「まる子と城ヶ崎さんの地下ライブ」その②

通路に座り込んでメイクをする城ヶ崎さん。 早めに来たお客さんの佐々木の爺さんが現れる。

佐々木:おやおやみなさん、こんにちは。

みんな:こんにちは!

城ヶ崎:(え、ちょっと、座り込んでメイクしてる準備中の姿、お客さんに見られちゃうわけ!?)
佐々木:おや城ヶ崎さん。昔テレビで見た事がありますよ。その格好はきっと、お姫様のコントですね?頑張って下さい。

城ヶ崎:あ、ありがとうございます!(そう言ってもらえる事は嬉しいけど、メイク中の裏の光景が開演前にお客さんに見られちゃうだなんて、なんか気まずいわ…)

まる子:あ、城ヶ崎さん、準備できたみたいだね。この辺の後ろの方に立って、出番になったらこの通路を通ってステージに出てね

城ヶ崎:え?暗転は使えないの?

まる子:昼間だからこの蛍光灯の電気消したくらいじゃ暗転にならないねぇ。出オチの人には気の毒だけど、まあ仕方ないよね。

城ヶ崎:そうなのね。音響は使えないのかしら?
まる子:使えるけど、山田が持ってきた蓄音機からレコードを流す感じになるね。出演者兼スタッフの藤木がやるよ。

藤木:ぼくがレコード再生するからね。間違ったらごめんよ。

城ヶ崎:あ、あら。そうなのね。 ところでさくらさん、あと5分で開演だけど、佐々木の爺さん1人しかいないわよ?

まる子:今日の取り置きは佐々木の爺さん1人だけなんだ。でもさ、1人来てくれたからこれは立派なライブだよ!有難い話だよ。

城ヶ崎:1人も来ないとどうなるの?

まる子:ライブによって違うけど、中止もあれば、そのまま開催して、まぁ芸人同士のネタ見せ会みたいになる事もあるかな。途中で遅れて来てくれるお客さんがどうか現れますように!と願いながらね。その願いは無念となる事が大半だけどね。

城ヶ崎:そうなのね。そう考えると、佐々木の爺さんが1人来てくれただけでも嬉しいわね。
まる子:嬉しいね。城ヶ崎さん出番後半だよね?あたしゃ前半だよ。あ、ライブ始まったよ!

永沢:どうも〜、MCの永沢です。あ、佐々木の爺さん、今日のお目当ては僕かい?ネタ中は写真撮影NGだけど、今なら撮っていいよ。なんで撮らないんだい?殿さまキングスの顔真似。今シャッターチャンスさ!なんで撮らないんだい?

城ヶ崎:佐々木のじいさんイジられてるわね。

まる子:お客さん1人は本人も気まずいだろうねえ。

そして前半の10組が終わり、中MC

席を立つ佐々木の爺さん。

まる子:あ、そうだ!思い出した、佐々木の爺さん、夕方から木の世話があるから、ライブは中MCの時に抜けるって言ってた!

城ヶ崎:って事は、後半の人は!?

藤木:無観客だね。はぁ、前半の人が羨ましいや。
まる子:こればかりは運だね。あたしゃ前半で佐々木の爺さんにネタ見てもらえてラッキーだったよ。でも佐々木の爺さんは悪くないもんね。
藤木:そうさ。お客さんは途中入場、途中退場がダメなんてルールはないからね。

まる子:来てもらえるだけで有難いもんね。

山田:みんな、気を取り直すじょー!このまま続けるじょー。途中で誰か来てくれるかもしれないじょー!

まる子:そうだね、戸川先生とか優しいから来てくれるかもしれないし!

後半へ続く

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