日商簿記範囲外のEX論点【債権・債務⑧】~ローン・パーティシペーション~

日商簿記3級から1級の範囲外の論点、および範囲内ではあるものの出題率の極めて低い論点を紹介します。
基本的に、公認会計士・税理士等で紹介されるような論点となります。
なお、論点に対しての適用指針等は紹介しません。

今回は、債権・債務の論点から「ローン・パーティシペーション」を紹介します。




1.ローン・パーティシペーション

概要

ローン・パーティシペーション(Loan Participation、ロンパ、以下LP)は、金融機関等からのローンを維持させた状態(権利義務関係を移転させない)で、そのローンに係る利息等の経済的利益と貸倒等のリスクを、元々の債権者から参加者(投資家)に移転させる契約のことです。
貸出参加と呼ばれることもあります。

具体的には、投資家に対して

  • 金利支払請求権

  • 元本返済請求権

という二つの権利を売却し、参加者はその対価として債権者へ金銭を支払うことで、利益の分配に参加することができます。

LPは債権流動化の手段であり、債権者は貸出債権の売却によって、リスクの低減等のメリットを享受できます。


原則と容認規定

原則として、貸付債権の消滅は認識しません
債権者と債務者の権利義務関係は移転しておらず、債権譲渡とみなす事が出来ない為です。

ただし、経済的利益とリスクのほとんどが参加者に移転しているといった、一定の要件を満たしている場合は、当該貸付債権の消滅を認識させることが経過措置として容認されています。


原債権者側の仕訳

LPの会計処理は、「原則法」および「容認規定」の2通りあります。

契約締結時の仕訳 (原則)

現金預金  XXX / 借入金  XXX

先述した通り、原則貸出債権の消滅は認識しません。
LP契約時は、債権の譲渡価額借入金勘定を計上します。
投資家からの借入として認識します。

実施時の仕訳 (容認)

現金預金   XXX / 貸付金  XXX
債権売却損  XXX /
          
or
現金預金  XXX / 貸付金  XXX
         / 債権売却益 XXX

容認している方法を採用する場合は、貸付金の価額債権の譲渡価額の差額で、債権売却損益勘定をを計上します。


2.例題

(1)LP

以下の資料に基づいて、仕訳を示しなさい。

  • A社は、当期以前からB社に300,000円を貸し付けている。

  • 上記債権のうち40%について、一定の要件を満たした参加者とローン・パーティシペーション契約を締結し、対価として135,000円を受け取った。

  • 上記貸付金の40%は、債権の消滅を認識できる一定の要件を満たしている為、債権譲渡として処理することが出来る。

①契約締結時のA社の仕訳を示しなさい。

≪原則≫

現金預金  135,000 / 借入金  135,000

≪容認≫

現金預金  135,000 / 貸付金    120,000
           / 債権売却益  15,000

①貸付金120,000 = 貸付金300,000 × 40%
②債権売却益15,000 = 対価135,000 - 貸付金120,000

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