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29:怒涛の段差強化トレーニング!

(写真は鎌倉銭洗い弁天)

11月に入り穏やかな時間が流れていた。夫はキレたり暴れたりしなくなり、無理矢理「良き人」を頑張っている感じもなくなった。もしかしたら私と絶対別れられない事を察して観念したのかも知れず(笑)または引っ越しの話が出たことで、次回の更新に管理会社から追い出されたとしても行き場が出来たという安心感からかも知れない。

私が体調の事で落ちこんでいてもかぶせてキレたりせず、漫画を始め、全ての仕事を失った事などに関しても「しんどいなあ、悔しかったなあ」と耳を傾けるようになった。夫は元々人一倍本を読む人だしマニュアルを取り入れるのも好き、知り合いなどに相談している様子もあり、「傾聴」という勉強もしたようだった。そうした事は仕事の上での対人関係を円滑にする為だったが、私との関係にも凄くプラスに働いた。

私はといえば、色々と我慢をするのをやめた。出来ないことは開き直って「出来ない、やって」という事にした。夫は普段は頼まれたことはきちんとやってくれたし基本的に長男気質なので色々面倒をみてくれる。出来ないから落ち込むのでは無く、やって無理なら頼んで、やってもらったらニコニコして感謝するようにした。そうしているうちに私は適度に家事をサボるようにもなったが気持ちに余裕ができてきた。

この頃あたりから手の爪なら自分で切れるようになっていた。夫は長い爪やネイルアートなどが大嫌いなので、任せておくとめちゃくちゃ短くされる。自分でどうにか切れるようになって良かった。

夫はよく、「夫婦だから」とか猫と一緒に「仲良し家族」とか言った。目には見えないけど絆みたいなものが生まれはじめているのを感じた。夫は以前から基本的にとても優しく、責任感がある。だから私を見ていて危なっかしくて放って置けないからと関わってしまい、結果、結婚することになってしまったワケだが。

そう、結婚。今ならイケるかもしれない、ちょうど去年の同じ時期に行くはずだった新婚旅行。

この頃、友達と江ノ島に遊びに行く予定があった。その予定と繋げるように夫に新婚旅行を提案する。行き先は鎌倉。二泊の予定だが一泊目の夜まで友達と江ノ島にいてそこから夫と合流なので、ガッツリ二泊一緒、という訳ではなくもし最悪ケンカになってもリスクは少なくて済むかなという狙いもあった。(結果的には一度もケンカはなく最高の旅行になった。)

江ノ島は神奈川に住んでいた頃よく行っていた。好きな場所だ。江ノ島弁財天は芸事の神様でもあるので縁起かつぎ。江ノ島水族館でイルカと触れ合ったところはショーの為に観覧席に沿って階段になっており、手摺りに沿って登り下りする必要があった。足が不自由になってから手摺り必須なので、色々な場所あちこちで手摺り磨きしている状態である。

水族館を堪能したあと江ノ島本島へ。船で稚児が淵に近い岩場に接岸するルートから行った。観光はもちろんだが歩行のリハビリの目的も多分にある。(付き合ってくれた友人に感謝!)江ノ島といえばとにかく段差が凶悪。手摺りは錆ているところもあるのを知っていたので、予め百均で手袋を買っておいた。

予想はしていたが段差がしんどい。高次脳機能障害以前にフツウにきつい。登ったら降りなければならない。海鮮を食べて下りきる頃には膝がガクガクになっていた。付き合ってくれた友人に大仏の置物をプレゼントした。人に心底要らなそうなものを人に押し付けるのが趣味だ(笑)

日が落ちる頃、夫と合流した。鎌倉へ。

この時点でかなり疲労していたが次の日はさらにハードな予定を立てていた。はっきり言って新婚旅行とは名ばかりの鎌倉山攻めだ。コロナでリハビリもろくに出来ず一年経ってしまった。悔いは山ほどあるが少しでも減らしたい。段差を克服したい、明日に備えてガッツリ夕飯を食べる。品数が多いとまだ少し混乱するから、テーブルの上のものなどをいちいち確認しながらの食事になるが、夫はいつも私がキョロキョロすると何が欲しいかだいたいわかった。自分より先に私に取り分けてくれる。何でも美味しそうなところや大きなほうをくれる。これは障害が出るより以前からそうだった。長男だ。安心して食事ができた。




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