⑪マガジン原作大賞に向けて、第一話を分析してみた ~ドリフターズ~

あらすじ

1600年 関ヶ原 烏頭坂。
薩摩の島津豊久は敗戦が決まった戦場の中、伯父の島津義弘の撤退路を作るため「捨てがまり(*1)」を決行する。島津を追うは井伊の赤鬼こと、伊井直正。「貴様らはもう負けたのだぞ その首 俺の手柄になれい」「何言いやがるクソボケがっ 首になるのはおいじゃない 貴様よ!!」。豊久の猛将振りに、直正の身を案じた兵が槍衾やりぶすま(*2)を敷く。豊久はその真っ只中に飛び込み、槍を全身に受けて串刺しになった。「阿呆が!!」直正の言葉に、豊久は笑みを浮かべる。腰から火縄銃を抜き、直正に向けた「あほう・・・お前うぬじゃ 井伊侍従直正!!」。放たれた弾丸は直正の肩を撃ち抜く。直正の撤退を見て、豊久は叫ぶ「首置いてけ!! 直正ぁ!!」
夜。雨は戦場跡に漂う死の臭いを濃くする。屍を横目に、瀕死の豊久はそれでも直正を追っていた。不意に、戦場ではないどこかへ足を踏み入れたことに気がつく。長い廊下に、西洋人が机を構えて座っていた。豊久は、声なく驚きをあげる。

*1・・・捨てがまり
撤退戦の戦法。少人数で敵を死ぬまで足止め。足止めが役割を果たしたところで、また少人数が足止め。これを繰り返して、撤退の時間を稼ぐ。トガゲの尻尾切り戦法。作中では「狂っていないとやらない事だが 狂っていてはやれない事」と評されている。
*2・・・槍衾
槍を構えた兵士が隙間なく並ぶ状態。先端が鋭利なものを敷き詰められたら、そこに飛び込む気なんて起きないのが普通。薩摩兵子は普通じゃないので飛び込みます。

主題

面白いもの(英雄大集合)と、
好きなもの(偉人・狂人)と、
流行りのもの(異世界転生)
全部組み合わせたら、みんなハッピー

パンチライン

歴史上の人物で、異世界国取り戦乱記

構成

起:P1 ~7 時代紹介
承:P8 ~11 豊久紹介
転:P12~19 対直正
結:P20~24 異世界へ

注目点

ドリフターズ7巻が8月10日に発売しました。
めちゃくちゃ面白かったです。
閑話休題。
めちゃくちゃです。
この第一話、本編に直接関わる部分が、ほぼありません。24ページ中の3ページだけです。本編にほとんど関係ないのに、めちゃくちゃ面白い。反則過ぎます。
原作作りに生かす点を無理矢理あげるならば、「好きの力」でしょうか。作者の「好きな所」がダイレクトに伝わって来る。自分がまだ知らない面白さを知れる。この部分になるでしょう。

原作にはあまり影響しませんが

なぜこんなに面白いのか、を絵の観点から見てみました。
面白さの原因、それは「目隠しの表情」です。
読んだときの登場人物の目を隠して台詞を見たときに受ける印象。
それと、普通に読んだときに受ける印象。
この2つのギャップが、全ページにわたって、一切ありませんでした。
「目で感情を伝える」とは聞いていましたが、絵がうまいと目を描かなくても感情がわかり、話がわかるようになります。そうすることによって、目が感情ではなく、別のものを表現できるアイテムとして使えるようになります。
作者さんの目の描き方が大好きでしたが、こういった画力の部分が下支えになっていることがわかり、なかなかの収穫でした。

次へ:⑫あひるの空

ここから先は

0字
#週刊少年マガジン原作大賞にむけて、色々な漫画の第1話を分析しました。漫画原作を初めて書く方や、絵には自信があるけれども、シナリオはちょっと、という方にオススメです。

#週刊少年マガジン原作大賞にむけて、色々な漫画の第1話を分析しました。内容は無料公開している記事と同じです。meshの活動の協力していただ…

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?