現金預金  53,000
支払利息    3,000 /

≪債券の買い手側≫

現金預金  53,000 / 短期貸付金  50,000
          / 受取利息   3,000




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