「まる子のR-1」の巻。最終章

翌日。

まる子:野口さんおめでとう!ほんと凄いよ!
野口さんってなんでそんな血の滲むような努力ができるの?
野口:クックック。あたしは努力なんてした事ないよ… 一度も大変だなぁ、辛いなぁ。なんて思った事ないね。

まる子:そうなの!?野口さんいつもネタ帳びっしり書いてるよね!?

野口:あぁ、これ?これはクラスメイトのおもしろメモノートだね。

まる子:え!?ちょっと見せてよ!

そしてノートの中身を見るまる子。

「ブー太郎、語尾のブーに被せて屁をこいてたからバレてなかった」

「城ヶ崎さん、今日は息がくさかった。ニンニク食べたのかな?みんな気を遣って気づかないフリしてた」

「穂波さん、鼻をかんだ後、はなちょうちんが出てた事、気付いてなかった」

「藤木、よく見るとホクロ毛がある」

まる子は衝撃を受けた。

まる子:なに!?この野口さんの独自の着眼点!!普通人が見てないようなところまで注目してるし、しかも腹黒いよ!!野口さん、あんたなかなかのワルだよ!!あ、褒めてるんだよ。

野口:クックック。あたしが面白いと思った事書いてるだけだから、趣味だよ。でも趣味を、ひたすら突き詰めたら、優勝しちゃったね。趣味で賞金500万、クックック、ブゥッ!

まる子:野口さん、カッコいいや。あのさ、野口さんって否定された事ってないの?ほら、野口さんのお兄さん作家やってるじゃん!

野口:そんなの個人意見だからね。だからあたしは、全否定されたって、褒められたって何とも思わないよ。

まる子:え?褒められても嬉しくないの!?

野口:うん。別にね。クックック。

まる子:もし仮に1回戦で落ちても悔しくない?

野口:むしろ面白いからそれもネタにするね。クックック。だってさ、1回戦って、決勝より面白い人が出るでしょ?

まる子:どういう事!?

野口:園芸について語る笑い0の佐々木の爺さん、藤木へのラブレターを読むだけのみどりちゃん。舞台上で食べ物を食べるだけの小杉、恥ずかしがってセリフを一言も言えなくて逃げるようにハケた中野さん…

まる子:まぁ、それはある種1回戦の醍醐味だよねぇ。

野口:真面目にやってる人が1回戦で落ちたら、そこと同じになったみたいで、バカにされたかのような気持ちになるから悔しいんじゃないかな? でもそういうわけじゃないし、こればかりは自由だからね。

どんなスタンスの人がいたっていい。記念参加勢も、エンジョイ勢も、何も悪い事じゃないからね。

まる子:確かにそうだね。でも芸歴10年未満の時、本当は12年やってる藤木が、芸歴誤魔化して出たのはさすがに卑怯だったけどね。

藤木:ゔっ!

まる子:あたしも早く野口さんの背中を追いかけられるよう、来年もR-1頑張るよ!

はまじ:おいみんな、俺、来年からは出ない事に決めたぜ!

まる子:え!?なんでさ!はまじ、あんなに絶対優勝する!って言ってたのに!

はまじ:俺にとってお笑いって何かなって、落ちた日からしばらく考えてたんだ。俺は一つの考えに縛られる事なくいこうかなって。

俺はまだまだ実力不足だ。でもウケた時はすげー嬉しい。なら俺は、毎回のライブ1つ1つで、しっかりお客を笑かしたくてよ。毎回笑かせるようになったら、それが俺にとっての優勝だ!

まる子:そっか。はまじなりのスタンスを見つけたんだね。あたしもそうしよっかな〜

って言いたいとこだけど、あたしはこれからも優勝目指して、毎年R-1を頑張るよ。あたしが今やりたい事は、賞レースで勝ち上がるためのネタ作りだからさ。その労力をまだまだここに向けてみるよ。

はまじ:すげー労力だもんな。俺はR-1に費やしてた時間を、これからはYouTube生配信に当ててみようと思ってるんだ。野口はこれからどうするんだ?

野口:クックック、言えやしない。言えやしないね……。


         完

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