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冷房

情けなく恥ずかしい話を、正直にしたいと思う。
遠回しな表現や難しい表現もなるべく避けて、簡潔に、書こうと思う。

中学生高校生の私にとっては、良い成績をとって良い学校に進学することが第一だった。
それさえ達成すればよい企業に就職できることなんて当たり前だと思っていて、そしたらバリバリ働きながら結婚して子供ができて、仕事人の母親になることを簡単に想像していた。

だから勉強なんて全然好きじゃなくて、好きじゃないことを頑張るのはかなりのストレスだったし、だからこそそれを頑張れる私は偉いと思っていた。

中学の時に学級委員やら指揮者やら端から端まで立候補して、やりすぎだからと遠慮させられる以外全てやり尽くしたのは成績のためだったし、5教科以外の技能系もオール5を取ることだけを目標に臨んでいたから、内容の面白さや楽しさなどどうでもよかった。
評価のために、普段料理を全くしないのをばれないようにきゅうりの輪切りを家で何度も練習したし、歌なんか全然得意じゃないのに指揮者をやったり毎日お風呂でテストの練習をしたり、絵も造形も美術でしかやらないけれど意味を作り出して独創的なものを演じて作ったし、休み時間に技術室に来てシューズボックスにやすりをかけまくった。
努力でどうにでもなった。
努力でどうにでもしてきたし、だから成績がついてきた。
報いるだけの努力をしていたと思うし、そうして報われていくことがより私を盲目にしていった。

地域で一位の進学校に入学してからは、理系に進学するのは最初から決まっていて、自分が何に興味があるかはもちろん、得意教科さえ考えなかった。
文系に進学した人のことを、そんな素振りを見せない顔をして、戦うのをやめた人だと何も知らないくせに見下したし、志望校が旧帝大なのは最低限だった。
正直高校はかなりサボっていたから、成績は悪かったのにその価値観だけは持ち続けていた。

どんな研究をしているのか、どんな先生がいるのか、どんな授業があって、どんな特色があるのか、そんなのはどうでもよくて、「建築 大学 有名」で当時の志望校が出てこなかったから、出てくるかつより偏差値が上の大学に志望校を変えたくらい。

いつだって名前や大きさが大事で、内容を見ることができない人間だった。

頭が良いと有名なのに名の知れた大学に進学しない同級生の気持ちが知れなかっただけじゃなく、ライバルがいなくなったことを喜んだ。

そうして、名の知れた大学に合格し進学した。

そんな私が今はその大学で2年目の休学をしている。
周りは就職や院進を控えた真っ当に生きている4年生ばかりで、中学の同級生には既に社会人として毎日働いている友達もたくさんいる。
その一方で実家に帰った私は、毎日何もない田舎で暇をつぶすことで精一杯の生活だ。

「堕落したな」
そんな言葉が誰から言われるでもなく私の頭の中に溢れている。
そしてそれさえも私の偏った考え方とプライドをよく表していると思う。

私は悩んでいる。
とにかく勉強がしたくない。建築学科に戻るのが怖い。勇気が出ない。だからと言って他学科に編入する道を考えていてもまたもや勉強がついてくる。やりたくない。逃げたい。就職はしたい。自分の力でお金を稼いでそれなりの水準の生活をしたい。いつだってプライドが許さないからきっと有名な企業で働きたい。その為には大学を意地でも卒業しなくてはならない。それが遠い。びっくりするくらい、遠くて遠くて見えない。怖い。

正直に言えば、もっと適当に生きている人はいっぱいいると思っている。
勉強なんかしないで生きてきても、そこそこの企業に就職していいお給料で楽しそうに生きていたり、大学の授業なんか出たり出なかったりして難なく卒業していたり、バレないようにちょうどいい嘘を使ってテストを乗り越えていたり、見映えなんて無視して1時間で作った模型を提出したり。

それでいいんだと思う。
というか私はそうしたい。
なんだって適当にやって、頑張らずに、気楽に、それで卒業して就職できるならそうしたい。
私にはできないらしい。
頑張って生きてきたから、力の抜き方が分からない。
適当のやり方がわからない。
適当にやったら普通に卒業できないし就職できない、そう思っている。


将来の話をするようになったな。
恋愛と結婚。
夢と現実。
金と愛。
東京と地元。
そういう年齢なんだと思う。
ちょっと前は死にたい話ばっかりだった。
それもそういう年齢なんだと思う。
きっとまた数年後死にたい話がやってくるだろうし、そしたらまた将来の話がやってくるだろうね。
ここ数年の大事な10年。

みんな、どうやって生きるの?
どうやって生きていこうと思ってる?

私の情けない話はこれくらいにして、私はみんなの話が聞きたい。
今までどの時にどういうことを思って、どうしてその道を選んだか、それまでにどんな葛藤があったか、たくさん話そう。

暖かな部屋で、お酒でも飲みながら。

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