日商簿記範囲外のEX論点【棚卸資産①】~小売棚卸法~
日商簿記3級から1級の範囲外の論点、および範囲内ではあるものの出題率の極めて低い論点を紹介します。
基本的に、公認会計士・税理士等で紹介されるような論点となります。
なお、論点に対しての適用指針等は紹介しません。
今回は、棚卸資産の論点から「小売棚卸法」を紹介します。
1.小売棚卸法
概要
小売棚卸法は、購入時に商品を売価で計上する、商品売買における記帳方法の一つです。
百貨店等の大量の商品を扱う業態で利用されることが多いようです。
なお、小売棚卸法は売価で記帳する関係上、仕入原価および売価が固定されていなければ、適用することはできません。
仕訳
購入時の仕訳
上述の通り、購入時は売価にて商品勘定を計上し、原価と売価の差額を商品販売益勘定にて計上します。
※仮に、原価割れ(売価<原価)を起こしてしまった場合は、商品販売損勘定を計上することになります。
売却時の仕訳
既に売価で商品を計上している為、売却時に利益を認識することはありません。
期末時の仕訳
決算整理仕訳として、期首商品に含まれている繰延販売益勘定(商品勘定から控除)を商品販売益勘定へ振り替え、期末商品に含まれている商品販売益勘定を繰延販売益勘定に振り替えることで、当期の利益額を算定します。
三分法における、繰越商品と仕入の決算整理仕訳と同一の性質を持ちます。
仕訳(値引・返品)
仕入返品時の仕訳
売上返品時の仕訳
いずれも、仕入時・売上時と逆の取引を行います。
仕入値引時の仕訳
売上値引時の仕訳
値引きの場合は、原価が変動する為、商品販売益原価と売価の差額である商品販売益を増減させます。
ただし、仕入値引の際に売価変更が行われた場合は上の仕訳を、行われなかった場合は下の仕訳を使用します。
※なお、売価変更が行われた際の仕訳は、下記仕訳を省略したものとなります。
2.例題
<1>小売棚卸法
以下の取引について、仕訳を示しなさい。 (単位:円)
なお、商品の記帳方法は小売棚卸法を採用しており、売価は必ず原価の120%になるように調整している。
①X1年4月5日に、当社は商品A(原価:@800)を150個購入し、代金は掛とした。
②上記①の商品Aに規格違いが見つかった為、15個返品した。
③上記①の商品Aに品質不良が見つかった為、1個当たり@80の値引きを10個分受けた。
また、この分に限り、売価を@864へ変更した。
④X1年4月15日に、当社は商品B(原価:@1,200)を80個売上げ、代金は掛とした。
⑤上記④の商品Bに商品が相違していたと報告があった為、10個の返品を受けた。
⑥上記④の商品Bに品質不良が見つかったと報告があった為、1個当たり@150の値引きを5個分行った。
⑦期末を迎えたので、決算整理仕訳を行う。
期首商品の価額は220,000円、期末商品の価額は350,000円であった。
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