スピアーレ

幼少の頃は、大人の仕事をする姿がスキでした。「どうしてあんなにうまくできるのか」と。性…

スピアーレ

幼少の頃は、大人の仕事をする姿がスキでした。「どうしてあんなにうまくできるのか」と。性格はのんびり屋ですが、環境を思い、環境をよくしたいと、その改善思考は元気です。10年後の世の中が、映ったり映らなかったりですが、それは未来にお任せです。

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元気な社会(五)

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10日前
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人影に魅されて(2/2)

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スピアーレ
3週間前
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自己紹介に代えて

自己紹介に代えて

九州の西側に、盆踊りでよく聞こえた「炭坑節」がある。
その歌詞の一節に「香春岳(かわらだけ)」という単語が出てくる。
石灰岩の山で、セメントの原料がそこから採掘されるが、
採掘によってその姿を変え、いまでは、思い出だけの山の姿に。

幼少の頃は、その町で、のんびり育った。
そんな環境の職人さんの働く場が、私はスキだった。
下校の途中、たとえば鍛冶屋さんを見ると立ち止まり、じっと見入って飽きずに時を

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元気な社会(五)

元気な社会(五)






❞元気な社会❞(五)

 
 
 ルビンが、いのちのセマンと出会い、セマンの翼のうえで夢路の旅にいざなわれて得たものは、物でもなく、欲でもなかった。
それよりはるかに大きく、はるかに澄んだものであった。

きれいな空気をつくる緑であり、その空気や精気をかかえる青い大気であり、人を理解できるマリンブルーの大海であった。

 その後ルビンは、寛容で厳格な家庭に育った。
しかし、幼

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元気な社会(四)

元気な社会(四)






❞元気な社会❞(四)



 ロバートはつづけた。
「で、もうひとつは、都会から休養でくる若年労働者や青少年の、こころの病に寄り添いたいのです。もちろん、この島で生まれてすごしてきた人たちなら、そんなこともないのでしょう。でも、都会の職場、学校、家庭では、何かとテクノストレスや情報過多からくる生活の連続で、こころが負担を負ってしまうのです」

 島のみんなは、口々に分からな

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元気な社会(三)

元気な社会(三)






❞元気な社会❞(三)



 ナザリーはちょっぴり照れながら、話をつづけた。
「ここで、骨を埋めるつもりでいます。仲良くしてください。どんぐり会の子どもたちは、来月この島にやってきます」
 と、子どもたちとの過ごし方について説明をつづけた。

 話し終わると、賛同の拍手が鳴りひびいた。
 するとルビンがすこし話をつけくわえて、Gメイト十二人全員の立場や関係も説明しておいた。

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元気な社会(二)

元気な社会(二)






❞元気な社会❞(二)



 それを聞いた村人たちは、Gメイトの輝きを見て、全面的に信頼した。
けっして似非ごとであったり、秩序を乱したり、あるいは、いつか中途半端な形跡だけを残して島を去って行ったり…と、そういうあしき心配のないものも、じゅうぶん感じていた。

 アイラが感想をのべた。
「何もいうことないわ。そこまでしっかり考え、将来のかたちを約束してくれたり、念入りに五

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元気な社会(一)

元気な社会(一)






❞元気な社会❞(一)



 この日、夜にはいると、民宿に村人が集まって歓迎会をもよおしてくれた。

 海のさち、山のさち、村人のめいめいがもち寄ってくれた家庭料理、と盛りだくさんのご馳走で、Gメイトたちの胃袋はおどろきどおしであった。

 宴もたけなわのころ、ルビンは、あらためて村の人たちに挨拶をした。
それは、島に住み着くことにした背景や、これからの活動についての話に

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ふたつの再会(五)

ふたつの再会(五)



❞ふたつの再会❞(五)



そこでルビンは、泊まった宿舎「きよら」の伝説を話しはじめた。ロバートは、じっとルビンの目をみつめ、うなずいて聴きいっていた。

ついに、ルビンは自分の夢を語りはじめた。

「わたしは、いますべてが順調なんです。夢があるんです。ジェームズのなしたことには、とても共感できるのです。そんなに大きなことはできないけれど、小さな村の小さなしあわせほどでいいから、救うべ

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ふたつの再会(四)

ふたつの再会(四)






❞ふたつの再会❞(四)



揺れる馬車で風をうけながら、ルビンがその旅行を回想しながら、同時に思い起こしていたことがある。
 
看護師としての実務現場に配属された日のことである。
 配属先は総合内科である。
 ナースセンターの指導を経て、配属先の担当医にひとりで自己紹介をしてくることになった。担当医の診療室にはいると、男性医師が調べごとをしていた。ルビンは名前を告げ、挨拶を

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ふたつの再会(三)

ふたつの再会(三)






❞ふたつの再会❞(三)



 馬車に揺られるルビンは、景色をみながら、あることを思い出していた。
 ルビンは大学では社会学を学んだ。
子どもたちの生きる社会に関心があった。

 社会人としてはたらく準備もできたルビンは、気持ちにけじめをつけるために、ひとりでどこかを歩いてみたくなった。
 旅行先は決めてはいるものの、コースや楽しみ方には、なんの計画もなかった。
ある島に船

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ふたつの再会(二)

ふたつの再会(二)







❞ふたつの再会❞(二)



 一行が下船すると、大勢の出迎えが、手をふり、歓迎のことばをかけながら、駆け寄るように取り囲んできた。そして、小さくカットされた色テープとクローバーの花のまじった大籠の花吹雪を、帽子に積もるほど浴びるのであった。

「ルビンさーん! はじめまして! いらっしゃあーい!」
 と、島の代表の女性、アイラが目を見開いて両手を差し出してきた。
「は

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ふたつの再会㈠

ふたつの再会㈠






❞ふたつの再会❞㈠


 初夏の昼下がり、客船が波止場についた。
 タラップからは、二百人ほどの観光客がおりてくる。今回もまた、この島で休暇をすごす人たちがやってきたのだ。波止場は、これを迎える民宿の人たちが、予定の泊り客をさがし当てたり、挨拶をしたりでごったがえしていた。

 タラップからの客たちがとぎれると、まもなく、同じ色あいの一行が、さわやかな笑顔で降りてくる。
 先

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人影に魅されて(2/2)

人影に魅されて(2/2)





❞人影に魅されて❞(2/2)




ふたりは、白いさん橋から島の周囲に沿う小道にもどり、集落の先に進んでみることにした。
 
「まただれかと出会うのかしら?」
ルビンが尋ねると
「そうだね。道がつづくということは、きっとだれかに会えるさ」
そういうと、セマンは上空から見下ろすことにした。

大きな広場があって、古びてはいるが大きな建物がみえた。屋根は瓦。まわりに民家もちらほら

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GW お気をつけて

GWはいかがお過ごしですか。

当方、普段は諸々多忙のなかにあります。
少しばかり安静にしておきたいと思います。

楽しい休暇の段、どうぞお気をつけて。

人影に魅されて(1/2)

人影に魅されて(1/2)






❞人影に魅されて❞(1/2)



もえぎの島に帰りついた。
セマンが、
「これは、人の歩く道だよ。この島で生活する人や、この山の緑やきれいな空気で英気を養うためにくる人も、ここを通るんだ」
というと、ルビンは、
「どんな人たちなんだろう。だれかに会えるといいなあ」
 
するとセマンは、
「じゃあ、もうすこし待っててね。そうすれば会えるから。こんどは、まえだとか、左だとかはい

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空と海の気(2/2)

空と海の気(2/2)





❞空と海の気❞(2/2)






ルビンは、はじめて水面近い潮風をうけながら、空と海の気を浴びていた。
「またまた気をもらってま~す」
と、海のかおりで満喫するルビンをみて、セマンは、連れてきてあげたことに安堵の胸をなで下ろしていた。

「海って、どう?」
ときくと、
「なーんにもいらない。一生ここでこうしていたい」
よほど満足しているとみえる。
「この海は、だんだん

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空と海の気(1/2)

空と海の気(1/2)




❞空と海の気❞(1/2)



ルビンは、夢のなかで、もうひとつの眠りにはいっていた。

もえぎの島の静寂を破るように、第三者が登場した。
ぴーひょろろー。ぴーひょろろー。
陽気に満ちた明るい上空には、トンビが意気天をつく風格で上昇気流にのり、大きく翼を広げ、ゆっくりと八の字を描いて舞う。万物に気をとどけるような鳴き声で、遠くにとおくに呼びかける。

ぴーひょろろー。
ルビンは、

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