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オンライン飲み会から見える、今後の飲食店の在り方とは

コロナショックにより、最近は「オンライン○○」の出現が目立つように感じます。
学校の休業によって、学生たちにはオンライン学習が導入されました。また、企業は活動を自粛し、全国のビジネスパーソンはオンライン会議に参加した経験があるのではないでしょうか。
そして、ほとんどの飲食店も同様に活動を自粛し、各飲食店の店主たちは相当な打撃を受けています。

しかし、打撃を受けているのは飲食店だけではないのです。全国の、飲み会が大好きな呑兵衛達も(唯一の?)生きる楽しみを自粛せざるを得ず、打撃を受けています。

このような社会的課題を抱え、巷では“オンライン飲み会”というものが流行っています。

オンライン飲み会とは、仲間内で、各自が自分の飲みたい酒や食べたいつまみを準備して、ビデオチャットのできるアプリケーションなどを使用しオンライン上で対話しながら飲み会をすること。


“飲みにケーション”という言葉が流行ったように、昔から飲み会は人と人とのコミュニケーションに一躍買ってきました。

飲み会と言えば、もちろんオフラインで、みんなで飲食店に行き、みんなで話しをしながら、みんなで料理をシェアして…、というものを想像しますが、オンライン飲み会では料理をシェアすることなく、各々が好きなものを好きなだけ飲み食いするのです。

全国の呑兵衛と同じく、飲み会が大好きな私は、“同じものをシェアする”という食体験の共有がなされないオンライン飲み会になんとも不思議な感覚がしました。

この流行の先には、何が待っているのでしょうか。


人々は何を求めて飲み会をするのか

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そもそもなぜ人は飲み会をするのでしょうか。

楽しいから。誰かと話したいから。酔いたいから。色々な理由があるかと思われますが、あくまで、人と食事をするという点にフォーカスを当てると以下の2つが主な理由と考えられます

①『食体験の共有』がしたい

“食体験を共有する”とは、食事を通じて心を通わせる事です。

ある程度長い時間を一緒に過ごし、苦楽を分かち合った親しい間柄であることのたとえに「同じ釜の飯を食う」という言葉があります。この言葉から、人が共通の体験を通して心を通わせることの代名詞が食事なのだという事が分かります。

お祝い事、お悔やみ事の場面等では必ず食事をしますよね。このような場では、主催者側による出席者への感謝を込めて食事を出しますが、もしここに食事がなかったら、なんとも形式的な、少しばかり寂しい場になるのではないでしょうか。

②『交流』がしたい

もし毎日一人で生活を続けたらさみしいと感じる人は多いのではないでしょうか。誰かと話すことで何らかの刺激を得たり、笑ったり泣いたり。生きている以上、他人との交流を欲しいと感じるはずですよね。そういった交流の場として飲み会があります。

ですが今、感染症の流行で簡単に人と交流できなくなってしまいました。


感染リスクを抑えて人と交流するためにどうしたらいいか、その悩みを解決するために流行したのがオンライン飲み会です。もし、今後この問題が解決した場合、オンライン飲み会はどのような立ち位置になるのでしょうか。

もし、①『食体験の共有』を目的にオンライン上で飲み会をするなら、それはきっと「遠方で会えないがどうしても一緒に食事をしたい」といった理由があって行うのではないでしょうか。心を通わす事を考えれば、実際に会って食事をする方がいいはずです。

対して②『交流』は恐らく、場所は関係なく顔を見て話せればそれでいい。


オンライン飲み会には“現実的な魅力”が詰まっている

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飲食店で飲み会をする場合、以下のような欠点があります。

・他の客の目が気になり、余計なことをしゃべれない。また、店内が騒がしく、うっとおしい場合がある。
・代金にはサービス料が上乗せされており、コンビニ等で買うよりも割高である。また、お通し代やテーブルチャージが存在し、経済的ではない。
・各飲食店のメニューにある料理しか注文できない。
・その場所まで行く必要があるため、交通費や往復時間という余分なコストがかかる。また、最終電車を気にする必要がある。

飲食店で発生する以上の問題に対してオンライン飲み会では、以下の利点があります。

・他人が存在しない、自分たちだけの閉鎖された空間で話ができる。
・飲食物を自作したり、スーパーで買ったりすれば飲食代が安く済む。
・少し費用をかければデリバリーサービスなどが利用でき、たくさんの料理の中から好きなものを注文可能。
・家が遠い人同士でも交通費や往復時間がかからず、最終電車の時間を心配することなく、安心してお互いが気のすむまで飲み会を続けることができる。


オンライン飲み会には上記のような利点があるため「ただ愚痴を聞いてほしい。」「暇だから一緒に酒を飲む相手が欲しい。」このような場合に、手軽に人と交流できます。
それこそ、実際に会うことが必要でないなら、わざわざ飲食店に出向く必要がなくなるわけです。

また、小さなことかもしれませんが、「どちらが何杯多く飲んだか」という事で、割り勘にするのか、多く飲んだ方が多く払うのか、ということも気にしなくてよくなります。

もし飲み会を終えたいときにはいつでも、「充電切れ」という理由で飲み会を打ち切ってしまってもいい。“同調圧力からの脱却”という点でも、他人に気を遣う事に疲れている現代にはむしろ合っているのかもしれません。

それに、自分の好きなものを好きなだけ食べられるという点は、近年の食生活の問題を取り上げた『こ食』の1つである、『個食』(それぞれ、バラバラなものを食べること)そのものですから、今後の若者には根付く概念なのではないでしょうか。


6つの『こ食』|栄養部の活動報告ブログ 栄養ニュース - 東邦大学
https://www.lab.toho-u.ac.jp/med/ohashi/eiyobu/blog/tjoimi0000001tje.html


これからの飲食店は人が交流する場をどう提供するのか

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今回のオンライン飲み会のブームによって人々はどう思うのでしょうか。
「あれ?今まで居酒屋で飲み会してたけど、話すだけならオンラインの方が手軽で良いんじゃないか?」とオンライン飲み会推しなるのか。
それとも「やっぱり実際に会って話す方が楽しい!」と、今までよりリアルを求めるようになるのか。
それとも、それぞれに魅力を感じるのか。

確かに、ビデオチャットアプリのUIの悪さ(タイムラグがある、同時に話すと聞き取りずらい等)という問題はありますが、これは、通信形式が5Gになることもしかり、今後の技術発展によって改善されていくでしょう。

今後、上記のどれがマジョリティになるにせよ、人々の飲食店利用に対する意識は変わるであろうと予想できます。

(あくまで主観で)今のオンライン飲み会はまだ、イノベーターやアーリーアダプターが流行を生み出し、アーリーマジョリティが参入しているあたりだと思っているのですが、今後社会の大半がオンライン飲み会を経験した場合にどのようになっていくのか楽しみです。

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このままコロナショックによる活動自粛が続き、オンライン上で楽しさを分かち合うことに抵抗がなくなったと仮定した場合。
手軽さを求めることがマジョリティとなれば、あくまで知り合いとの交流のために、店舗を利用する必要性が薄くなっていくのではないでしょうか。
反対に、心を通わせることに重きを置くようになれば、むしろ店舗利用の需要は高まると思います。
そうした点で今後の飲食店は、「今までよりももっと人と人とがリアルな繋がりを感じ取れる場」としての価値を創造し、「その場にいることでしか体験できないエンターテイメント性を提供する場」や「その場に行くことで人との繋がりを作れる場」といった、場所をキーワードとした価値が色濃く求められるのではないでしょうか。


文・平井龍大朗

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